2017年09月30日

月と雷

『月と雷』(2017年/2時間/配給 スールキートス)



監督:安藤尋
出演:初音映莉子、高良健吾、草刈民代

公式サイト http://tsukitokaminari.com/
2017年10月7日(土)よりテアトル新宿、テアトル梅田ほか全国公開!


角田光代の小説を原作に、幼児期の体験に囚われたまま大人になろうとする男女のいびつな関係を描く

トラウマやら、ネグレクトやら、幼児期の性的なアレとか、大人になれない子供たちが寄り添って、甘え合って、傷つけたり、怖がったり、すがったり頼ったりする。
草刈民代がメッチャいい、見事なダメ女っぷりが素晴らしい。

人生を感じさせる陰すらも魅力的に映る絶妙なあばずれ感を、草刈民代が完璧に表現している。
単に自堕落だったり淫らだったりするわけではなく、涙も枯れ果てたような哀しさ、死ぬのが面倒だから生きているだけというような虚無感をまとっていて、その達観っぷりがすごい。
誰に対しても無関心な態度は全ての人に平等な寛容さでもあり、売春婦の持つ聖女的なイメージにも似ていて、痩せてて不健康なのに美人!この説得力。

どうしようもなく救いようがなくて暗い話なんだけど、なぜか明るさと前向きさがあるのが不思議で。
それこそ、あえて大人にならずに子供のままでいることを選択したかのような、なんだか絶望的に悲惨なのに異様に瑞々しい映画だった。
posted by 井川広太郎 at 22:38| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年09月08日

あなた、そこにいてくれますか

『あなた、そこにいてくれますか』(英題 Will You Be There?/2016年/韓国/配給 ギャガ・プラス/111分)



監督:ホン・ジヨン
出演:キム・ユンソク、ピョン・ヨハン、チェ・ソジン、キム・サンホ

公式サイト http://gaga.ne.jp/anasoko/
10月14日(土) ヒューマントラストシネマ渋谷 他 全国順次ロードショー


フランスの作家ギヨーム・ミュッソのベストセラー小説「時空を超えて」を韓国で実写映画化

甘ったるいタイトルの韓流ラブストーリーなんでしょって軽い気持ちで観たら、うっかり泣かされた。
冒頭で医療感動もの?と思わせて、メルヘン寄りのファンタジーに展開してからの、実はタイムトリップするSFってところに驚かされるのだが、その設定を活かし、ひと時の恋愛から愛や人生の選択を問う人間ドラマに昇華していくのが素晴らしい。

タイムトリップものだと、いまの流行は圧倒的に平行宇宙で、タイムトリップするたびにパラレルワールドが増えていくというアレ。
その点、この映画は『バックトゥーザフューチャー』のようにタイムトリップするたびに歴史を塗り替えていく設定で、つまり”正しい歴史”に辿り着くための冒険。

でも、正しい歴史って何? 正しい恋愛って何なんだろう? そもそも恋愛感情で何もかも決定していいのかな?
いや、そうではなく、僕らには家族とか友人とか仕事とか人生という重みがあって。
しかし、恋愛がどうでもいいわけでは決してなく、だとしたら、人生をかけて恋愛を問う瞬間って、どんな時なんだろう?

若い時には若い恋があるように、年を取ると大人の愛があるのかもしれない。
おっさんの心にジーンと沁みるいい映画だった!
posted by 井川広太郎 at 18:36| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年09月06日

ひかりのたび

『ひかりのたび』(2017年/日本/配給 マグネタイズ・太秦/91分)



監督・脚本:澤田サンダー
製作:小林栄太朗、畠中博英、木滝和幸
出演:志田彩良、高川裕也、瑛蓮、杉山ひこひこ、萩原利久、山田真歩、浜田晃、ほか

公式サイト http://hikarinotabi.com/
2017年9月16日(土)新宿K's cinemaほか全国順次公開!


地方都市で暗躍する不動産ブローカーの男と、そんな父に連れられ各地を転々とする娘との関係性を描く

日本人は呑気に利権を貪り、外国人が土地買収に勤しむという殺伐とした資本主義の限界集落には、悪い奴等しかいやしないが、みんな等しくかよわく、寂しく、その日を生き延びるために必死でもがいている。
そんな彼らが奏でる哀愁の協奏曲は、なんとも牧歌的だ。

テレビ番組「カンブリア宮殿」などのナレーションでおなじみで「キミサラズ」にもご出演頂いた高川裕也さん、ファッション誌「ピチレモン」の専属モデルを務めたという志田彩良さんなど、実力ある俳優たちが、“普通”という逞しさを丹念に演じていて素晴らしい。

最近は地方映画も多いけれど観光パンフレットみたいなノリの作品ばかりなので、こういう独自の切り口の作品はとても興味深い。
過去に縛られれ今を生きるた人たちの物語は、陰惨なようでいてどこか瑞々しいのだ。
素直になれない高校生カップルが自転車を押して坂道を登る長い長い長回しが、とても印象的だった。うーん、これもそれも青春なんだぜ!
posted by 井川広太郎 at 16:20| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年08月13日

パターソン

『パターソン』(原題 Paterson/2016年/アメリカ/配給 ロングライド/118分)



監督:ジム・ジャームッシュ
製作:ジョシュア・アストラカン、カーター・ローガン
製作総指揮:オリバー・ジーモン、ダニエル・バウアー
出演:アダム・ドライバー、ゴルシフテ・ファラハニ、永瀬正敏

公式サイト http://paterson-movie.com/
8月26日から東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開!


