2015年04月08日

皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇

皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇』(原題 NARCO CULTURA/2013年/アメリカ・メキシコ/配給 ダゲレオ出版〔イメージフォーラム・フィルム・シリーズ〕/上映時間 103分)



監督 シャウル・シュワルツ
製作 ジェイ・ヴァン・ホイ 、 ラース・クヌードセン 、 トッド・ハゴビアン

公式サイト http://www.imageforum.co.jp/narco/
4月11日から、シアター・イメージフォーラムほかにて全国順次公開


メキシコ麻薬戦争の最前線でありアメリカとの国境の街でもあるシウダー・フアレスを舞台に、生活のために怯えながらも仕事に励むサラリーマン警官と、麻薬カルテルのボスたちを礼賛するナルコ・コリードと-呼ばれる音楽で若者に絶大な支持を受ける歌手らの姿を描くドキュメンタリー。

めちゃめちゃ面白かった。
こんな恐ろしい内容の映画が面白いというのもどうなのか、しかしべらぼうに面白かった。

この世界はとっくに終わってること、全てが破綻していること、夢も希望もないこと、そんなことは分かりきっているつもりであったが、改めて突きつけられると、本当、絶望するしか無い。
市場原理主義はこんなに素敵です!利益を追求する結果こんなに素晴らしい世界になりました!だから利権に食いつくのを邪魔する奴は皆殺しちゃうぞ!
陰惨としているのに、全くもって面白いとは、この映画はなんたることか。

「サクセース!」と叫びながら金の雨を降らす道化師、それに熱狂して一時の快楽に溺れる庶民、そこで商売をする集団と組織、彼らから金をもらう役人や政治家、そして再び搾取される弱者という、世界中どこでも同じ構図が、ここでも展開されている。
そんなこと分かりきっている。改めて見たくも知りたくもない。
だいたい、「皆殺しのバラッド」なんていう殺伐としたタイトルが怖そうで嫌だ。
だから、観たくなかったんだけど、うっかり観てしまったら、ひっくり返るほどに面白かった。
なぜだろう。

死体がじゃんじゃん出て来て、銃がガンガン出て来て、アホな若者とズルい大人と弱い人間ばかりが出て来て、楽しい要素は何も無いのに、この映画は面白かった。
想像していたのよりも遥かに怖かったけど、想像つかないほどに面白かった。

最近はとにかく暗い映画が嫌いで、夢や希望が無いと観てられねえよ!と思っていたのだが、その考えは間違えであると思い知らされた。
この世には夢も希望も全くなく、あるとしたらそれは全て拝金主義者が作り上げた幻想でしかないという、忘れようとしていた現実をまざまざと見せつけてくれるこの映画は、めっぽう面白い。

それはなぜなのか。本当のことを言うと、僕はそれがなぜか分かっている。明確な理由があって、この映画は間違いなく面白いのだ。だから、すぐにでももう一回観たい。しかし、正直、怖い。この恐ろしい映画をもう一回観るのには、勇気が必要だ。この絶望的な現実と向き合うために、僕は勇気が欲しい。
posted by 井川広太郎 at 10:22| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする
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