2008年10月28日

懺悔

懺悔』 1984年/ソビエト連邦(グルジア)/2時間33分/英題:REPENTANCE/配給:ザジフィルムズ

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旧ソビエト連邦の厳格な検閲の下、グルジア共和国で製作された本作は、1984年12月に完成。86年10月、グルジアの首都トリビシでようやく公開された。観る者に1937年のスターリン書記長による大粛清を想起させる内容は、その時代を真正面から批判した映画として、全世界の注目を集めた。その翌年1月モスクワで一般公開された際は、最初の10日間だけで実に70万人以上を動員したという。

ペレストロイカ(改革)の象徴となった、
ソ連邦崩壊前夜の伝説的映画。
20余年間の沈黙を経て、遂に日本公開!

物語は、架空の地方都市で一人の女性ケテヴァンが教会をかたどったケーキを並べるシーンから始まる。傍らにいた客の男が新聞を広げて「偉大な男が死んだ」と叫ぶ。「偉大な男」とは、その街で長く市長として権力を振るっていた男ヴァルラム。ケテヴァンにとっては、かつて両親を粛清した上に殺害し、彼女の人生を大きく狂わせた張本人だった。そしてケテヴァンの回想をとおして、ヴァルラムへの告発と、独裁政権下の粛清によって彼女の家族や市民が辿った苦難の道のりが、ときに幻想的に、力強く描かれてゆく―。

監督・脚本: テンギズ・アブラゼ
★1987年カンヌ国際映画祭審査員特別大賞・国際批評家連盟賞・キリスト教審査員賞
★1987年シカゴ国際映画祭審査員特別賞
★1988年NIKA賞(ソ連アカデミー賞)作品賞・監督賞・主演男優賞・撮影賞・脚本賞・美術賞

作品公式サイト(予告編あり)http://www.zaziefilms.com/zange/

12月20日(土)より、岩波ホールにて新春ロードショー!


製作された状況も、語られる物語も、そして上映を巡る歴史も熾烈であり、こういった映画が生まれた政治的な状況というものに関心は絶えない。しかし、この映画は例えばそういった隠喩や暗喩を読み解く知識が無いと楽しめないようなケチ臭い映画なのかというと、全くの正反対なのである。

この『懺悔』は映画的な喜びに満ち溢れ、2時間33分という長尺を全く感じさせない。全てのシーンにおいて映画であることを満喫するような解放感に満ち溢れていて、つまりは人生を謳歌するようであり、まるで愛の讃歌のようですらある。

例えば、独裁者が演説をするシーン。見るからに独裁者が、階上から市民を見下ろしながら演説しているのだが、あいにく、側の道路で水道管工事をしている。まず、ここで爆笑である。さらに、案の定、その水道管が破裂し、辺り一面に水が飛び散る。慌てて作業員が水を止めようとするが、なかなか上手くいかない。独裁者にも容赦ない量の水がびしゃびしゃとかかる。しかし、演説は粛々として続けられる。秘書官は水を浴びながら必死にタイプライターを打つ。ずぶ濡れになりながら独裁者は意気揚々と演説する滑稽さ。といった塩梅である。これが笑わずにいられるだろうか。

思えばオープニングのシーンで、あの教会をかたどったケーキの眩いばかりの瑞々しさと、そこから連なる映画的な広がりの美しさに、全く溜め息とよだれが止まらないのである。そして、そのさらに前のオープニングクレジットのカッコ良さ!グルジア語であって、言語と判別することも際どい程なのだが、全く読めず意味も分からないその文字に、猛烈な意志の強さを感じずにはいられなかった。我々の言葉で語る!その意志の強さはまさに映画自身にも表れていたわけだが、それであのラストシーン、ラストカットである。これこそが映画だ!もはや問答無用なのである。

以上を要約すると、物凄く面白い映画だった。面白すぎてビックリした。いや、本当に面白い、最高の映画でした。
posted by 井川広太郎 at 22:45| Comment(2) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
きょう、岩波ホールで観ました。
たいへんな傑作と思いました。
Posted by kemukemu at 2008年12月27日 22:03
kemukemuさん
はじめまして、コメントありがとうございます。
この傑作を、いまの時代に、映画館で観られるという幸運を改めて噛み締めてしまうほど素晴らしい作品でした。
まだまだ見知らぬ映画が世界には溢れているのかと思うと、嬉しくなってしまいます。
Posted by 井川広太郎 at 2008年12月27日 23:44
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