アメリカの田舎町に暮らし詩を愛するバスの運転手の”何も起きない”一週間を淡々と描く

ジャームッシュの新作観に行くと言ったら、若者に「ジャームッシュって誰ですか?」と聞かれたので、「アメリカ人が何もせずにダラダラするだけの映画を発明した人」って答えたら面白がってた

ところでこないだ武蔵野館に予備知識無く『ウィッチ』というホラー映画を観に行ったら、『パターソン』公開記念でジャームッシュのコーナーが!
そんなものあるとは知らず、うっかり『ストレンジャー・ザン・パラダイス』のTシャツを着ていってしまったので、何人かにジロジロ見られた
これはそういうグッズとかではなく、もう何年も前に発売していたUNIQLOのジャームッシュTシャツですとこの場を借りて弁明したい

そんなわけで『パターソン』を観ていたら、かつてのようにまた、詩を書くためのノートを常備したくなる
やっぱり罫線のない小型のノートに、手書きするのがいい
僕らの平凡な日常は、いつも奇跡と感動で満ち溢れていることを気づかせてくれる

予告編の制止画面が「緊急事態だ」ってとこなのが秀逸
posted by 井川広太郎 at 12:31| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年06月30日

天使の入江

『天使の入江』(原題 La baie des anges/1963年/フランス/配給 ザジフィルムズ/85分)



監督:ジャック・ドゥミ
出演:ジャンヌ・モロー、クロード・マン、ポール・ゲール

特集上映『ドゥミとヴァルダ、幸福についての5つの物語』
7月22日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
公式サイト http://www.zaziefilms.com/demy-varda/


カジノで出会った男女がギャンブルに没入しつつ恋の駆け引きを繰り広げる姿を描く

ヒドイ話で、むちゃくちゃで、シーンの半分ぐらいがカジノでルーレットしてるだけなんだけれど、なにこれ超ラブリー!な映画。
そもそも冒頭、アイリスからのジャンヌ・モローを超高速ドリーアウトしかも超長いっていう悶絶もんのワンカットで、ハートをわしづかみにされジャンヌ・モローのファムファタール感をガッツし植えつけられているので、なにがどうあっても「ぐぬぬぬ」って感じである。

ギャンブル狂の男と女のどうしようもなさに「いやいや、しかし!」と突っ込みたくなることも多々あるのだが、そのたびにミシェル・ルグランのピアノが絶妙なタイミングで流れる。
上に貼ってある『ドゥミとヴァルダ、幸福についての5つの物語』のトレイラーでも使われているわけだが、この素晴らしい曲が流れてしまうと、うっかり「ですよねー」ってなってしまう圧倒的な説得力。

うがった見方すると、そういう女のズルさを描いている映画とも言えるわけだが、にしても映像が美しい。
何気ないフィックスのカットがまばゆく、そして流れるようなカメラワークにうっとりしてしまう。
このカメラはジャン・ラビエ、ネストール・アルメンドロスの師匠とか。いやもうとにかく映像が素晴らしい。

そんなこんなでギャンブル嫌いの僕もルーレットを猛烈にしたくなってしまって困っているわけだが、とにもかくにも、音楽と映像の美しさにうっとりしながら恋の駆け引きを愉しむオシャレ映画である。
posted by 井川広太郎 at 22:40| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年06月23日

ローラ

『ローラ』(原題Lola/1960年/フランス/配給 ザジフィルムズ/88分)



監督:ジャック・ドゥミ
製作:ジョルジュ・ド・ボールガール、カルロ・ポンティ
出演:ジャック・アルダン、アヌーク・エーメ、マルク・ミシェル、コリンヌ・マルシャン

特集上映『ドゥミとヴァルダ、幸福についての5つの物語』
7月22日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
公式サイト http://www.zaziefilms.com/demy-varda/


港町で初恋の人を想い待ち続ける踊り子ローラを巡る恋模様を描く

その晩はフランスの映画監督と飲んで、僕はやっぱりドゥミが好きなんだ「ローラ」が好きなんだという話しをしていた。
で、酔って千鳥足で家に帰ったら「ローラ」の試写状が届いていたんだ!
こんなことってあるか?
嬉しくて思わず叫び、この嬉しい巡り合わせをすぐさまその監督に伝えた。

そして待ちわびた試写の日、初恋の人に再会するようなウキウキした気持ちで会場に駆けつけた。
いつもはしかめっ面のおじさま達も、なんだかこの日ばかりはみんなニコニコしていたのは僕の勘違いなんかではないはずだ。
みんな浮かれてる、久々の上陸でキャバレーを訪れた水兵達みたいだ。

僕は「ララランド」は観ていないけれど「ローラ」を下敷きにしているのは知っている。
全てのミュージカル映画にとって「ローラ」は幼い頃の憧れの想い人であるのに違いないからだ。
「ララランド」で映画やミュージカルに興味を持った人たちが「ローラ」を観てくれることを切に願う。
僕もいつか「ララランド」を観るのを楽しみにしている。

てへぺろ案件だが、僕の監督作「キミサラズ」も「ローラ」からめちゃめちゃ影響を受けている。
公開中にある人からそのことを指摘されて、すごく嬉しかった!

