2012年04月16日

三重スパイ

三重スパイ』原題 Triple agent /フランス/2003年/時間 115分/配給 紀伊國屋書店、マーメイドフィルム

1930年代、パリ。ロシアからの亡命者を数多く受け入れていたフランス。彼らはボルシェヴィキ政権に反旗を掲げ国を脱出、もしくは追放されたものたちだった。
ギリシャ人の妻アルシノエと共に亡命してきたロシア帝政軍の将校フョードルもその1人。フョードルは表向き在仏ロシア軍人協会の事務員として働き、妻のアルシノエは自宅のアトリエで趣味の油絵を描いている。
ある日アルシノエは、アパートの上階に住む高校教師のパサール夫妻と知り合う。共産党員で急進的な思想を持つ2人と食事をし、親交を温めるが、イデオロギーの違いで互いの話は全くかみ合わない。
やがてスペイン内戦が勃発。2人の周囲も騒がしくなる。フョードルは出張が多くなった。アルシノエは夫の仕事について時々たずねるが、彼の返事はいつもあやふやだ。
ある晩、彼女が夫に問い詰めると、自分は諜報員だからすべての活動は秘密厳守なのだと答えた。やがて彼の不審な行動に疑問を抱く者が現れる。



『緑の光線』『海辺のポーリーヌ』などで日本の若い女性を虜にしたヌーヴェル・ヴァーグの巨匠、エリック・ロメールの異色作。
1930年代のパリを舞台に暗躍するスパイの姿を描いた本作は、裏切り、騙しあい、隠ぺいに満ちた痛快な傑作サスペンス。
実際に起こった事件をもとにロメール独自の解釈をほどこした緻密なシナリオ。
当時のニュース・フィルムと男女の会話のみで構成した大胆な作劇術は脱帽の一語。

キャスト:カテリーナ・ディダスカル/セルジュ・レンコ
監督・脚本:エリック・ロメール

映画の國名作選 V 「フランス映画未公開傑作選」
クロード・シャブロル『刑事ベラミー』、クロード・ミレール『ある秘密』、エリック・ロメール『三重スパイ』
渋谷イメージフォーラムにて4月、限定ロードショー!

公式サイト http://www.eiganokuni.com/meisaku5-france/


家族や恋人の謎というのはサスペンスの定石だが、それってつまり、全ての観客にとってリアルなテーマ設定だからなんだと思う。
知るはずもない過去を探るという禁忌を犯す時点で、それ自体が時限装置となってドラマツルギーが発生し、登場人物は終わりに向かって疾走せざるをえない。
世の中には知らなくて良いことも、知らない方が良いこともあるわけなのだが、それでも過ちを繰り返してしまう衝動こそが愚かな我々ならではの押さえがたい知識欲と好奇心であって、それはエピメテウスとパンドラというバカップルから何一つ変わっちゃいない。
だからこそ、冴えない夫が国家どころか世界の命運を握っているなんていう突飛な物語すら、退屈な街に溢れるささやかなロマンスと同じくらいに真実味のある話として語られるのだ。
にしても、文芸作品はもとより、晩年のロメールはとんでもなく難解な映画を多数残してくれた。
映画は果てしなく自由で、底なしに奥深い。
そのことを提示してみせたことこそが、ロメールが仕掛けた最大の時限装置なのかもしれない、と今ちょっと思いついた。
posted by 井川広太郎 at 02:20| Comment(4) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
気になりますねこれは。
Posted by けい at 2012年04月17日 11:04
フランスの映画って見たことがないのですが、最近、少し興味を持っています。

2003年の作品ってことなので、新しくないけど、新しいから面白いってわけじゃないですよね。

この作品を、見てみたいと思いました。
Posted by オルチ at 2012年04月20日 06:20
内容も映像も興味ぶかいです
Posted by なお at 2012年04月26日 14:59
最近はフランスがらみの映画をよくみますので、また一つ勉強になります。
Posted by 買い物好き at 2012年05月01日 23:27
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