2006年11月30日

Keep in touch! 8 10月4日中編

19:15 『東京失格』International Premiere

バンクーバー国際映画祭では、ワンプログラムが基本的に120分。
『東京失格』のように90分の長編の場合は、短編を併映する。

で、『東京失格』と同時に上映する短編は『Request 』。2256.jpg
韓国映画アカデミーの卒業制作として撮られた短編で、めちゃめちゃクオリティーが高い。さすが、将来の韓国映画を背負って立つであろう逸材。
障害者の性欲という難しいテーマを、非常にスマートに見せる演出力が素晴らしい。
この『Request 』のKim Ki-Hyun監督とは、数日前にパーティで出会っていて、すっかり仲良くなっていた。
2年前の『マチコのかたち』の上映の時も長編と併映だったわけだが、その時は長編の監督と会えず残念。
なので、その分、今回こうして一緒に上映する監督と仲良くなれてラッキーコンピューターだわ。


で、『東京失格』の上映。
トニー・レインズに紹介されて、主演の福島さん、岩崎さん、音楽の関口と俺とで、まずは上映前の挨拶。
みんな相変わらず陽気にペラペラ話して会場は爆笑。
でも、俺は心の中では超緊張。
ぐはー!

会場が暗くなって、映画が始まる。
今までで一番デカいスクリーン。
ぐひー!

海外に行く度に思うけど、日本の観客とは全く反応が違う。
なんつーか、反応がストレート。
大声で笑うし、「Oh!」とか叫んでビビったりするし、感情を平気で表に出す。
日本の観客の、静かにジワジワと感情が劇場に満ちて行く感覚も好きだけど、こういったストレートな反応も、俺としては嬉しい。

そして国によって受け取り方が違う部分もあるけど、その上で、時代や文化などに左右されずに皆が感動する瞬間もある。
それが映画だろと俺は思う。

劇場の一番後ろで、猛烈に緊張しつつ観客の反応を楽しみながら『東京失格』を観ていて、これって難解な映画だなと初めて気付く。
座っているだけでは何も与えてくれない。自分から積極的に観ることではじめて、その世界に触れることが出来る。まるで人生のようだ。
まるで人生のような映画を撮りたかったので、観ていて改めて楽しいし、嬉しい。
良いか悪いかは他人が決めることだけど、俺は自分が本当に好きな映画を撮れて誇りに思うよ。

しかし上映中に、若干ながら席を立つ人がいる。
これは辛い。
創り手としては本当に辛い。
『To Be or Not to Be』は1942年のエルンスト・ルビッチ の映画だが、まさにその気分。
劇場で席を立つということが他人の人生を左右することもあるということを知って欲しい。
後で聞いたら、カナダでは日常茶飯事とのこと。
逆に、後の予定があるのに少しでも『東京失格』を観たかったってことですよと笑顔で教えられる。
実際、そうだったのだという観客から、翌日の2回目の上映声をかけられたりもした。

そうかー。でもやっぱ、中座されると大袈裟でなく身が裂かれる思いなの。
白川監督が『眠る右手を』が香港国際映画祭での上映の時、エンドロールになった瞬間に殆どの観客が出て行ったと嘆いていたが、そういうところでやっぱ習慣の違いが出る。

日本での『東京失格』上映の時は、エンドロールが終りきるまで、ほとんど全てのお客様がちゃんと観てくれた。
それってやっぱスゴいことだし、何よりも嬉しいことだ。

とはいえ勿論、バンクーバーでも本当に多くのお客様がエンドロールの最後まで『東京失格』を堪能してくれた。
ふーっと思った。
やった!と思った。
映画が終って、なんか一区切りついて、また人生が始まったんだなあと思った。

俺のすぐ側で観ていたKim Ki-Hyun監督が「最高だ!」と言ってくれた。
彼は本当に『東京失格』を気に入ってくれたみたいで、その後何度も、直接にも人づてにも彼が気に入ってくれた旨を聞いた。
嬉しい。
本当に嬉しいなあ。

再び、トニーの紹介で主演の福島さん、岩崎さん、音楽の関口と俺とで舞台前に出て、これから観客との質疑応答。

相変わらず熱気ムンムンで、応えるのに困る程の難しい質問がバシバシ来る。
脚本のこととか、演技のこととか、音楽のこととか。

特に、小津映画との関係性について問われたのが嬉しかったな。
日本では不思議なことに、それについて公の場で聞かれたことが一度も無かった。
まあ日本では俺のような駆け出しと小津安二郎監督を並列に捉えるのは恐れ多すぎて、海外だからこそ感じる日本というアイデンティティなのかもしれない。

いつも通り質疑応答の時間はオーバーし、劇場を追い出された後も観客にあれこれと話し掛けられる。
バンクーバー在住の日本人や日本語を話せる人が「東京を思い出して良かった!」と言ってくれたり、全く日本について知らないカナダ人が「あの感覚は俺も知ってるぜ!」と言ってきたり、あとデッカイお花も頂いた。有り難う御座居ます!