実際、「ローラ」は初めて観た学生の時から何一つ変わらない眩さなのに、何度観ても全てが新鮮!
ヌーベルバーグの真珠、心の中の宝石。美しいとはこういうことだ。
posted by 井川広太郎 at 10:39| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年06月16日

海辺の生と死

『海辺の生と死』(2017年/日本/配給 フルモテルモ、スローラーナー/155分)



監督:越川道夫
製作:畠中鈴子
出演:満島ひかり、永山絢斗、井之脇海、川瀬陽太、津嘉山正種

2017年7月29日[土] テアトル新宿 他 全国ロードショー
作品公式サイト http://www.umibenoseitoshi.net/


島尾ミホの小説「海辺の生と死」や夫の島尾敏雄の小説「島の果て」などを原作にしつつ、そのミホと敏雄をモデルとし、戦争末期の奄美に暮らす国民学校教師の女と、特攻隊隊長として赴任した若者とのつかの間の激しい恋を描く

子供達の通学路が使用不能になったと兵隊さんが告げる、そんな形で戦争が忍び寄ってくる。
言葉や歌などで表される独特の文化が漂う島。
ともすれば戦時中であることすら忘れてしまうほどの長閑さのあまり、うっかりオルガンで敵国の曲を奏でてしまうような教室の”お国”は、果たしてどこにあるんだろうか。
女の業を表現する満島ひかりの熱演が際立っている。
あまりにも情熱的な愛は、もはや愛ではないのか。
それもまた静けさを破る。
posted by 井川広太郎 at 20:31| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

『丸』(2014年/日本/配給 マグネタイズ/89分)



監督:鈴木洋平
プロデューサー:池田将、今村左悶
出演:飯田芳、池田将、木原勝利

公式サイト http://www.yoheisuzuki.com/maru.html
7月8日(土)よりシアター・イメージフォーラムにて<逆輸入>ロードショー!!


とある民家の中に謎の球体が出現したことから巻き起こる不可思議な出来事を描く不条理劇

映画にはいろんな表現や可能性があるにも関わらず、昨今の映画館で観られる映画ときたら、どれも似たようなものばかりだ。
ハッキリ言うと、いま映画館で興行しているほとんどの映画は”ハリウッド映画”の真似事でしかない。

ハリウッド映画がよくできていることには疑う余地はないが、映画にはもっと色んな面白さがある。
音楽で例えるならロックだけではなく、雅楽も、クラシックも、民族音楽もあるように。
好みは人それぞれだからこそ多様性が損なわれると脆く弱くなるし、なにより、似たような映画ばかり観ていて楽しいか?正直、僕は飽きた。退屈だ。

「丸」を鑑賞中、ぶっちゃけ僕の趣味には合わず、素直には乗れなかった。
だが、どうだろう、観賞後に振り返ってみると、稀有な映画体験をしたという充実感がある。
あんな映画は今まで観たことないし、似たような映画が思いつかない。
独特な映画だからこそ、各国の映画祭で絶賛されたというのも頷ける。
万人に受けるかどうかは分からないが、「丸」という映画でしか得られない感覚、感情、感動があるのだ。
映画にはこんな表現もあるのか、こんな可能性もあるのかと、映画を観る楽しみがさらに広がった気がする。

ありふれた日常かと思いきや、ノイズのような音楽の心地よさに惑わされ、紙一重でシュールな世界へと足を踏み入れてしまい、台詞は全て言葉遊びのように分解され形骸化する中で未知の言語のような独特の響きを帯びてゆき、感覚に訴えかける細やかな演出がちりばめられたパラレルワールドは物語の定型を一切受け入れない。

ファーストフード店のように世界中どこでも同じ味が提供できるというシステムは紛れもなく偉大だ。
しかし例えば異国を訪れたのなら、その土地ならではの料理を楽しみたいという人には「丸」をオススメする。
お口に合うかどうかは分からないが、しかしきっと忘れがたき映画体験になるはずだ。
posted by 井川広太郎 at 20:30| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年06月12日

アリーキャット

『アリーキャット』(2017年/日本/配給アークエンタテインメント/129分)



