2012年12月15日

悪人に平穏なし

悪人に平穏なし』(原題 No habra paz para los malvados/製作年 2011年/製作国 スペイン/配給 シンカ/上映時間 114分)

2004年3月11日にスペインの首都マドリードで起こった列車爆破事件を題材に、テロ組織の犯行計画に単身で立ち向かう中年刑事の生きざまを描いたハードボイルドサスペンス。
かつては敏腕刑事として活躍していたサントスだったが、過去のある事件がきっかけで左遷され、いまは酒に溺れる日々。
そしてある晩、泥酔したサントスは、酒場で揉めごとを起こした末、店内にいた3人を射殺してしまう。
証拠隠滅のため、現場から立ち去った目撃者の後を追うサントスだったが、その過程で大規模な犯罪計画を練るテロ組織と接触。
殺人事件の容疑者として警察から追われる一方で、刑事としてまだ残っていた最後の正義感から、たった1人でテロ組織と対じする。
12年ゴヤ賞(スペイン・アカデミー賞)で作品賞、監督賞、主演男優賞など6部門を制した。



監督: エンリケ・ウルビス
キャスト:ホセ・コロナド、ロドルフォ・サンチョ、エレナ・ミケル、フアンホ・アルテロ、ペドロ・マリ・サンチェス、ナディア・カサード、他

作品公式サイト http://www.akuninheion.jp/
2013年2月9日公開


ハードボイルドなのか、ダークヒーローなのか、予定調和をことごとく崩していくストーリーがサスペンスになっている。
ヒロイン設定のエレナ・ミケルという女優さんは、元々はミュージシャンらしいのだが、超絶綺麗で存在感あって素晴らしい。
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2012年12月14日

やくたたず



遅ればせながらようやく、三宅唱監督『やくたたず』をオーディトリウム渋谷で観た。
非常に良かった。
彼の映画の欠点はあまりに映画的すぎて言葉にすることが難しいことだと思うのだが、個人的には最新作『Playback』に至る直前のモヤモヤというか試行錯誤が見えたようで、スッキリした。
三宅唱の映画なので役者がみな素晴らしいのは当たり前なのだが、本作ではシーンごとに大人と子供を行き来するようなヒロインが謎めいていてチャーミングで抜群に良い。
それにしても登場人物達の顔がみな素晴らしくて、観ていて惚れ惚れする。
モノクロームの画面の中で見渡す限り雪に覆われた北海道はまるで和紙のように美しく、行き当たりばったりに疾走して足跡を残していく彼らの姿は筆から滴り落ち飛散する墨汁のようだ。

というわけで、今年を代表する傑作であり、いま観るべき映画、三宅唱監督『Playback』はやはり大好評で続々と期間を延長して上映しているようなので、この機会に是非!
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2012年12月11日

最初の人間

最初の人間』(原題:Le Premier Homme/105分/配給・宣伝:ザジフィルムズ)

ノーベル文学賞作家 アルベール・カミュ、
自伝的遺作、ついに映画化!

「異邦人」「反抗的人間」等で知られるノーベル文学賞作家、アルベール・カミュ(1913−1960)は、46歳の若さで自動車事故のためこの世を去った。
その際にカバンから発見された執筆中の小説「最初の人間」は、30年以上の長い歳月を経て、1994年に未完のまま出版され、フランスで60万部を売り上げるベストセラーとなり、その後世界35か国で出版、大きな反響を呼んだ。
しかも、フランスに住む作家が、生まれ育ったアルジェリアに帰郷する、という設定は紛れもなく自伝であり、カミュの創作の原点を知る上で大きな事件であった。
2013年に迫った“カミュ生誕100年”を記念し、遂に映画化されたのが本作である。


独立運動の最中、故郷アルジェリアで母と過ごす日々。

1957年夏。作家コルムリは、今は老いた母が独りで暮らす、生まれ育った土地アルジェリアを訪れる。仏領のこの地は、独立を望むアルジェリア人とフランス人の間で激しい-紛争が起こっていた。
そんな中でも、母はいつもと変わらぬ生活を続けており、息子の帰郷を喜んだ。地中海の青さも、あの頃のまま。いつしか心は、かつての少年の日に還って行く─。
父は若くして戦死し、厳しい境遇のなかで懸命に働きコルムリを育ててくれた母、厳格な祖母、気のいい叔父、彼らはみな文字が読めなかった。そんなコルムリを、文学の道にい-ざなってくれた恩師、アルジェリア人の同級生のこと...。
数々の思い出が彼の胸を去来するが、その一方で、現実の状況が、当時と大きくかけ離れてしまったことを目の当たりにしてゆく。


「家の鍵」のイタリアの名匠ジャンニ・アメリオ監督

フランスとアルジェリアの関係を描いた代表的な映画に、「アルジェの戦い」(ジッロ・ポンテコルヴォ監督/1966/ヴェネチア国際映画祭グランプリ)と、カミュ原作の「異邦人」(ルキノ・ヴィスコンティ監督/1968)の2作品があげられるが、いずれもイタリア人監督だった。期せずして本作の監督もイタリアの名匠ジャンニ・アメリオである。
彼は、カンヌ国際映画祭 審査員大賞作「小さな旅人」では移民、貧困、差別問題を、ヴェネチア国際映画祭三部門受賞の「家の鍵」では障害を持つ子供との共生、と常に他者との共存の可能性をテーマに据えてきた。



監督;ジャンニ・アメリオ 
原作:アルベール・カミュ「最初の人間」
出演:ジャック・ガンブラン、カトリーヌ・ソラ、マヤ・サンサ、ドニ・ポダリデス、ウラ・ボーゲ

公式サイト http://www.zaziefilms.com/ningen/

12月15日より、岩波ホール他全国順次公開!




