『休暇』 2007年/日本/115分/配給 : リトルバード![]()
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死刑囚を収容する拘置所に勤務する刑務官たち。彼らは常に死と隣合せの生活を余儀なくされる。ベテラン刑務官、平井もそのひとり。 心の平穏を乱すことには背を向け、決まりきった毎日を淡々とやり過ごす男。 そんな平井がシングルマザーの美香と結婚することになった。 なかなか打ち解けない連れ子との関係を築く間もないまま挙式を直前に控えたある日、死刑囚・金田の執行命令が下る。執行の際、支え役(死刑執行補佐)を務めれば1週間の休暇が与えられると知った平井は、新しい家族と共に生きるため、究極の決断をするのだった…。
監督:門井肇
出演:小林薫、西島秀俊、大塚寧々、大杉漣、柏原収史、菅田俊
6月7日(土)より、有楽町スバル座ほかにて全国ロードショー
作品公式サイト(予告編あり) http://www.eigakyuka.com/
こうまでして語りたい物語であったのかと胸打つ、骨太の日本映画。
こういった筋の通った映画を見ると、安心します。
映画の作りとしては伝統的な日本映画の流れを汲んでおり、ややもすると忘れられがちな「日本映画」という伝統と誇りを思い出させてくれる。
しかし、製作や監督といった中心をなすスタッフは非常に若い。
だからこそ、むしろ我々がやるしかないんだという、エネルギッシュなメッセージが作品の端々からも感じとれる。
そういう舞台なら当然やりがいもあろうが、役者たちが素晴らしい。
各々の役柄を、それぞれの魅力を詰め込んで、繊細に、大胆に演じている。
小林薫、西島秀俊の両主演は流石なのだが、大塚寧々が驚くほど素晴らしかった。
クライマックスの台詞、最高だった。
そう、死刑を物語の主軸に構えながらも、映画としてのテーマは「生と死」というよりむしろ「他人が家族になる瞬間(またはその逆)」なのである。
それは小林薫と大塚寧々(と連れ子)の関係が最もドラマチックではあるのだが、同時に小林薫と西島秀俊の交流においても本質的には同じことであり、西島秀俊とその妹である今宿麻美はそういった宿命を背負い続ける訳である。
さらに驚くべきことに、西島秀俊は個人でありながら彼の内面でそういった葛藤を独り抱えているということが、とあるカットで表れるのである。
西島さん、もともと大好きな役者さんだけど、ますます好きになりました。
いずれにしろ、日本ではまだまだこういう映画があって、こういう映画を創ろうとしている人達がいて、こういう映画を求めている人がいる、ってことが明らかになるだけでも爽快な映画でした。