監督:榊英雄
製作:間宮登良松、川村英己、野田孝寛
出演:窪塚洋介、降谷建志、市川由衣、品川祐、高川裕也、火野正平

2017年7月15日[土]よりテアトル新宿ほか全国ロードショー
公式サイト http://alleycat-movie.com/


窪塚洋介と降谷建志が演じる凸凹コンビが珍道中を繰り広げるバディムービー。
二人のカリスマが出会い手を組むという、ありそうでなかった設定だけでワクワク感を刺激する。
しかも可愛い女子を救うために長閑な片田舎から魔窟と化した東京に向かうという、ファンタジーとリアリティを横断する現代の冒険潭。
特に後半からクライマックスにかけてバイオレンスアクションの様相を呈していくのだが、そっからの演出がキレッキレで手に汗を握ってしまう。
主役の二人に負けじと個性的な登場人物が次から次に登場してきて楽しいのだが、その中でも「キミサラズ」にも出演して頂いた高川裕也さんも柔道をたしなむ政治家役で出演していて、これまた強そうでカッコいい!
posted by 井川広太郎 at 16:12| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年06月09日

マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白

『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』(原題 Madame B., histoire d'une Nord-Coreenne/2016年/韓国・フランス合作/配給 33 BLOCKS/72分)



監督:ユン・ジェホ
製作:ギョーム・デ・ラ・ブウレイ、チャ・ジェクン

公式サイト http://mrsb-movie.com/
6月10日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開!


中国で「脱北ブローカー」をする女の数奇な運命と愛を描くドキュメンタリー

めちゃめちゃ面白かった!
タイトルにある通り被写体のマダムは当初「脱北ブローカー」をしているのだが、そのインパクトあるフック「脱北ブローカー」でさえ些細なことに思えてくるほど壮絶な、女の生き様を描いている。
極限状態を描いた社会派のドキュメンタリーでありながら、一人の女の愛の物語になっているのが、この映画の魅力だ。

北朝鮮に生まれたマダムは夫と子供達を養うために中国に出稼ぎに来たつもりが、騙されて貧しい農村に売り飛ばされ、そこで中国人の農夫と事実婚状態になる。
しかし貧しさは変わらず、身分証もないため仕事も選べず、生活と仕送りのために脱北ブローカーなどもする。
そんな中、北朝鮮に残した家族が韓国への亡命を計画し、マダム自身も身分証を得るために韓国行きを目指すのだが…

めちゃめちゃ政治的な状況に追い込まれながらも、ただただ家族と共に生きるために、マダムは国々を相手に凄まじい大立ち回りをしてみせる。
苦難や抑圧や障害を乗り越え、信じられないようなタフさでサバイブしていくマダムの姿には、「お前らは生きることの重みを感じているか?」と、檻の中で飼い慣らされた観客たちに訴えかける無言の圧力がある。

そして当初は生き延びることだけを考えているような殺伐としたマダムの表情が、北朝鮮と中国との二つの家族の間で揺れているうちに、次第に女の顔になっていくのが素晴らしい。
国や国同士の争いは簡単には変えられないし変わらないかもしれないが、逞しく生きることで人々の運命は劇的に変えることができる。
そして、その勇気や活力を与えてくれるのは、いつも愛なのだ。
愛に生きる女の顔はやはり美しい。
posted by 井川広太郎 at 10:53| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年05月23日

十年

『十年』(十年 Ten Years/2015年/香港/配給スノーフレイク/108分)



プロデューサー:アンドリュー・チョイ、ン・ガーリョン
監督:クォック・ジョン、ウォン・フェイパン、ジェボンズ・アウ、キウィ・チョウ、ン・ガーリョン

公式サイト http://www.tenyears-movie.com/
2017年7月22日(土)よりK's cinemaほか全国順次公開


この映画が作られた時から十年後の2025年の香港を描くオムニバス映画

ストレートに政治を風刺する五本の短編が並ぶ。
近未来の香港として描かれたディストピアは『華氏451』や『メトロポリス』『未来世紀ブラジル』などを彷彿とさせ、まるで日本のことのようにも感じられ面白い。

もうちょっとエンタメした方が多くの人に受け入れられるのではないかなどと危惧してしまうが、実際この映画は超低予算のインディペンデント映画ながら口コミで劇場に行列が出来るほど話題になり異例のヒット、香港映画界に絶大なインパクトを与えたのだという。
その刺激的かつ的確に庶民の声を代弁してみせる真摯な姿勢が歓迎されたのであろうか、いずれにしろ観客は常に制作者の先を行っているからこそ、いつも新しい作品に飢えている。
あるいは、それは国家や資本の論理でしか動けないメディアへの不信感の表れなのか。

最近の日本ではインディペンデントでありながらまるでメジャー映画のような作品が多く、大学に行きながらもバイトと就活ばかりしている学生のようだ。
メジャーにはメジャーの良さや役割があるからこそ、インディペンデントにしかできなこともある。
日本でも是非、こういう映画を撮ろうという心意気のあるプロデューサーに出てきて欲しい。
posted by 井川広太郎 at 11:13| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年05月18日

皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(原題 Lo chiamavano Jeeg Robot/2015年/イタリア/配給 ザジフィルムズ/119分)



監督:ガブリエーレ・マイネッティ
製作:ガブリエーレ・マイネッティ
出演:クラウディオ・サンタマリア、ルカ・マリネッリ、イレニア・パストレッリ

公式サイト http://www.zaziefilms.com/jeegmovie/
2017年5月、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国


