2016年08月31日

みかんの丘

『みかんの丘』(原題 Mandariinid/2013年/エストニア・ジョージア合作/配給ハーク/87分)



監督 ザザ・ウルシャゼ
製作 イボ・フェルト、ザザ・ウルシャゼ

公式サイト http://www.mikan-toumorokoshi.info/
9月17日より岩波ホールにて公開


グルジアからの独立を目指すアブハジア自治共和国で、敵対し傷つけあったチェチェン人とグルジア人を、エストニア人の老人が介抱する人間ドラマ

めちゃんこ面白かった!
個人的にはどストライク、モロ好みの絶品。
戦争の悲惨さを描くリアルでドライな物語の中に、ユーモアと人間賛歌が溢れている。

アブハジア自治共和国は、グルジアからの独立を主張し紛争の真っ最中。
そんな中、エストニアからの移民の集落には一人の老人と、みかん畑を営む友人だけが残っていた。
戦線は近づいてきており早く避難をしなければならないが、老人はなぜかこの地を離れる意思はない。
そんな時、老人の家の側で小隊同士が衝突し、ほとんどの兵士が死亡する。
だが、アブハジアの傭兵であるチェチェン人と、敵対するグルジア人だけが奇跡的に生き残り、老人は二人を助け出して自宅で治療する。
老人の介抱の甲斐あってほどなく目を覚ましたチェチェン人とグルジア人は、お互いの存在に気づくと敵意をむき出しにし、隙あらば殺そうとする。
すると老人は、この家の中では揉め事は許さないと一喝する。
恩人である老人には頭が上がらないチェチェン人とグルジア人は、憎まれ口を叩きながらも療養のための共同生活を続ける。
考えも境遇も人種も違う三人だが、一緒に暮らすうちに少しずつ心を通わせていく。
しかし容赦なく拡大していく戦火が、いよいよ老人の家にまで迫ってきて…というお話。

シンプルな物語に個性的な登場人物、真に迫った世界観、笑いを忘れぬ姿勢、緻密でいながら温かみがあるところまで全てが魅力的。
なにより、陽気な老人のキャラクターが素晴らしい。
戦場に居座って孤独ながらしかし楽しく暮らす老人の笑いと涙を併せ持つ人間味が、悲しく不条理な戦争を描きながらも幸福な気分にさせるこの映画を体現している。

そしてエンディング曲。
前振りからしてバッチシなので「来るぞ!来るぞ!」と身構えていたんだけど、果たして、想像を遥かに超えるカッコ良い曲で震えた。
なんでも実際にアブハジア紛争中にグルジアで大ヒットした曲だとか。
これ、これなんだよ!本当に僕は何も知らない。泣かずにはいられないよ、僕は。
posted by 井川広太郎 at 00:08| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2016年08月30日

ジャニス:リトル・ガール・ブルー

『ジャニス:リトル・ガール・ブルー』(原題 Janis: Little Girl Blue/2015年/アメリカ/配給 ザジフィルムズ/103分)



監督:エイミー・バーグ
製作:エイミー・バーグ、アレックス・ギブニー
出演:サム・アンドリュー、ピーター・アルビン、デイブ・ゲッツ、クリス・クリストファーソン、カントリー・ジョー・マクドナルド

公式サイト http://janis-movie.com/
2016年9月10日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー!


”ブルースの女王”ジャニス・ジョップリンの27年間の生涯を当時のバンド仲間や家族などの多数のインタビューと書簡からたどるドキュメンタリー

ジャニス・ジョップリンの短すぎる人生の濃密さに圧倒されるが、音楽的な活動や功績よりも、スターの孤独な横顔が生々しく映し出される。

イジメられていた少女が構ってもらうためにセックスをし、ウケるために歌い、孤独を紛らわすためにドラッグに溺れているかのようにも見え、どんなに大きくなっても決して消えては無くならない、少女のかよわさが剥き出しになる。

力強い歌声の根元を垣間見つつ、やはりそれは個人的なものに止まらない。
ベトナム戦争を背景に、無力感と現実逃避からか若者たちは酒とドラッグとセックスに溺れ、不確かな愛に飢えながら、ウッドストックへと暴走するような熱狂的なエネルギーを、ジャニスは確実に反映していた。

しかし、この映画はちっとも古めかしくなく、むしろ現代の暗喩か未来への啓示のようですらある。
巨大資本のエゴばかりが優先される絶望的なこの時代に、新しい歌姫は降臨するのであろうか。
だとしたら、それはジャニスのように生々しい肉体と声をともなっているのであろうか。
期待と不安を感じつつ、いまこそ見るべき映画だと思った。
posted by 井川広太郎 at 13:39| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2016年08月06日

監督作『キミサラズ』初上映

本日、監督作『キミサラズ』が、木更津で上映されました。

この作品は、木更津高校出身の俳優であるカマチさんが「地元の木更津で映画を撮りたい!」という情熱から、自らプロデューサーを務め、同窓生に声をかけて資金繰りをして作り上げた作品です。

木更津という地名の由来になったというヤマトタケルノミコトの「君去らず」伝説、お富さんで有名な歌舞伎演目の「切られ与三」、そしてお隣の君津市出身の画家である柳敬助などをモチーフにしたオリジナル脚本で、僕は準備段階で監督をして欲しいと声をかけられ、参加することになりました。

実際、十分と言うには程遠い予算で非常に厳しい状況でしたが、2015年の5月に木更津で撮影を敢行し、なんとか完成するに至りました。

しかし映画は完成してからも、上映するという、さらに難しい段階があります。

その壁を乗り越えるためにカマチさんを中心に集まった「かずさ映画製作委員会」の皆さんが力を合わせ、今後の展開を模索中で、まずは木更津からということで、本日、初上映という運びになりました。

これから東京や全国、そして海外での上映を目指して、「かずさ映画製作委員会」は一歩ずつ動いていくということです。

個人の想いから始まった手作りの小さな小さな映画ですが、本日はここから大きく広がっていくような、そんな希望を感じる上映でした。

まだまだ時間もかかるかと思いますが、どうか、多くの人に届く映画に育っていってくれればと願っております。

明日、8月7日日曜日も、木更津で上映されます。
今後の上映はいまのところ未定ですので、お近くの方はこの機会に是非、ご覧下さい。

かずさ映画製作委員会 https://www.facebook.com/kazusaeiga/

posted by 井川広太郎 at 22:57| Comment(0) | TrackBack(0) | lost in blog | 更新情報をチェックする