2006年11月30日

Keep in touch! 8 10月4日中編

19:15 『東京失格』International Premiere

バンクーバー国際映画祭では、ワンプログラムが基本的に120分。
『東京失格』のように90分の長編の場合は、短編を併映する。

で、『東京失格』と同時に上映する短編は『Request 』。2256.jpg
韓国映画アカデミーの卒業制作として撮られた短編で、めちゃめちゃクオリティーが高い。さすが、将来の韓国映画を背負って立つであろう逸材。
障害者の性欲という難しいテーマを、非常にスマートに見せる演出力が素晴らしい。
この『Request 』のKim Ki-Hyun監督とは、数日前にパーティで出会っていて、すっかり仲良くなっていた。
2年前の『マチコのかたち』の上映の時も長編と併映だったわけだが、その時は長編の監督と会えず残念。
なので、その分、今回こうして一緒に上映する監督と仲良くなれてラッキーコンピューターだわ。


で、『東京失格』の上映。
トニー・レインズに紹介されて、主演の福島さん、岩崎さん、音楽の関口と俺とで、まずは上映前の挨拶。
みんな相変わらず陽気にペラペラ話して会場は爆笑。
でも、俺は心の中では超緊張。
ぐはー!

会場が暗くなって、映画が始まる。
今までで一番デカいスクリーン。
ぐひー!

海外に行く度に思うけど、日本の観客とは全く反応が違う。
なんつーか、反応がストレート。
大声で笑うし、「Oh!」とか叫んでビビったりするし、感情を平気で表に出す。
日本の観客の、静かにジワジワと感情が劇場に満ちて行く感覚も好きだけど、こういったストレートな反応も、俺としては嬉しい。

そして国によって受け取り方が違う部分もあるけど、その上で、時代や文化などに左右されずに皆が感動する瞬間もある。
それが映画だろと俺は思う。

劇場の一番後ろで、猛烈に緊張しつつ観客の反応を楽しみながら『東京失格』を観ていて、これって難解な映画だなと初めて気付く。
座っているだけでは何も与えてくれない。自分から積極的に観ることではじめて、その世界に触れることが出来る。まるで人生のようだ。
まるで人生のような映画を撮りたかったので、観ていて改めて楽しいし、嬉しい。
良いか悪いかは他人が決めることだけど、俺は自分が本当に好きな映画を撮れて誇りに思うよ。

しかし上映中に、若干ながら席を立つ人がいる。
これは辛い。
創り手としては本当に辛い。
『To Be or Not to Be』は1942年のエルンスト・ルビッチ の映画だが、まさにその気分。
劇場で席を立つということが他人の人生を左右することもあるということを知って欲しい。
後で聞いたら、カナダでは日常茶飯事とのこと。
逆に、後の予定があるのに少しでも『東京失格』を観たかったってことですよと笑顔で教えられる。
実際、そうだったのだという観客から、翌日の2回目の上映声をかけられたりもした。

そうかー。でもやっぱ、中座されると大袈裟でなく身が裂かれる思いなの。
白川監督が『眠る右手を』が香港国際映画祭での上映の時、エンドロールになった瞬間に殆どの観客が出て行ったと嘆いていたが、そういうところでやっぱ習慣の違いが出る。

日本での『東京失格』上映の時は、エンドロールが終りきるまで、ほとんど全てのお客様がちゃんと観てくれた。
それってやっぱスゴいことだし、何よりも嬉しいことだ。

とはいえ勿論、バンクーバーでも本当に多くのお客様がエンドロールの最後まで『東京失格』を堪能してくれた。
ふーっと思った。
やった!と思った。
映画が終って、なんか一区切りついて、また人生が始まったんだなあと思った。

俺のすぐ側で観ていたKim Ki-Hyun監督が「最高だ!」と言ってくれた。
彼は本当に『東京失格』を気に入ってくれたみたいで、その後何度も、直接にも人づてにも彼が気に入ってくれた旨を聞いた。
嬉しい。
本当に嬉しいなあ。

再び、トニーの紹介で主演の福島さん、岩崎さん、音楽の関口と俺とで舞台前に出て、これから観客との質疑応答。

相変わらず熱気ムンムンで、応えるのに困る程の難しい質問がバシバシ来る。
脚本のこととか、演技のこととか、音楽のこととか。

特に、小津映画との関係性について問われたのが嬉しかったな。
日本では不思議なことに、それについて公の場で聞かれたことが一度も無かった。
まあ日本では俺のような駆け出しと小津安二郎監督を並列に捉えるのは恐れ多すぎて、海外だからこそ感じる日本というアイデンティティなのかもしれない。

いつも通り質疑応答の時間はオーバーし、劇場を追い出された後も観客にあれこれと話し掛けられる。
バンクーバー在住の日本人や日本語を話せる人が「東京を思い出して良かった!」と言ってくれたり、全く日本について知らないカナダ人が「あの感覚は俺も知ってるぜ!」と言ってきたり、あとデッカイお花も頂いた。有り難う御座居ます!

写真撮られたり、サインしたり、握手したり、なんかもう、観客の生の反応を伝えて貰えて、本当に嬉しいし、有り難い。

本当に嬉しいし、有り難い。
泣いちゃおうかしら。

posted by 井川広太郎 at 13:41| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | バンクーバー旅行記2006 | 更新情報をチェックする
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