写真撮られたり、サインしたり、握手したり、なんかもう、観客の生の反応を伝えて貰えて、本当に嬉しいし、有り難い。

本当に嬉しいし、有り難い。
泣いちゃおうかしら。

posted by 井川広太郎 at 13:41| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | バンクーバー旅行記2006 | 更新情報をチェックする

2006年11月22日

カンバセーションズ/フランキー・ワイルドの素晴らしき世界

一昨日は試写に行ってその後呑む。

カンバセーションズ』原題:Conversations with Other Women/監督ハンス・カノーサ/2005/配給:松竹

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男はズルいロマンチスト 女は罪なリアリスト
マンハッタンのクラシックなホテル。
ウェディングパーティの行われているバンケットルームで10年ぶりに再会した昔の彼。
初めは互いにクールな態度で、ぎこちない会話。やがて心の中の探り合い。この気持ちは懐かしさ?それともまだ想っているの?
女と男のリアルなカンバセーションが、やさしく響く都会の一夜の物語。

2007年2月、シネスイッチ銀座にてロードショー


面白かったです。
「デュアル・フレーム・ムービー手法」という要するにただの2画面なのだが、特徴的なのは全編それを貫き通していること。対峙する2人や過去や未来や此処と其処と言った要素を同立させるとの意図らしいが、概ね、カットバックや回想シーン、平行モンタージュでも成立する類で、寧ろ絵に集中出来ない忙しない映像だった。それが意図かもしれないが。ただ、ラヴシーンとラストカットでは、その「デュアル・フレーム・ムービー手法」が炸裂していて、他に似たものが無い興奮を味わえました。
また、一夜の男女の成り行きをほぼ2人が出ずっぱりで描くため会話劇なのだが、脚本が良く出来過ぎていて、台詞の一言一言の意図が手に取るように読み取れてしまい、なかなか乗れなかった。しかし、曰く付きの中年男女を演じるヘレナ=ボナム・カーターとアーロン・エッカートが素晴らしく、いつの間にかシャンパンを嗜むかのように心地よいほろ酔い状態になってしまう。恋愛とか結婚とかセックスとか、若くない男女から繰り出されるストレートな発言は、非常にリアルで共感が持てました。俺は30歳になったばかりのピチピチだけどな。
一回でも悲しい別れや辛い恋愛や衝動的な一夜を過ごしたことが有る人ならとても楽しめる、良い意味で「大人のデート映画」だと思いました。そんな素敵なデートしてみたーい。
いや、マジでオススメです。

で、試写の後に「25thバンクーバー日本人ゲスト組」で呑み。急な企画だったのが、俺の他に2人の方がお忙しい中に集まってくださり、日本で初めての呑み会。
なんか夢のようなバンクーバーの日々が、ジワジワとリアルな東京生活に還元されて来ているなと実感。
厳しいご意見も頂いて物凄く勉強になった。うおー!って思った。頑張ります。
なんとか一回目が無事に開けたので、次回からはもっと沢山呼んで、友達の輪を更に広げながら楽しくしていきたいです。
仲良くしてね。見捨てないでね。

帰ってから偉大な映画監督であるロバート・アルトマンが亡くなったと知る。
とても好きな映画監督の1人で、高校から大学初めの頃は親友とロバート・アルトマンの話題でよく盛り上がったものだ。『ショート・カッツ』のクリス・ペンの台詞をパロッたりしてね。そういえば『ショート・カッツ』で論文書いたりしたな。学生映画時代は「お前はアルトマンのパクリだろ」とか良く言われたっけ。
他にも『M★A★S★H マッシュ』『ニューヨーカーの青い鳥』『プレタポルテ』とかが好き。『クッキー・フォーチュン』の先行オールナイトをシネセゾン渋谷に観に行ったのは思い出深いし、俺が最も好きな『バレエ・カンパニー』はこのBlogの開設当初3つ目の記事だった。
ご冥福をお祈り致します。


