2020年04月02日

街の上で

「街の上で」2019年製作/130分/G/日本/配給:「街の上で」 フィルムパートナーズ



監督:今泉力哉
製作:遠藤日登思、 K・K・リバース、坂本麻衣
プロデューサー:髭野純、諸田創
出演:若葉竜也、穂志もえか、古川琴音、萩原みのり、中田青渚、成田凌

公式サイト https://machinouede.com/
劇場公開日 2020年5月1日


失恋した青年が下北沢の街を彷徨う中で様々な人と出会う姿を描く

今泉さんの大ヒット作「愛がなんだ」が僕はダメだった
何がダメかというと、成田凌がイケメンすぎた
あのキャラクターはブサイクじゃないと辻褄が合わないし、角田光代の原作は読んでいないけどきっとそう描かれていると思うし、少なくとも「追いケチャップ」なんて出来る男はイケメンがすぎる
そもそも今泉さんはダメな男を撮らせたら随一だし、「追いケチャップ」なんて一見してアドリブをあえて採用するのだから明確な意図があるのだろうが、僕はどうしても納得できなかった

なので、その後の今泉さんが破竹の勢いで作品を発表するもどうも観る気になれなかったのだが、「街の上で」はめちゃめちゃ面白かった
ダメ男の周りに可愛い女の子がいーっぱい、なのにちゃんと何も起きない、そんな今泉力哉が帰ってきたぜ!とかなんとか

若葉竜也がめちゃくちゃいい、完全に見事にダメ男
あんなに男前なのにどうしようもなくダメで、なのに憎めないどころか可愛らしさが半端なく、本当に魅力的

そんな彼を取り巻く女優陣がそれぞれ個性的に可愛くて素晴らしいのだが、それはやはり演出の妙であるのは明らかで
ヒロインの穂志もえか、とんでもなく美人なんだけど、でもなあ、なんか足りないんだよなあと思い始めたラストで見せる表情が最高すぎて悶絶

そして成田凌がキレッキレ
男が惚れるほどのクズなイケメンぶりが素晴らしく、これだよこれ!って感じ

今泉さんを恋愛映画の旗手と見る向きもあるけど、僕は彼の凄さは恋愛未遂を描けることだと思っていて
恋にもならない淡い感情や、男女の恋愛未満の微妙な関係性、そんな物語にもならない平凡な日常に潜む繊細な情景を撮るのが圧倒的に上手い
それは可愛い女子を近くで遠くに見つめる距離感、いわば恋の遠近法に如実に現れていて、本作でも「ラーメンの女」や「メンソールの女」というように道端で「かわいい」を発見するセンスが抜群

実際、忍ぶとかムッツリじゃなく健全にポジティブであって、こんな可愛い子たちに巡り合う可能性がわずかでもあるのなら、それだけで人生は美しいとすら感じてしまう
そして事実、彼女たちは存在するし、下北沢であれば彼女たちに巡り合える奇跡も信じられる
何かに気づけば世界は激変するのかも知れない、リアルとファンタジーの垣根を突いていくる感性が冴に冴えている

行ったことある場所や知っている所ばかりが映るのだが、ありふれた街の風景を身近さと新鮮さを併せて瑞々しく切り取っている
まさに恋の遠近法的な手法とも言えるが、その極みとして終盤の地味な大立回りのロケ地が何気ない住宅街ってのが痺れる
この映画は下北沢という街の記憶であり財産だ

映画に酔った勢いで恥ずかしながら告白すると、僕も遥か昔に似たような筋書きの脚本を書いたことがあった
それは「ライブの前日に失恋したバンドマンが下北沢の街を彷徨う中で様々な人と出会う」物語であったのだが、いやはやボツにしといて良かった
「街の上で」の方が比べるまでもなく良いのは当然だが、なんかボツった脚本の供養ができたような気さえするので今泉さんにありがとうと言いたい
posted by 井川広太郎 at 23:08| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする
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