2008年10月04日

山岳漫画とは何か

こんにちは。
時々俺は、自分が無知で良かったと思うことがあります。
それは、新しく何かを知り発見する喜びに出会った時です。

『神々の山嶺』という谷口ジローの漫画を読みました。
あまりに面白くてぶったまげました。
夢枕獏の小説を原作とした登山ものの漫画なのですが、漫画でしか有り得ない描写に満ち溢れていて、漫画の醍醐味である静止の描写とイメージの連動によるサスペンスに溢れた傑作でした。
前半の緻密に構成されていく伏線と、物凄い勢いでドラマと化して行く中盤、そして後半の至高へと辿り着く展開が、山と登山と山屋ならではの絵と筋によって圧倒的に表れている。
早く読み終えてしまうことが勿体なくて怖かったのですが、それでも読みたいという衝動に打ち勝つことが出来ず、一気に貪るように読みました。
読み終えてから、次は一コマ一コマじっくり味わいながら読み直すのが楽しみです。

登山をテーマにした漫画という括りの山岳漫画というのは、一つのジャンルを形成しているようです。
谷口ジローはその第一人者として極めて評価が高いようですし、最近読んだものでも石塚真一の『岳』は非常に面白く大ヒットしているし、新田次郎の小説が原作の坂本眞一の『孤高の人』も登山にかける訳の分からない情熱が独特の描写になっていて興味深い。

『神々の山嶺』を読みながら思ったのですが、登山と映画は似ているのかもしれない。
単に俺が登山という行為を自分の中の映画と重ね合わせていただけなのかもしれないが、ともかく何か他人事じゃないように思えた。
どう考えても登山なんてあまりに無謀すぎて何でそんなことするのか理解出来ない。
それこそマロリーの「そこに山があるから(Because it is there)」ではないのだが、そもそも説明にすらなっていない。
多分、本人達も分かっちゃいない。
分かっちゃいないから登るのかもしれないし、登れば分かるのかもしれないし、そもそも分かることなんてどうでもいいのかもしれない。
しかし、登る。
しかし、それでも登るのである。

『神々の山嶺』の中でも、誇り高き男達がちょっとしたことでムキになって命を晒すような冒険に出るという繰り返しなのですが、そういうマッチョな感覚もどうなのかと思ったりもしつつ、悔しいけど僕は男なんだな 、馬鹿になれるほどの情熱というものにビシビシと共感してしまうのである。
そういう意味では、漫画でも映画でも、女子登山家を主人公にしたら面白いと思う。
マッチョなモチベーションとは全く違うアプローチで登山を描けるかもしれない。
誰か、オススメの作品があったら紹介して下さい。

というわけで『神々の山嶺』は面白かったという以上のことはあまり良く分からないのですが、それにしても読み終わった直後から俺の胸の中でざわめく「今すぐにピッケルとアイスバイルを両手に持って高度8000mのエヴェレストの氷壁をよじ登って疲労と寒さと孤独に生命の危険を感じながらそれでも頂きを目指したい」というこの衝動は一体なんなのだろう。
posted by 井川広太郎 at 21:31| Comment(0) | TrackBack(0) | lost in blog | 更新情報をチェックする
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