で、今日の昼間は映画祭関係などの諸々の事務仕事を猛烈な勢いでやり、途中で放り出してまた試写に行く。

フランキー・ワイルドの素晴らしき世界』原題:IT'S ALL GONE PETE TONG/監督マイケル・ドース/2004/配給:エイベックス・エンタテインメント

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音のない世界で 僕は君に出会った
  君の笑顔は 僕の音楽になった

聴力を失った天才ミュージシャン、フランキー・ワイルドの再生の物語

聴くんじゃない。感じるんだ!
天才ミュージシャン その名はフランキー・ワイルド。イビサのクラブ・シーンをベースにヨーロッパ中を熱狂させる彼を、ある日悲劇が襲う。聴力を失ってしまったのだ。
レイヴのうねりから、静寂の世界へ。どん底の日々を経て、読唇術を教える女性教師ペネロペと出会った彼は、再生への道を歩き出す。耳は聴こえなくても、サウンドを肌で感じることは出来るのだ。そして遂にフランキー・奇跡の復活GIGが、幕を明ける…。

12月23日(祝)より渋谷シネ・アミューズにて"愛は爆音を越えて"ロードショー!


いや、これは最高!すげー、最高にクールな映画でした。
タテノリなんかダサダサ、悪ノリ万歳の最高にクールな映画。
ホンマモンのバカは知性からしか生まれず、ホンマモンのバカだけが世界を救えると学びました。
フランキー・ワイルドにゾッコンです。
いやー、ポール・トーマス・アンダーソンの『BOOGIE NIGTH』を彷彿とさせた。
いまのは言い過ぎかもしれないけど、でもそれぐらいハッピーなゴキゲンなんだぜ。
クラブシーンに興味がある人なら次々にインタビューで映し出されるノリノリの超有名DJ達を見られるだけで興奮すること間違いなし。
フランキー・ワイルドを知らない?そんなのNO PROBLEM!音楽は感じて楽しむものなんだぜ?この映画にフランキー・ワイルドの全てが込められている。
これは観ないと損するよ。マジで。


んなわけで、今夜は『フランキー・ワイルドの素晴らしき世界』にアタッて開店休業。

So fucking useless?

世界にはまだまだスゴイやつがいるぜ。

最高の映画を。
posted by 井川広太郎 at 22:51| 東京 ☁| Comment(2) | TrackBack(3) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2006年11月20日

ロッテルダム国際映画祭招待決定!!

うがー!!『東京失格』が念願のヨローッパ進出決定!!

オランダだぜ?ロッテルダムだぜ!?

オランダってことはベルリンにもヴェネチアにもカンヌにも地続きです。

オランダってことは訪れるのは2回目だけど最高にご機嫌な国です。

オレンジ色の国で、誰が一番オレンジ色かってことを教えてきます。

っつーかロッテルダムはシンジ・オノ・オーレのフェイエノールトです。


おい!おい!おい!
行くぜ!ロッテルダム!
映画LOVE!!

というわけで詳細は追ってご報告します。

http://www.filmfestivalrotterdam.com

posted by 井川広太郎 at 21:15| 東京 ☁| Comment(7) | TrackBack(0) | 東京失格 | 更新情報をチェックする

2006年11月17日

アカデミーヒルズ六本木ライブラリーのトークイベントに出演

昨日は、アカデミーヒルズ六本木ライブラリーの会員の方を対象にした「ライブラリートーク 映画を創る魅力とは…」にゲストスピーカーとして参加して来ました。

我が恩師であり、アカデミーヒルズアーク都市塾塾長でもある米倉誠一郎先生がモデレーターとのことでお受けしたのですが、やっぱ六本木ヒルズってだけで俺には場違いな感が否めず、緊張しきり。
本当に俺なんかで良いのかなー。オモロい話が出来るかなー。ツマラナイって怒られたらどーしよー。
勢い付けにビールを数缶あおらないことには家を出られないほどでした。マジで。

あー、でも本当、流石に六本木ヒルズの49階ってことだけあって、一望出来る東京の夜景は美しいの一言。
あそこでダラダラ本読めたり色んな人と話が出来るっつーのは非常に素敵。
図書館はやっぱ窓際に限るよね。