日本のTVアニメ「鋼鉄ジーグ」を下敷きに、偶然にも超人的な力を手に入れたチンピラが、私利私欲ではなく正義のためにその力を使うに至る葛藤をシリアスに描く、クライムムービー調のイタリア版スーパーヒーロー映画

超面白かった!
タイトルがそうであるように、この映画は日本のTVアニメ「鋼鉄ジーグ」を下敷きにしている。
日本のロボットアニメを現代イタリアで実写化なんて、それだけで胸熱!だが、実際、どんな作品なのか観るまでは想像もつかなかった。
これは「アニメの実写映画化」なのか、それともオマージュを捧げていると言うべきなのか、うまく説明はできないが、もし原作となったアニメに自我があるのなら感動のあまりむせび泣いているであろう、これだけ幸福な実写映画化はない。

永井豪が参加していた「鋼鉄ジーグ」は、日本では埋もれてしまった過去のアニメの一つに過ぎないが、イタリアでは放送された当時から熱烈な人気で、いまも絶大な知名度を誇っているとか。
それの「実写化」をとんでもない方法で実現した監督の愛情と熱量がこの作品の素晴らしさの源泉であることは明らかだ。

現代のイタリアで、マフィアの陰でコソコソと小さな犯罪をしているチンピラが主人公。
窃盗も殺人も当たり前なマフィアは組織内でもゴタゴタを繰り返し、その周りをウロチョロしながらおこぼれを拾うようにしてなんとか日々の糧を得ている主人公は、犬以下の扱いを受けている。
人の命は腕時計よりも安く、愛情も夢も希望もない殺伐とした犯罪者たちの最低で下衆な日々が延々と描かれる。

それがイタリアならではのコントラストの強い映像と話法でなんとも印象的に描かれ、見ているだけで胸がえぐられるように辛い。
自分が過去に犯した罪や罰や怒りや悲しみといった負の感情を掘り起こされるようで、忘れてしまった痛みや記憶が蘇り心がジクジクしてメッチャ胸糞悪い。

そんなある日、主人公のチンピラが偶然、超人的な力を得る。
するとどうだろう、めちゃめちゃパワーがあるし、怪我してもすぐ治るし、なにこれ超すごい!
そうしたら、やることは当然、レッツ犯罪行為!
ATMをコンクリートの壁をぶっ壊して丸ごと盗み出し、現金輸送車を一人で襲って金を得る。
ちょっと待て!確かにスーパーパワーを得て直ぐに世のため人のためなんて胡散臭いが、かといって絶賛犯罪行為って幾ら何でもクズすぎて…その力をもうちょいマシなことに使えないのか!

だが彼には家族も友人も仲間もおらず、言葉を交わす相手すらいない。
ただただその日暮らしで、獣のように日々の糧を得るために生きてきたのだから、当然っちゃ当然の行動である。
だから彼は、ありあまる金を得ても飯を食う事ぐらいしかやる事がなく、後はポルノビデオを見ながら好きなヨーグルトにありつけば大満足なのである。

だが、あまりにも傍若無人な彼の犯罪行為は目立ち、話題になり、その結果、マフィアたちのパワーバランスも崩れていく。
そのゴタゴタの中で、庇護者を失った女が主人公の家に転がり込んでくるのだが、この女がまるで「ベティ・ブルー」のベアトリス・ダル。
とんでもなく美人なのに知性は子供のような白痴気味で、無防備にひけらかされる豊満な肉体がエロティックであり、どうしようもなく感情的なメンヘラがゆえに男たるもの惹かれずにはいられない。
とはいえ人付き合いが苦手な主人公は嫌々保護するのだが、そんな彼女がなんと古いアニメ「鋼鉄ジーグ」の大ファンで、いつもDVDを見ている。
そして彼女にとっては命の恩人でありヒーローである主人公を、勝手に「鋼鉄ジーグ」に重ねていき、正義のために戦うんだと囁く。
どうやったらこの女をヤレるのかしか考えていない主人公はそんな言葉には耳を貸さないのだが、そんな彼らも否応なくマフィアの抗争に巻き込まれていく…

「子供向けのアニメ」が何を描き、何を残すことができるのか、その答えの一つがここには描かれている。
子供のような純粋な心だからこそストレートに受け止め、そして強く魂に残る。
子供の頃に好きだったアニメの歌を大人になってからも覚えている、誰もがそんな経験はあるだろう。
それが何を意味するのか、そこから何を生み出すべきなのか、この映画はその理想を描いている。

だが甘っちょろさはかけらもなく、イタリアのダークな犯罪映画の中に描くという発想が秀逸である。
自分ことしか考えていないほんまもんの犯罪者が、愛を知り、人のために力を使おうと心変わりしていく描写が素晴らしい。
正義として描かれた正義には正義はないが、悪の中から生まれた正義には純粋な正義を感じる。
ヒースレジャー版ジョーカーへのオマージュもあるのでクリストファー・ノーランの「ダークナイト」も意識しているわけだが、個人的にはダークナイトより遥かに好きだなあ。

