2011年12月02日

風にそよぐ草

風にそよぐ草』(原題:LES HERBES FOLLES/2009年/フランス,イタリア/1時間44分/配給:東宝東和)

幸せな家庭を持つ紳士が、ある日ひとりの女性に心をとらわれた―

人を愛する情熱は、アスファルトのすき間から生える名もなき草のように、強く、しなやかに、決して枯れて絶えることはない……。
出会いは偶然だった。歯科医のマルグリットはある日、街で引ったくりに遭い、バッグを持ち去られる。彼女の財布だけが駐車場の片隅に捨てられていた。拾ったのは、初老の紳士ジョルジュ。中に入っていたマルグリットの小型飛行機操縦免許の写真を見て、彼の中で何かが弾けた。
警察に届け、マルグリットの元に戻った財布。彼女がお礼の電話をかける。ジョルジュが、妻と子ども達と食卓を囲んでいる最中、電話のベルがなった。「お礼を」、「それだけ?」、「他に何か?」、「“会いたい”とか」、「必要を感じないわ」、「がっかりだ」。
こうして始まったふたりの関係は、周囲を巻き込みながら、思いも寄らない方向に転がり始める……。


89歳にして才気あふれるアラン・レネ芸術の到達点

「二十四時間の情事」、「去年マリエンバートで」…、1948年にデビューして以来、その革新的手法で映画史に数々の名作を残してきたフランスの巨匠アラン・レネ監督の最新作は、芳醇なワインを思わせる大人のための恋愛映画。
しかしよくある作品とは一線を画し、一筋縄ではいかない。 観る者は、サスペンスあふれる謎めいたオープニングにワクワクし、なかなか噛みあわないふたりの想いから生まれる喜劇的状況にクスリと笑い、妄想を募らせる主人公にハラハラし、その後のシュールな展開に茫然と息をのむことになる。
89歳とは思えない瑞々しい感覚と、熟達した映像表現、大人の遊び心を持ち合わせた本作は、2009年カンヌ国際映画祭コンペ部門に出品。
アラン・レネ芸術の一つの到達点として世界の映画人を虜にし、審査員特別賞、特別功労賞をダブル受賞した。


フランス現代文学の雄、クリスチャン・ガイイ原作

マルグリット・デュラス、アラン・ロブ=グリエ…、時代時代の先駆的な文学者と組んできた監督が、原作に選んだのは『さいごの恋』で知られるフランス現代文学を代表する作家クリスチャン・ガイイのベストセラー小説。
独特の文章のリズムと繊細な心理描写で世界中にファンを持つガイイの世界を、見事に映像化している。
撮影は「夏時間の庭」でオリヴィエ・アサイヤス、「クリスマス・ストーリー」でアルノー・デプレシャンと組んできたエリック・ゴーティエ。
主演はアンドレ・デュソリエ、サビーヌ・アゼマという近年のレネ作品ではお馴染みのコンビ。レネ監督の大ファンと言ってはばからないマチュー・アマルリック、「ココ・アヴァン・シャネル」のエマニュエル・ドゥヴォスが脇を固める。
本作は、映画を観ることの極上の歓びを、観客の心に甦らせてくれることだろう。



キャスト: サビーヌ・アゼマ、アンドレ・デュソリエ、アンヌ・コンシニ、エマニュエル・ドゥボス、マチュー・アマルリック、ミシェル・ビュイエルモーズ、エドゥアール・ベア

監督: アラン・レネ

公式サイト http://kaze-kusa.jp/

12/17(土) 岩波ホールほか全国順次ロードショー!


こんにちは。
映画を観ていると時々、年を重ねる喜びに悶絶することがあるわけです。

その理由は三つぐらいあって、一つはこの映画のように年老いてからの恋愛物語に夢と希望を持つからであり、二つ目は映画は観れば観るほど未知の映画との出会いがあって観客としての満足と欲望が高まり続けるからであり、三つ目は老いぼれが撮った映画の斬新さに衝撃を受けて技術に限界など無いということを思い知り映画監督として無限の可能性を感じるからなのであります。

ところで、こないだ歯医者さんに行ったんですよ。
数年前に一度だけ、某現場の直前に猛烈に親知らずが痛くなって速攻駆け込んでスポンと抜いてもらったことを除けば、ほとんど20年ぶりぐらいにまともに歯医者さんに行ったわけです。

で、行く前から恐怖と緊張でドキドキしっぱなしだったわけですが、歯医者といえばカサヴェテスの『ハズバンズ』を何度も観ているんだから怖くなんてないぜ!と自分に言い聞かせていたわけです。
そういえば、歯医者さんのシーンが出てくる映画って結構多いような気がしますね、なんとなくなんですけど。
で、いざ歯医者さんに入ってからも『風にそよぐ草』の歯医者さんのシーンを観たばかりだからへっちゃらだぜ!と心の中で呪文のように繰り返していたわけです。
『風にそよぐ草』の歯医者さんのシーンが秀逸で助かりましたね、心構えというか予習ができてました。

そんなこんなで歯医者さん嫌いだったはずが、歯医者さん好きになって病み付きになってしまいそうなほど素晴らしい体験でした、久々の歯医者さんは。
レントゲン撮る時は素直にエッーってビビりましたけど、それ以外は甚だ快適で、歯医者さんがこんなに良いものだなんて今まで誰も教えてくれなかったのはなんでなんだろうと不思議に思います。

ともかく、巨匠アラン・レネが撮った新作が超斬新でポップで、原作ものでありながらとても言葉では表現できないような作品であるという事実に驚きつつ、めくるめくイマジネーションに、ただただ胸躍る映画体験なのであります。
posted by 井川広太郎 at 00:08| Comment(0) | TrackBack(1) | REVIEW | 更新情報をチェックする