で、先にメンバーの方からの質問をメールで頂いていたので、前半は概ねそれに沿う形で俺が『東京失格』を撮るに至るまでの話を進めつつ、後半は米倉先生との対談形式で『東京失格』や映画についてざっくばらんに話させて頂きました。

御陰さまで俺は非常に楽しい時間を過ごさせて頂きましたし、イベント後に読ませて頂いた感想用紙にも「楽しかった」とか「『東京失格』が観たくなった」など、最高に有り難いお言葉も有り、本当に嬉しかったです。
米倉先生を始め、スタッフの方々や参加されたメンバーの皆様に改めてお礼申し上げます。

しかし相変わらずの米倉先生の余りに流暢なベシャリに聞き惚れていると、あっという間に時間が過ぎ、幾つかお応え出来なかった質問が有るので、この場でフォローしたいと思います。



Q.東京にこだわるのは、何か理由がありますか。

自分の10年間を『東京失格』という映画とともに振り返ろうとした時、当然のように自分がずっと暮らしている街が念頭に浮かびました。
好きか嫌いか、良いか悪いか、他と比べてどうかということではなく、東京には何か引力と言うか、底知れぬ魅力を感じ続けています。
『東京失格』は数の少ない登場人物による非常にパーソナルな物語として構築されていますが、それは前提として背景でありまさに土台である東京という街、そして東京に住む他の1000万の人々の可能性をも内包しています。
『東京失格』の物語の主人公は2人の男ですが彼等は架空の存在であると言うこともでき、そういう意味では本当にリアルな主役は、2人の男を通じて描かれた東京という街なのかもしれない。
自分は100年間に撮られた沢山の国の映画を観ることで、その時々の多くの街について知ることが出来ました。
映画は街に依存し、街は映画によってこそ描かれると確信しています。
現在の東京の有りのままの姿を映画史に残したいという欲望が有りました。


Q.井川監督が映画を制作するに当り、これだけは絶対に譲れない、というものは何ですか?
(=一番大切にしていること)


非常に難しい質問で、上手く応えられません。
が、映画は自由であるべきだということでしょうか。
創り手にとっても、観る方にとっても自由でありたいと思います。
あとはアンチバイオレンスとか。


Q.次の映画のテーマは何ですか?

いっぱいあります!
それを皆さんにご覧頂くためにも早く次の映画を撮りたいです。


Q.今まで見た中で、最も感動した映画は何ですか?どういう点に感動されたのでしょうか。

1本挙げるのは非常に困難です。
沢山挙げるのには、お酒と煙草が必要です。


Q.監督は、「○○のために映画を創っている」と、一言で伺うことはできますでしょうか。また、誰のために映画を創っていらっしゃいますか(誰に一番観て欲しいと思いますか)。

愛のために、世界平和のために、相互理解のために、自己存在証明のために、色々な言い方が出来ると思います。
が、本当は自分にとって映画を撮ることは特別なことではなく、他にすることも無く、それしかすることがないのでそうしているだけです。
逆に、いつもずっと「映画を撮るためにはどうしたら良いのか?どうしたらより良い環境でより良い映画が撮れるのか?」と悩み、必死にもがいています。
要するに、俺にとっては「生きる」というのとほぼ同じことなので、意味も意義も目的も後付けのものです。
敢えて言うなら「映画のため」です。

ですから、誰のためにというのも特にありません。
勿論、家族、友人、先生方、あるいはスタッフ、キャスト、今まで自分に直接的であっても間接的であっても関わって下さった全ての人や、そして映画へ、感謝の気持ちを伝えたいという想いは有ります。

ただ、映画を創っている最中、つまり構想から脚本執筆、そして撮影、編集の時点で、語りかけるように作業を共にする「脳内観客一号」はいます。
その「脳内観客一号」は、大概その時は会えない実在の人を想定していたりするのですが、その人に何とかして俺の想いを伝えたいという気持ちで創っていきます。

そうして出来上がった作品をどう観るのかは、観客の全くの自由だと思いますし、寧ろ自分が意図しないような見方をしてもらえると、映画を通じて他者と新たな対話が出来たと非常に嬉しい気持ちになります。

自分がそうであったように、映画を通じて新しい世界が開けることが、観客にとっても創り手にとっても最大の喜びだと思います。
そして、それが新しい映画へのキッカケにもなるのだと思います。
上辺や形式や記号などではなく、自分の映画は人の生き様をリアルに映していると確信しています。
そういったものは、例え時代や場所や環境が違っても、誰かの想いと共感し得ると思う。
というより、まさにいま、そう実感しています。