クライマックス、ハリウッドメソッド的になっていく中で、どうしても陳腐に退屈になってしまう。それは仕方ない。
それは仕方ないが、さらにその先、ラストのラストに「鋼鉄ジーグ」愛を炸裂させて、スカッとさせてくれる。
その発想はなかった!そうか、そうだったのか!
原作への強い愛があればこそ、ここまで出来るんだぜ!と、高らかに雄叫びをあげてみせる情けない中年男の背中に拍手喝采。
ロボットアニメの実写映画化の金字塔である。
posted by 井川広太郎 at 16:29| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年05月08日

あの日、兄貴が灯した光

『あの日、兄貴が灯した光』(原題 형・My Annoying Brother/2016年/韓国/配給 CJ Entertainment Japan/110分)



監督:クォン・スギョン
出演:チョ・ジョンソク、D.O.、パク・シネ

2017年5月19日(金) TOHOシネマズ新宿ほか全国順次ロードショー!
公式HPhttp://aniki-themovie.jp/


クズなチンピラの兄貴が、失明した元柔道五輪代表の弟の元に転がり込んで来て再起を促す感動ドラマ

「難病もの」ではあるが、恋愛ではなく兄弟愛を描くバディムービー。
弟が叫ぶ「ヒョン」というのが「兄貴」という意味で、それが「형」という原題なんだろうか。

物語もキャラクターも演出も僕の好みではなかったんだけれど、しかし脚本がよくできているせいかクライマックスは普通に泣いた。
うわー、ベタやわーとか思いつつ、涙を堪えることができなかった。

ナンパ指導するシーンとか、失明した男にとっても女の美醜は重要なのかという「ブラインド・マッサージ」的なテーマにもニアミスしていて興味深かった。
それよりも、どんな女も落ちる!っていうそのテクニックを早く教えてくれよ。

弟のイケメンっぷりが素晴らしいし、各キャストがスター然として魅力的。
コメディリリーフの神父役の人がよく分からなかったけど、出落ちのお笑い芸人かなんだろうか。

この作品の上映が、CJエンタテイメントジャパンの最後の業務であるとか。残念。
posted by 井川広太郎 at 16:06| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年04月11日

僕とカミンスキーの旅

『僕とカミンスキーの旅』(原題 Ich und Kaminski/2015年i/ベルギー・ドイツ合作/配給 ロングライドi/123分)



監督:ボルフガング・ベッカー
製作:ウーベ・ショット、ボルフガング・ベッカー
出演:ダニエル・ブリュール、イェスパー・クリステンセン、アミラ・カサール、ドニ・ラバン、ジェラルディン・チャップリン

公式サイト http://meandkaminski.com/
4月29日(土)YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開!


伝説の盲目の画家と、彼の伝記を書こうとするインチキな青年とが駆け引きしながら旅するうちに、次第に深い友情で結ばれていくロードムービー

マティスやピカソの影響を受けたポップアートの申し子で盲目の画家というのがまたインチキな設定だが、おかげでダリやらウォーホールやら何やら数多くの作品と作家が登場して面白い
この映画自体がポップアートを包括というか脱構築というか、そんな大げさなことではないんだろうけれど、でもやはりインチキな雰囲気がとてもポップアートな映画

ちょっとしか出ないのにドニ・ラバンが猛烈に印象的でカッコよかったり、娘役のアミラ・カサールの唐突に淫靡なシーンにドキドキしたり、でもやっぱりラストのかつて愛した女に会いに行こうという無駄な純愛っぷりが痛烈で良い
ダメだよ!絶対に会っちゃダメなんだ!なあ俺たち約束したろ?

そんなこんなで画面には絵や物が溢れているのだが、とっても美術と衣装が凝っている
幾らかかるんだろうなあ…とっても贅沢!
主人公の青年の彼女が「日本映画好き」らしいのだが、そんな彼女の部屋に貼ってあるのは黒澤明の乱と、あともう一本は影武者だったかな?
とりあえず主人公が暇で一人で見るテレビ番組が「ボブの絵画教室」ってとこで胸熱
posted by 井川広太郎 at 20:28| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年03月27日

イップマン 継承

『イップマン 継承』(葉問3 Ip Man 3/2015年/中国・香港合作/配給 ギャガ・プラス/105分)



監督:ウィルソン・イップ
製作:レイモンド・ウォン
アクション監督:ユエン・ウーピン
音楽:川井憲次
出演:ドニー・イェン、リン・ホン、マックス・チャン、マイク・タイソン、パトリック・タム

公式サイト http://gaga.ne.jp/ipman3/
4月22日(土)新宿武蔵野館他全国順次公開


ブルース・リーの”師匠”としても名高い伝説の格闘家イップ・マン(葉問)の活躍を描くアクションエンターテイメント。

「香港映画好き」と香港人に言ったら「イップマン観た?」と聞かれるぐらい、いまの香港映画を代表するメジャータイトル。
ドニー・イェンを”本物のアクション・スター”にしたこの超人気シリーズの過去作を僕は観ていないのだが、しかしよく出来ているので本作だけでも十分楽しめる。

