2015年11月20日

放浪の画家ピロスマニ

放浪の画家ピロスマニ』(原題 Pirosmani/1969年/ソ連/配給 パイオニア映画シネマデスク/日本初公開1978年9月15日/87分)



監督:ゲオルギー・シェンゲラーヤ
製作:スサナ・クバラツヘリア
出演:アフタンジル・ワラジ、アッラ・ミンチン

公式サイト
11月21日から岩波ホールほか全国で順次公開


グルジアの国民的画家ピロスマニの半生を描いた伝記映画。

加藤登紀子が歌った「百万本のばら」のモデルであったり、ピカソが絶賛していたりと、何かと逸話が多いにも関わらず世界的にはあまり有名というわけではないのだが、グルジアでは母国の風土と気風を描き残した画家として、とても愛されているらしい。

自由奔放なピロスマニが個人的な愉しみとして描いてきた絵が突然、中央画壇に取り上げられ注目された直後に今度は吊るし上げを食らったりと、お人好しゆえか散々に振り回される波乱万丈の人生を描いている。
そんな繊細かつ朴訥としていて人間味に溢れた人物像は、紛れもなく愛すべき存在だ。

極めてシンプルでありながら、今までに見たことがないような独特で異様な映像が凄まじい。
それこそ異国の地で今までに味わったことがないワインかチーズを振舞われたような、そんな贅沢かつ豊潤な体験である。
最初はちょっと驚く、なにこれ食べたことない、美味しいのか不味いのかも分からないのだが、それもそのはず、次第にそれが全く新しい味覚と感動であることに気付かされる。
僕らはまだまだ新しい映画を観るチャンスが沢山あるし、近くの映画館でこんな体験ができるなんて本当に贅沢だしありがたいし尊い。

圧倒的なダンスのシーンの迫力たるや、心が震え魂で泣けるかのようですらある。
その美しい映像はピロスマニの絵をも彷彿とさせ、クライマックスに向けて見事な近似曲線を描いていく。
素朴で親しみやすく時には滑稽に見えるのに、しかし神聖で高貴で気高く、イコンを眺めているような不思議な穏やかな心持ちにさせてくれる。
クライマックスで復活祭の絵が登場した時、僕はアッと声を上げ腰を抜かしそうになったよ。
そしてラストカットのあまりに映画的なアレを目の当たりにすると、もはや感涙にむせぶしかないのである。
posted by 井川広太郎 at 01:36| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする
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