あと、図書館なので「推薦本」を挙げて欲しいと頼まれました。
自分はあまり本を読まないので、推薦出来るようなものはないのですが、以下の2冊の愛読書を挙げることで代えさせて頂きました。

ジャン・ルノワール 越境する映画』野崎 歓 (著)  青土社 (2001/04)

ジョン・カサヴェテスは語る』ジョン カサヴェテス (著), レイ カーニー (編集) ビターズエンド (2000/03)


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posted by 井川広太郎 at 17:22| 東京 ☁| Comment(6) | TrackBack(0) | lost in blog | 更新情報をチェックする

2006年11月11日

良い映画を観るとそれだけで素敵な一日になるんだぜ

最近なぜかクサクサしている奴に会うことが多い。
そう言う俺もクサクサしている。
そんな時はどうすれば良いか知ってる?映画館に行けば良いんだぜ。

というわけで最近劇場で観た映画を幾つか紹介します。


太陽』 アレクサンドル・ソクーロフ 2005

圧倒的な期待をさらに越える程、物凄くオモシロい映画だった。
こういうのをエンターテイメント映画と言うんじゃないのかと思う。
実際、ソクーロフは歴史的な位置づけや時代考証以上に(因にそれらに対する造詣は驚く程深く緻密なのだが)、1人の人間に対する興味から、この映画を物語的に処理している。
本当に面白い"フィクション"映画。
こういうのをエンターテイメント映画と言うんじゃないのかと思う。


アワーミュージック』 ジャン=リュック・ゴダール 2004

台詞や直接的なテーマ(今回もサラエボ)だけでも十分に面白いのだが、矢張りタイトルがそうである通り、その映像と音とを音楽的に体感する事こそがこの映画の醍醐味であると思う。
勿論そこには、歴史的な知識や、学問的な見地や、そういった論理的(あるいは数学的つまり音楽的)な理解が求められる部分もあるが、それだけで止まるなら映画である必要は無い。
若かりし頃は堂々と「ゴダリスト」を標榜していた俺としては、個人的にはゴダールは『映画史』で終った観は否めない。
だとしたらそれ以降のゴダールの作品は、現代の映画史とまさにリンクしているのだが、如何に直接的にポリティカルなメッセージをそうではない形で映画に組み込むかという試行錯誤のように見て取れる。
そういう意味では70年代ゴダールよりも遥かに映画史的な興味はそそられる。
というより、そういう「二面性を持つこと」自体が『アワーミュージック』のテーマだったりもするので、矢張りそういうことなのかなとも思う。
兎も角、音楽を聴くようにリラックスしてを観れば非常に楽しい映画だと思う。


ライフ・イズ・ミラクル』 エミール・クストリッツァ 2004

で、セルビアのエミール・クストリッツァが、またユーゴの歴史を寓話的に描き出す。
猛烈に面白い。猛烈に面白い。
2時間半の長尺ながら、それこそ言葉を失う程に映画的にのめり込んで行く。
なんつーのかな、やっぱそこで生きているってスゴいことだと思う。
観ていると、そういう生身の肉体の重さを体感する。


というわけで、気付くとなぜか巨匠達の映画ばかり観ているのは、バンクーバーで新世代の若き作家達の作品ばかりを観ていた反動かしらと思う。


ところでバンクーバーで大変に仲良くして頂いた中村高寛監督の『ヨコハマメリー』は全国各地で絶賛上映中ですが、都内では17日まで飯田橋ギンレイホールで上映しています。

これも本当に良い映画で、観た時は心から感動して仕方なかったし、というよりファーストカットからドキドキしっぱなしだし、日本の同世代でこんなにスゴイ作品を撮る人がいるってだけで誇りに思える程、最高の映画です。

いや別に宣伝頼まれたわけでもなんでもないのですが、もしクサクサしているけど観たい映画が見つからないって人がいたら、こんなに素晴らしい映画もやっているんですよというご紹介でした。
posted by 井川広太郎 at 00:45| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | lost in blog | 更新情報をチェックする