『ドラゴン危機一発'97』や『新・ドラゴン危機一発』の頃はブルース・リーの後継者というアングルもキレッキレで、嬉々としてドニー作品を観に行ったのだが不思議なほどパッとしなかった。
いま思えばドニーのアクションはガチすぎて、美意識が強すぎたのかもしれない。
そのせいか、いまだに僕はドニーのベストアクトは主演ではない『HERO』だと思っている。

そんなこんなでいつしか僕自身も香港映画やアクション映画自体をあまり見なくなっていったので、本作で久々にドニー・イェンを見て真っ先に感じたのは「老けたな…」ということであった。
ただ本作でのドニーの柔軟性の高い演技を見ていると、なるほど、近年はハリウッドでの活躍も目覚しいのも頷ける。

というのもドニーが相対するのが並々ならぬ曲者ばかりなのだ。
ブルース・リーになりきるチャン・クォックワン、イケメン超新星なマックス・チャン、そしてなんだかとても久しぶりに見た気がするパトリック・タムなど皆アクが強いキャラばかりで、そしてそして極め付けはやはりマイク・タイソンである。

明らかにスクリーンに映っちゃダメなオーラがこぼれ出てしまっているマイク・タイソンは、いつ耳に噛み付くのかと常にハラハラさせながらも、終始見事な演技を披露している。
そのことに感動しつつも、間合いを詰めるカットのムーブなどはまさに圧巻であり、これに相対するドニーの勇気に感動すらしてしまう。

子供から老人までどころか、ボクシング史上最強の男からそっくりさん俳優までがひとたびカンフーすれば皆同じ土俵に立ち、異種格闘技戦というか闇鍋というか、香港映画と呼ぶほかジャンル分けできないコッテコテのサービス精神の旺盛さには、なんでもアリの奔放な凄みがみなぎっている。

俳優それぞれがスター然とし、香港映画特有の笑いとガチが混在する魅惑的なキメ顔にワクワクせずにいられない。
そしてドニーもやはりアクションしている時の顔がいい、詠春拳の超高速アクションしながらハホフホ言っている顔が抜群にいい。
posted by 井川広太郎 at 10:45| Comment(0) | TrackBack(1) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年03月12日

たゆたう

『たゆたう』(2016年/日本/モラモラプレス/91分)



監督:山本文
エグゼクティブプロデューサー:山口真人
出演:寺島咲、手塚真生、木下ほうか

公式サイト http://tayutau-movie.com/
新宿 K's cinemaにて2017年4月1日公開


自身の性別について違和感を感じている女が、望まない妊娠をしてしまったルームメイトの女のお腹の中の子を自分が育てると提案するのだが…

女たちのリアルな性と生、セックス観と人生観が生々しい、今時珍しいほど真摯で骨太なドラマ。

二人の女が素晴らしく美しい。
のだが、性的な魅力を醸し出しながらも、彼女たちはどこか乾燥していてサバサバしている。
女性監督ならではの、女たちに寄り添いつつも突き放した、ドライな演出が冴えている。

どっしりと構えたカメラが、時折、不安定な手持ち撮影になって乱れ、見る者の感情を激しく揺さぶる。

荒波でも凪でもなく、しかし緩やかに移ろい揺れ動く不確かさを知った時、僕らは何処に立つ瀬を求め縋ればいいのか。
posted by 井川広太郎 at 19:10| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年02月05日

セル

「セル」(原題Cell/2016年/アメリカ/配給プレシディオ/98分)



監督:トッド・ウィリアムズ
製作:リチャード・サパースタイン、マイケル・ベナローヤ、ブライアン・ウィッテン
製作総指揮:ジョン・キューザック
出演:ジョン・キューザック、サミュエル・L・ジャクソン、イザベル・ファーマン

公式サイトhttp://cell-movie.jp/
2017年2月17日(金)TOHOシネマズ六本木ヒルズ他、全国ロードショー!


スティーヴン・キングが原作と脚本を担当した、携帯電話によって人々がゾンビ化していくというホラー映画

クソ映画すぎて全ての人に紹介したいクソ映画
つならなすぎて目が離せず、きっといつか面白くなるはずだと信じて最後まで頑張ったのだが、ついにまったく面白くならないどころか、ラストがショッキングなつまらなさで唖然とさせられる

僕は映画が成立する難しさを実感しているし、実際、この世に存在している映画はそれだけで奇跡に等しい
莫大な予算をかけ、多くの人が関わり、長い年月がかかり、様々な苦難を乗り越え完成し、さらにそこから上映にたどり着いたすべての映画を尊敬するし、貴いものだと心から思う
それに映画は結局のところ好みの問題だから僕なんかが良し悪しを語るなんてもってのほか、観たい人が好きな映画を好きなように観ればいいと考えている

だが、この映画はつまらない映画の代表例として映画の教科書に載せて欲しいレベル
さもないとゴールデンラズベリー賞にノミネートされることもなく消えていってしまう
むしろ、こういう珍品が存在していること自体に映画の奥深さを感じるし、ある意味本物のホラー