映画『最初の人間』原作本 「最初の人間」新潮社文庫より2012年10月末復刊決定!! 


アルジェリアとフランスとの複雑な関係を背景としつつ、純粋に母と子の物語として感動的。
自分を生み出した親や国に対する愛情が深いからこそ、自分は誰なのかという根源的な問いに対峙する繊細でたくましい姿が、騒々しい時代の中で凛として美しい。

文学賞とか自伝的遺作とかカミュとか言われると、ついつい身構えてしまうが、この映画は難解なわけでもなく、くどくどと説明的なわけでも、ましてや、お涙頂戴なわけでもない。
むしろ自由奔放にファンタジックで、変幻自在なイマジネーションに満ち溢れていてカッコいい。
冒頭の官能的な移動撮影からして既に、そんな予感に満ちている。

例えば、子供時代に飛躍するシークエンスの大胆さは、まるで現実と虚構との垣根をひょいと飛び越えていくようで、まだ幼かった頃の大らかな冒険心を思い出させてくれる。
あるいは唐突に現れる謎の女の、憂いに満ちた表情に虜になってしまいそうな、まさにその瞬間に訪れる転調などは、サスペンスとしても秀逸である。

原作は読んでいないので小説がどう未完なのか、現状ではどうなっているのかも知らないのだが、この映画はきっちりと完璧なエンディングを迎えてみせる。
この映画がラストで到達する、静謐ながら緊張感に満ちあふれた映画的なダイナミズムは圧巻。
ふと眼差しを向け、母を想うという、ただそれだけのことを淡々と描くことで、これほどまでに叙情的かつ魅惑的で感動的であることができるのかと、ゾクゾクした。
posted by 井川広太郎 at 21:06| Comment(0) | TrackBack(1) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2012年12月03日

ナイトピープル

ナイトピープル』(2012年/日本/90分/配給 太秦)

直木賞作家・逢坂剛の傑作短編に
各国の映画祭で注目を浴びる新鋭監督が更なる逆転劇を加えた
クライム・サスペンスの快作誕生!

予測不能な心理戦×前代未聞の銃撃戦
映画界屈指の実力派俳優たちが壮絶な騙し合いで競演!!

出演は、本谷有希子原作の『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』でとんでもない悪女を熱演してヨコハマ映画祭・主演女優賞を受賞し、『その街のこども』ではリアリティ溢れるデリケートな演技で注目を集めた佐藤江梨子。
今作では復讐を果たすため男たちを翻弄する魅惑的な女を見事に演じている。
その思惑に気づきながらも女に惹かれていく男を、『容疑者Xの献身』、『怪物くん』、『テルマエ・ロマエ』など数多くの作品で多彩な役柄を演じわけインパクトを残す個性派・北村一輝が好演。
そして、多くの監督に支持され出演作が絶えない杉本哲太が、警察の職務を利用してふたりを出し抜こうと画策する狡猾な刑事で凄みを利かせる。
さらに脇を固めるのは、日本アカデミー賞をはじめとする名だたる賞を獲得してきた若村麻由美、『SP』シリーズや『AVN/エイリアンVSニンジャ』などで本格アクション俳優として活躍する三元雅芸。
実力派俳優たちが壮絶な騙し合いの競演を果たした。

緊迫した駆け引きの応酬に、逢坂作品特有のハードな銃撃描写が随所に織り込まれ、原作にはない思いがけないスリリングな展開とどんでん返しが連続する強烈なクライム・サスペンスがここに誕生した。
誰が嘘をつき、どこからが偽りなのか、観る者を裏切り続ける物語の顛末とは――?



原作:「都会の野獣」(逢坂剛)
脚本:港岳彦 
監督:門井肇 
出演:佐藤江梨子、北村一輝、若村麻由美、三元雅芸、杉本哲太ほか

2013年新春劇場公開予定
作品公式サイト http://www.u-picc.com/nightpeople/


メイキングとして本作に参加したといっても現場の片隅で傍観していただけなので、紹介するにも微妙な立ち位置なんだが、やはり、フィルム・ノワール、クライム・サスペンス、ハードボイルドといった既視感に溢れながらも、どこか歪な、今までに観たことがないような独特の味わいの映画である。

繰り返される銃撃戦はケチらずブチ込みまくるサービス精神旺盛で、市街戦も迫力があって見応え十分。
とにかくロケは凍てつく寒さで特に俳優陣は心身共に相当ハードだったはずなのだが、現場ではもちろん、本作のどのシーンでも余裕すら感じる遊び心満載の芝居で、映画ならではの贅沢な演技合戦が見せ場になっている。

飛び交う札束、万能のジェラルミンケース、ジョッキの牛乳、ボディコンの女、ごろつき軍団、不死身の男などなど、コッテリした味付けがタップリで、蹴つまずいたおもちゃ箱から新旧様々な玩具がゴチャ混ぜになって飛び出してきたような、ハチャメチャな映画。
これでもか、これでもか!って次々に出てくる小ネタの数々に、イチイチ突っ込みを入れている間もなく、大どんでん返しの連続で、物語というよりこの映画自体が予想もつかない方向へと全速で転げていく。

なんというか、ここまでストレートで大胆な映画って、ありそうでいて最近はあまりなかったんじゃなかろうか。
堅苦しくなく、重苦しくなく、しかしボリューム感満点で、古き良きプログラムピクチャーを彷彿とさせるのは、センチメンタルなノスタルジーが隠し味になっているからであろうか。
posted by 井川広太郎 at 15:06| Comment(0) | TrackBack(0) | lost in blog | 更新情報をチェックする