2006年11月09日

Keep in touch! 7 10月4日前編

8:00 起床

んあー!今日は遂に『東京失格』のInternational Premiereの日じゃあないか!
なのでバッチし「東京失格Tシャツ」を着込む。


9:00 朝食

福島さん念願のジョージアホテルの朝食に行く。
しかし、出てくる物は一緒。


10:30 1人で映画を観に行く

Dancing Boy 2255.jpg

期間中に仲良くなった韓国の女の子の短編。
とってもボーイズラブな初々しい作品。
少しトロイ男の子が、憧れの同級生に振り向いてもらえるように必死でダンスの練習をする。
こういった若い才能が、ゆくゆくは世界に発信する韓国のラブコメディを手掛けるのだろうと納得。


Withered in a Blooming Season2247.jpg

衝撃の映画。
演出も撮影も編集も駄目駄目なので、最初はちょっとこれはマズいんじゃないかと見ていたのだが、後半になって物語はトンでもない展開をし、映画的なエネルギーが暴走し始める。
決して良く出来た映画ではないが、凄まじい情念が渦を巻いているような感じ。
映画は技術だけじゃないと改めて思い知らされた。
圧倒された。

その帰り、ぼーっとしながら歩いていると向こうからトニー・レインズがやってくる。
俺は興奮して「あんな下手なのに最高な映画を選ぶなんて、あなたはスゲーよ!」みたいなことを捲し立てる。
トニーは飽きれながら「あの作品を気に入ってもらえて良かった!しかし今は急いでいるんだ!それと今夜の君の上映も忘れないでね!」


14:00 花よりもなほ1213.jpg

先の作品の衝撃で予定が狂い、暫しぼーっとしてる。
と、丁度『花よりもなほ』の上映時刻になっていたので劇場に滑り込む。

矢張り時代劇とあってかカナダでも大人気で、席は超満員。
期間中にも色々な国の人から「あれ見た?」と聞かれた。
で、劇場でもチャーリー他、何人かのゲストに会う。
上映後にはチャーリーが「最高にcoolだったぜ!君は時代劇撮らないのか?」と言ってきた。
いや、物凄く撮りたいです。


16:00 壁探しwords.jpg

4年前にバンクーバーに来た際、酔った夜中の帰り道にある落書きを発見した。
壁に書かれた「ignorance is the seed of violence」という言葉はそれ以来、俺の心の真ん中に居座り、『東京失格』という映画の象徴ですらあった。
今回、バンクーバーに『東京失格』を持ってくることが出来て、原点の一つとも言えるその壁の落書きを探すことを楽しみにしていた。
実際、一時間以上、思い当たる地点を歩き回って探していたのだが、記憶は曖昧だし、4年も前の落書きなので消されていて不思議ではないし、次第に見つける意義すら失って行った。
結局、途中で探すのは止めた。
なんつーのか、大事なのはその言葉をキッカケに『東京失格』という映画が生まれ、今度はバンクーバーの劇場のスクリーンに俺が落書きするわけで、きっとそうやって想いは受け継がれて行って、物にはさほど意味はないのだと思う。
うん。そうだ。人や物はいつか消えちゃうけど、そこで起きた事や生まれた想いは消えないんだ。
最初から形がないからね。
映画は光だ。


18:00 ホスピタリティ

『東京失格』組全員集合。
とりあえず腹ごしらえで酒と飯を胃に入れまくる。


18:30 上映チェック

本来はお任せなのだが、物凄くナイーブになった俺は無理を言ってゴネまくって上映チェックを御願する。
上映責任者が「こんな先例無いよ!」と飽きれながらも、俺のリクエストに快く応えてくれる。
問題ないのを確認して、漸くちょっとホッとする。
「だろ!俺達もプロだから信用してよ!」とウィンクする上映責任者と握手して、うわーいよいよだと緊張が一気に高まる。


19:15 『東京失格』International Premiere

劇場前には長蛇の列。
まさかと思って確認したら『東京失格』の列だと言う。
嬉しいを通り越して2周ぐらい回って戻って来てやっぱし感動の嵐って感じ。

元から緊張し易い俺だが、この上映を迎えて本当に心臓が喉から飛び出る程緊張した。
関口と「上映中は観ないでおこう」とか弱く相談していたら、福島さんが「一生後悔するから観ておけ」と言う。
しかし、あまりの緊張に震えが止まらない。

バンクーバー在住の友人や、期間中に知り合った各国ゲストや、お世話になっているスタッフや、日本人ゲストのみんなも観に来てくれる。
そして、劇場は300人近くの満員に。
すげー。
ありがとー。俺は緊張しまくりだよ。

なんで、こんなに緊張するんだろう。
劇場公開初日もこんなには緊張しなかった。
やっぱバンクーバーだからかしら。
おお!俺はバンクーバーで遂に『東京失格』を上映するんだぜ!
4年前からずっと思っていた夢を実現しちまうんだぜ!
I'm back!!
ってゆーか個人的な感情持ち込みまくりだよ。
おい!おい!おい!