おいおい、スティーヴン・キングが原作と脚本を担当し、ジョン・キューザックとサミュエル・L・ジャクソンが主演してるんだから、そんなわけないじゃないかとお思いになるでしょう
そんな方にこそ、是非とも、この映画のつまらなさを劇場でご確認して頂きたい
そして、この映画の悪口を言いながら酒を飲み交わしたいもんだが、そろそろ僕の中では記憶が薄れかけているので、「恐怖体験」したい映画ファンは劇場に急げ!
posted by 井川広太郎 at 10:29| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年01月04日

壊れた心

「壊れた心」(原題 Pusong wazak! Isa na namang kwento ng pag-ibig sa pagitan ng isang kriminal at isang puta/2014年/フィリピン・ドイツ合作/配給 Tokyo New Cinema/73分)



監督/脚本/プロデューサー/作曲/音楽 :ケビン・デ・ラ・クルス
撮影監督 : クリストファー・ドイル
製作:ケビン・デ・ラ・クルス、アチネット・ビラモアー
出演:浅野忠信、ナタリア・アセベド、エレナ・カザン、アンドレ・プエルトラノ、ケヴィン、ヴィム・ナデラ

公式サイト http://tokyonewcinema.com/works/ruined-heart/
2017年1月7日より渋谷ユーロスペースほかにて劇場公開


スラム街に生きる殺し屋と組織の女との逃避行をファンタジックかつ詩的に描く

セリフがあまり無い代わりに、全編で音楽が流れている
映画というよりも、映画館でアルバムを聴いているような感じに近いのかも
バスの中の曲とラストの曲が良く、あと一曲、カッコイイ曲があった気がしたけど、忘れてしまった
あ、思い出した、乱交パーティ?のシーンの曲だ、あれも良かった
三曲とも、もう一回聴きたいなあ
しかしラストの長い不可解なテロップはちょっと萎えた
posted by 井川広太郎 at 14:26| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2016年12月08日

ミス・シェパードをお手本に

『ミス・シェパードをお手本に』(原題 The Lady in the Van/2015年/イギリス/配給 ハーク/103分)



監督:ニコラス・ハイトナー
製作:ケビン・ローダー、ニコラス・ハイトナー、ダミアン・ジョーンズ
製作総指揮:クリスティーン・ランガン
出演:マギー・スミス、アレックス・ジェニングス

公式サイト http://www.missshepard.net/
12月10日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー


劇作家と、彼の家の庭に住み着いたホームレスの女性との交流を描くヒューマン・コメディ。
実話を描いたエッセイを元にした舞台の映画化とのこと。
ハリーポッターシリーズでも有名なマギー・スミスが、元気で高貴な謎めいたホームレスのレディを演じている。

子供の頃って必ず近所に謎の人がいて、大抵は老人だったりするが見かけただけで学校で噂話になったり、あるいはすれ違ったり怒鳴られたりすることで盛り上がったり、あの人は何者なんだろうと想像することで未知の大人の世界へと想像力を広げてくれたり。
そういえば中村高寛監督の「ヨコハマメリー」はそんな映画だったね。
時折どこからともなくやってくる寅さんとか謎のテキ屋のおっちゃんとか、そういう異質なものが身近にいることで僕らの小さな世界は成り立っているんだって実感まで行かなくとも、不思議な安心感があった。
それはもう子供にとっては半ば神秘的というか、日本的な解釈で言う所の神的な役割も担っちゃっているんだろうけど、この映画のミス・シェパードも近所の子供を鬼のように追いかけ回すシーンが一回だけあるが、きっとそういった類だったんだろうな、と。
そんな鬼ババアだかゴミババアを家に住まわしちゃうってのがシュールだし、そうすることで都市伝説的な彼女の素性を知っていくという冒険譚が実話ってのだから驚きだが、舞台を映画化したせいか、十数年に及ぶという時間経過はあまり感じなかったな。
posted by 井川広太郎 at 19:32| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2016年11月17日

グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状

「グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状」(Das Grosse Museum/2014年/オーストリア/配給 スターサンズ、ドマ/98分)



監督 ヨハネス・ホルツハウゼン
製作 ヨハネス・ローゼンベルガー

公式サイト http://thegreatmuseum.jp/
2016年11月26日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開!


創立125周年を迎えたウィーン美術史美術館が、大規模な改装工事を経て再オープンするまでの様子を追ったドキュメンタリー。
館内の奥の奥まで入り込み、様々な部署で多くの人々が働く様子が淡々と点描のように描いていく。
中盤でちらっとだけ映る(だけでグッと来る)ブリューゲルの「バベルの塔」が後になって再登場する時、この映画がその絵を意識した構造になっているということにようやく気付き、なるほど!って思った。
美術館の内側に興味がある人にとっては、なかなか見られないような映像が多く楽しめるかも。
個人的には、さらっとだけ出てくる美術館の雇用や組織や人間関係に対して不満を持つ人々をもっと掘り下げて描いて欲しかった。
posted by 井川広太郎 at 21:33| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする