2008年08月24日

SF

ぶっちゃけると、自分の映画がDVDになって全国で販売&レンタルされることなど、俺はついこの間まで想像すら出来なかったのです。

3年前に撮った映画が、劇場公開し、国際映画祭に行くことまでは想像していたっつーか寧ろイメージし、その実現の為に努力していたのだけれども、学生映画を経たインディペンデント出身の俺は、その後の展開に関しては正に暗中模索で不安も迷いもあった。

そんな中、2年前のシネマアートン下北沢での劇場公開中は毎日舞台で観客に挨拶し、出来る限り観客と直接話す機会を設け、自分の映画と寄り添い、観た人のストレートな感想を受け止める様にしていた。

勿論、好意的な感想ばかりとは限らず怖さもあったけど、自分で映画を撮って世に出したということを実感したかったし、実感できたことが何よりの励みになった。

それからバンクーバー国際映画祭に行き、2ブロック先にまで続く行列が自分の映画の観客だと知ったときは、震えたな。震えたっちゅーか、腰を抜かした。

バンクーバーで受けたインタビュー取材でこれからどうしたいかと聞かれ「東京失格という映画と手を取り合い、世界中を旅したい」と、思わず口から出た。

それは奇しくも実現し、最終的には10を越える映画祭で上映することが出来た。

しかし忘れもしないのはイギリスのブラッドフォード国際映画祭。あの映画祭は、俺が初めて『東京失格』の上映に立ち合わない上映だった。

作品はちゃんと上映されているか、観客は満足してくれているか、『東京失格』は独りで大丈夫か、物凄く不安で、イギリスでの上映中の91分間は地球の真裏の日本でドキドキしっぱなしだった。

それからは、俺が立ち合える映画祭もそうでない映画祭も増え、流石に多少は慣れて来たのだが、それでも未だに矢張り、俺がいなくて大丈夫かなと不安になったりもする。

22日の発売開始から2日が経って、少しながらあの作品を観たという方からのメッセージが俺の元にも届くようになってきた。

俺がいないところであの作品が観られ、つまりは観る方と一対一で向き合っているという事実が、未だに少し不思議だ。

DVDになるということは、作品がいよいよ俺の手を離れ、『東京失格』という映画が独りで旅立つことを意味する、と俺は解釈する。

言うまでもなく、そのことによって俺が得るフィードバックは、今まで俺が経験した劇場公開や映画祭とはまた違う新鮮な刺激で、こういう新しい経験を少しずつ積み重ねて行くことが、映画監督としての俺の(映画)人生なのかなと最近は思えるようになってきた。

今までも沢山の上映の機会があって、多くの観客に触れて、絶賛も酷評も受けたけど、もっともっと誇りを持ってあの作品を信じてあげなきゃいけないんだと思う。『東京失格』はもう独りで歩けるのだ。いや、そんなことは分かってはいるのだが、信用と心配は共存し得るのである。なんてことは当たり前田のクラッカーであって、この期に及んで作品を構いたがるのは実は自分の弱さに対する言い訳に過ぎないのである。作品に俺が追いついていないとも言える。それはそれで当然のような気もするけど。

時々思い出すのは、中高生だった俺が深夜TVで見た映画や、山の様に積み重なるまで集めて見たVHSビデオで見た映画のこと。

古い、遥か昔の知らない国の映画だったりもして、そこには矢張り監督はいなかったのだけれど、でも俺はやっぱりそういった映画から監督や役者やスタッフや、俺と同列でその映画を鑑賞する世界中の時代を超えた無数の観客達と何かを分かち合い共有していたんだと思う。

俺が初めて『ハズバンズ』を観た時、カサヴェテスは既にこの世にいなかった。

これから、『東京失格』も多くの人の目に触れて、独りでも臆しない逞しい映画に育っていって欲しい。この際、わんぱくでもいいと言おう。

それって、今はひよっこの俺が逞しい映画監督に成長するってのと、ほとんど同じっつーかシンクロしているんだな。

よーし!競争だっ!

負けないぞっ!
posted by 井川広太郎 at 23:48| Comment(2) | TrackBack(0) | lost in blog | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ワークショップでお世話になりました。
福島さんのブログにてDVD化を知り
先ほど拝見しました!
書いたあった通りDVDとなる事で
劇場で見る機会のなかった自分のような人たち、
より多くの人たちの目に作品が触れる事が出来る事が
作り手として羨ましくてなりません!
そう言った意味で本当おめでとうございます!

…対談の飲み物不足にはウケました。
Posted by ショウジタツヤ at 2008年08月25日 06:43
>ショウジタツヤくん
やあやあ、こんにちは。
観てくれてありがとう!
特典映像の対談の収録の時は俺、緊張しまくりだったからなあ…
思い出すだけで喉が渇く!
Posted by 井川広太郎 at 2008年08月25日 11:12
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