あー、書いてて緊張が蘇って来たので、続きはまた今度。

posted by 井川広太郎 at 00:11| 東京 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | バンクーバー旅行記2006 | 更新情報をチェックする

2006年11月06日

Keep in touch! 6 10月3日

7:00 起床

ゆっくり風呂に入ったりしている。


9:00 朝食

福島さんが寝坊し、今朝はジョージアホテルに行くのは断念とのこと。
いつも通り、宿泊しているホテルのビュッフェで朝食。


11:00 End of an Elephant 1946.jpg

かつてあった巨大遊園地の盛衰を過去のフィルムと現在の風景とで辿ったドキュメンタリー。
いまのような安全性の高さが求められる人間が乗り込む機械ではなく、人間そのものがオモチャのようになる(例えば人間を発射する砲台や人間を遠心力で飛ばす円盤などの)巨大施設の数々は、見ているだけで妙な思想っつーか世界観の違いを痛感させられる。フィルムに残るという偉大さを再発見する。

Blockade 1914.jpg

第二次世界大戦の独ソ戦におけるレニングラード包囲戦でのレニングラードの市民生活を描いたフィルム。残存する当時のプロパガンダ的なフィルムに音を加え再編集したものであるが、その凄惨な光景は他に稀な物語を語る。


以上2本を関口と鑑賞。
ふらりと寄った上映であったが、2人とも大満足。


12:30 映画祭事務局

関口と映画祭事務局に行って、コーヒー飲んで、各国のゲストと駄弁ったりしている。

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13:00 チリハウス

関口がバンクーバー在住当時に頻繁に通ったというチャーニーズ屋さんに行く。
この店、普通のオフィスビルの地下という物凄く目立たない場所にあり、店員は英語があまり話せない中国人のおばさん一人。
内装は俺が知る限り世界最強クラスにメルヘンの限りを尽くしていて、腹だけではなく、心までも満たしてくれる。
なっつーか、バンクーバに咲いた一輪の花とでも例えようか、あまりにも幸せで腹がよじれる程に笑った。


14:00 散歩

多分、関口とパブ巡りをしていた。

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17:00 ホスピタリティ

『東京失格』組みんなで集まって呑んで食べる。
この後、ラジオの収録らしいから控えめにしておこうねと話していると、久美子さんがやってきて「19時から生放送なのに大丈夫ですか?」と宣う。
え?生放送?収録じゃないの?聞いてないよ…


19:00 ラジオの生放送

久美子さんに率いられ、ラジオ局に車で向かう。
「ラジオ日本」はバンクーバーで唯一の地上波による日本語放送だそうだ。
DJのヒゲタムさんの豪快なキャラに乗せられながら、俺と主演のタックン、たかちゃんで30分程の出演。


21:00 パブ

ラジオの生放送から帰り、久美子さんと皆でパブで酒呑みながらバーガー喰らう。


21:30 Diagrams for Space and TimeDIAGR.jpg

カナダの作家達による10数本の短編映画のオムニバス。
その内の一遍を仲良くなったカナダ人のチャーリーが監督として参加しているので皆で見に行った。
チャーリーが監督した短編は、モスクワのホテルの一室で数名のクリエイター達が24時間以内に数本撮るという企画で作られたもの。
条件が限られていてもアイデア次第でスタイリッシュに見せる手法に関心した。
映画は勿論オモシロかったが、しっかしそれ以上に劇場内が外以上に寒くて参った。


24:00 トニーのパーティ

最初、24時集合と聞いた時はわが耳を疑ったが、それだけ忙しい最中に歓迎してくれるということ。
トニーの招待で日本人ゲストの歓迎パーティがチャイニーズレストランで行われる。
『東京失格』組以外にも、今日バンクーバーに着いたという『隼』の市井監督や、『Cain's Descendant』のチームなどが一同に会す。
しかし、流石にみんな疲れているためかテンション低め。
いや、それでも呑んで、喰って、話しまくっているのだが。


26:30 ホテルに戻る

いやー、疲れた。
寝る。
posted by 井川広太郎 at 23:52| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | バンクーバー旅行記2006 | 更新情報をチェックする

