2018年07月20日

判決、ふたつの希望

『判決、ふたつの希望』(原題 L'insulte/2017年/レバノン・フランス合作/配給 ロングライド/113分)



監督 ジアド・ドゥエイリ
出演 アデル・カラム、カメル・エル・バシャ

公式サイト http://longride.jp/insult/
2018年8月31日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国順次公開


レバノン人とパレスチナ移民との小さな口論がレバノンという国をも揺るがす裁判に発展していくドラマ

面白かった!
社会に対する小さな不満が積み重なったイライラ、思わず口にしてしまう挑発的な言葉が引き金となり、誰にでも起こりうるような隣人とのささやかな諍いが、解決策すら見えぬ移民問題の本質を鋭く突く。

レバノンという国の現状と抱えている問題が、リアルな生活の中にとても分かりやすく描かれている。
一般市民のご近所トラブルが、まるでレバノンという国の縮図のようですらあるから見事としか言いようがない。

ただの喧嘩のはずが民族的な背景を持っていて、当事者たちの尊厳を傷つけているからこそ、お互いに簡単には譲れないし、割り切って考えることなどできず、よせばいいのに裁判になる。

しかし、法の下の平等が常にフェアというわけもなく、国の判断や大人の事情、国際情勢的な軋轢もあって、ことは簡単に済まないし、誰もが納得できるとは限らない。

周囲を巻き込み引くに引けなくなったところで、さらに、その純粋な思いを自分たちの主張や利害のために利用しようとする弁護士やメディアたちが焚き付けてくる。
そうして雪だるま式に話が大きくなっていき、国をも揺るがす事案となり、もはや本人たちの意思とは関係なく複雑化し収拾がつかなくなっていく。

登場人物が全員ガンコでクズというか、それぞれがそれぞれの思いを持った人間味溢れる愛すべき人たちばかりで、なかなか上手くはいかない世の中の面白さと素晴らしさを感じずにはいられない。
そしてさらにもう一段、登場人物の一人が隠し持つヨルダンの歴史に絡んだ深い動機付けが描かれ、のっぴきならない問題の根深さを伺わせドラマとしては圧倒的に重みを加え、ますます放ってはおけない気持ちにさせられる。

どこの国でも起こり得て、誰にでも共感できるシンプルな物語になっている点が素晴らしい。
何より、当事者たちの思いとは別の次元で裁判が続くという構図がなんとも皮肉で、それこそ世界情勢そのもののようにも感じられる。
それだけに映画的に見事なエンディングには素直に感動しつつ、綺麗すぎてなんだかちょっぴり物足りなさも感じてしまった。
posted by 井川広太郎 at 10:33| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]