2006年11月04日

Keep in touch! 5 10月2日

3:00 起床

くそー酔い醒めだー。
風呂に湯をはってジェットバスで泡泡にしたりして一時間程ゆっくり入浴。
その後、日記をつけたりして5時頃に2度寝。


8:30 朝食

8時頃に起きて、ホテルのビュッフェで朝食。
皆から「(映画祭本部での)朝食はどうなの?」と聞かれる。
いや似たようなもんですよと答えるが、明日はあっちに行きたいと口を揃える。


10:00 アピチャッポンに会う

映画祭本部に行くとアピチャッポンがいる。
アピチャッポン・ウィーラーセタクンは、カンヌの審査員賞をとったタイの若手監督。
以前から白川幸司監督と親交が厚く、その縁で俺も何度か会っていはいたが、たまたま今回のドラゴン&タイガー部門の審査員だったりもする。
久しぶり、みたいな感じで挨拶して、世間話。
『東京失格』楽しみだよ!と言ってくれる。
因に今夜はアピチャッポンの新作も招待上映されるので、俺は観に行くことを約束する。
それにしても人の縁って不思議。


12:00 Walking on the wild side035638a_380.jpg

いやー、びっくり。最高の映画でした。
トニー・レインズがプログラムした中国映画は毎度のようにオモシロいので、とりあえず観てみるかとフラッと観た映画なのだが、衝撃的な傑作でした。
後になって知ったのだが、監督のLAI XIAO ZIは長らく賈樟柯(ジャジャンクー)監督のアシスタントを務めてきて、これがデビュー作とのこと。そして、この映画は世界中の映画祭で好評家を得ている超話題作だったらしい。
中国の田舎町の悪ガキ3人組が傷害事件を起こして逃亡生活を始めるのだが、次第に3人の関係性の歯車も崩れ始め、次々と悲劇的な結末を迎えて行く。
まー、とにかく最高。観た瞬間、今年のベストワン決定って感じ。
ホウ・シャオシェンの『風櫃の少年』、エドワード・ヤンの『クーリンチェ少年殺人事件』を思い出しました。


14:00 Lights in the Dusklightsinthedust_01.jpg

アキ・カウリスマキの新作。
緻密な構成。
完璧な造形美。
相変わらずの悲喜劇。
まさにワン&オンリーの名人芸。
いやー、勉強になる。
オモシロかったです!


15:30 パブとかチャイナとか

関口と合流して、『Lights in the Dusk』を共に絶賛しながらWalking Down the Street。
パブで酒呑んだり、チャイナのテイクアウトで買い食いしたりしてる。

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18:00 木村さんと会う

バンクーバー在住の木村さんに会う。
木村さんは白川幸司監督作『眠る右手を』で録音を担当。
で、現在、木村さんはバンクーバーに語学留学中とのこと。
因に『右手』の撮影監督である俺は同作で初めてバンクーバーを訪れたのだ。
縁と所縁を感じる。
お茶しながら、遥か5年前の現場の想い出話などをしている。
懐かしいなあ。


21:15 Syndromes and a CenturySyndromes website catalogue.jpg

アピチャッポンの新作『Syndromes and a Century』を観に『東京失格』組一同集合。
で、映画自体は、今までのアピチャッポンの作品の中では最もポップで観易い感じがした(『アイアン・プッシー』は除く)。
原風景的な映像と物語が、あたかも旋律の反復かのように、微妙に形を変えながら繰り返されて行く音楽のような映画。
相変わらず大胆な手法を堂々と用いている。
映像が美しい。


23;00 デイビーで呑む

『東京失格』組の皆とバンクーバー在住の関口の友人達とで呑みに行く。
デービーストリートという、通称ゲイストリートで知られる通りにあるパブっつーかレストランで、この店のスタッフはハリウッド映画にも出演歴がある有名人も多いのだとか。
『東京失格』の上映のチラシを置いてくれないかと頼んだら「もっと沢山くれよ!」だって。
みんな良い奴らだ。


25:30 ホテルの部屋に戻りみんなで呑む

バンクーバーでは、路上での飲酒(Bloc party!!)が違法。
酒屋も早い時間に閉まってしまう。
ので、昼間に買っておいたビールを皆でちびちびと呑む。


26:30 就寝

posted by 井川広太郎 at 13:33| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | バンクーバー旅行記2006 | 更新情報をチェックする