2019年08月21日

エンテベ空港の7日間

『エンテベ空港の7日間』(原題 7 Days in Entebbe/2018年/イギリス・アメリカ合作/配給 キノフィルムズ/107分)



監督 ジョゼ・パジーリャ
製作 ティム・ビーバン、エリック・フェルナー、ケイト・ソロモン、マイケル・ライト
出演 ダニエル・ブリュール、ロザムンド・パイク、エディ・マーサン、リオル・アシュケナージ、ドゥニ・メノーシェ、ベン・シュネッツァー

公式サイト http://entebbe.jp/
10/4(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開!!


実際に起きたハイジャック事件とその人質救出作戦を描くサスペンス

1976年、テルアビブ発パリ行きのエールフランス機を乗っ取った犯人が服役中の親パレスチナ過激派テロリストの解放を要求するが、イスラエル政府は犯人グループが立てこもるウガンダのエンテベ国際空港での人質救出作戦を決行する、という実際に起きた事件の4度目の映画化という。

過去の三本は事件直後に制作されたが、四十余年後に撮られた本作は詳細な研究や取材を基にした史劇であり、多角的に描く群像劇であって、主人公はドイツ人テロリスト。
英雄的な物語ではあるが単なるアクション映画やヒーロー映画ではなく、登場人物一人一人に深い人物造形が施されたリアルでシリアスなドラマになっている。

極限状態の中で理想と現実が入り乱れ仲間と対立し犯行の是非を問い続けるテロリストと、事件が引き金になって政治闘争化していくイスラエル政府を主軸に、長い拘束期間で人間性がむき出しになっていく人質たちや、あまりにも大胆な作戦に困惑を隠せないイスラエル軍兵士など、それぞれの立場で、それぞれの思いや葛藤が丁寧に描かれていく。

しかし事実を積み上げる展開はテンポよく、助長になることも無く、美しく素晴らしいショットの連続で、叙情と緊張感とが両立した素晴らしい演出で手に汗握る面白さ。

様々な国の人が登場するのでドイツ人同士はドイツ語で、フランス人同士はフランス語でなど、きっちり使用言語を分けているのだが、なぜかメイン舞台であるイスラエル政府はヘブライ語ではなく英語で会話しているのが奇妙だった。

劇中の要所でコンテンポラリーダンスが挿入されるのだが、それがとても効いている。
コンテンポラリーダンスを使用する映画はあっても無理矢理感が強かったり、残念な感じだったりすることが多い。
だが、この作品では大胆な起用ながら見事に融合し、むしろそのコンテンポラリーダンスがあるからこそ映画として完成したのではないかとすら思う。
豪快な音楽で煽りに煽ってから踊る、たまらん。
posted by 井川広太郎 at 13:52| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2019年08月19日

タロウのバカ

『タロウのバカ』(2019年/日本/配給 東京テアトル/119分)



監督 大森立嗣
出演 YOSHI、菅田将暉、太賀、奥野瑛太、植田紗々、豊田エリー、國村隼

公式サイト http://www.taro-baka.jp/
9/6(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー


東京のどん底で生きる少年たちが偶然、銃を手にしたことから暴走していく様を描く

資本主義では生産性が高いことが全てという偏った価値観によって、半グレ、援助交際、学歴偏重、違法行為、育児放棄、そして弱者を救済するどころかおとしめる思想や行為の数々など、現代の日本が生み出し続ける病巣を痛烈にえぐり出していく。

舞台を東京の外れ、川沿いの首都高の下辺りという絶妙な位置に設定したことが見事に効いている。

天からの恵みも全てが遮られ、光も届かぬ暗がりで生きる逞しさは、この国の希望なのか絶望なのか。
posted by 井川広太郎 at 15:04| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2019年07月30日

ラブゴーゴー

『ラブゴーゴー』(原題 愛情来了 Love Go Go/1997年/台湾/配給 オリオフィルムズ、竹書房/日本初公開 1998年12月12日/113分)



監督 チェン・ユーシュン
製作 シュー・リーコン
出演 タン・ナ、シー・イーナン、リャオ・ホェイチェン、チェン・ジンシン

公式サイト https://nettai-gogo.com/
新宿K's cinema他、全国順次ロードショー


台北を舞台に切ない恋をする人々をオムニバス形式で描くコメディ

冴えないパン職人が、店の常連客の美女が幼なじみであると気づき、子供の頃にし損ねた告白をしようとする。
おデブな女の子が偶然拾ったポケベルの持ち主と電話で話しただけで恋に落ち、デートするためにダイエットを決意する。
美女が経営する床屋に、不倫相手の妻が乗り込んで来るが、そこに偶然、護身具のセールスマンが居合わせる。
といった大枠三つのエピソードがありながら、それぞれの登場人物が重複し繋がっていて、連作のようでもありながら全体で一つの物語を構成している。

パン屋のエピソードとおデブな女の子のエピソードが素晴らしい。
脚本も秀逸で、衣装や美術といったアイテムや色彩設計、全てがキレッキレなのだが、やはり何より登場人物の魅力に尽きる。

太っていてブサイクでいつもカツラを気にしている陰気なパン職人、そしてデブでいながらメッチャ明るく元気で勝気ながらシャイな一面もある女の子。
この二人が台北の街を傍若無人に駆け回り、歌い踊る姿が圧倒的に愉快なのだが、しかも二人ともズブの素人で、本作が演技初挑戦だというのだから驚かされる。

パン屋のエピソードでは美女は脇役なのでもっと映してくれ!とすら思うのだが、床屋のエピソードで実際に彼女が主役になるとなぜか物足りない。
彼女は事実うっとりするほど美しいのだが、先行する冴えないパン職人とおデブな女の子、この二人のインパクトが凄まじいのだ。
イケメンと美女の恋愛など退屈、やはり映画においては個性的なルックスこそが武器になる。

日本初公開時に観て以来、つまり20年ぶりに観たのだが古臭いどころか新鮮さすら感じ、問答無用に面白かった。
抱腹絶倒のコメディであると同時に、侯孝賢やエドワードヤンといった台湾ニューウェーブの流れを受け継ぎ、当時の台湾の景色、台北という街を記録するという映画的な役割を見事に果たしている。
posted by 井川広太郎 at 10:25| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2019年07月27日

熱帯魚

『熱帯魚』(英題 Tropical Fish/1995年/台湾/配給 オリオフィルムズ、竹書房/日本初公開 1997年4月5日/108分)



監督 チェン・ユーシュン
製作総指揮 ワン・トン
出演 リン・ジャーホン、シー・チンルン、リン・チェンシン、ウェン・イン

公式サイト https://nettai-gogo.com/
2019年8月17日より新宿K's cinema他、全国順次ロードショー


高校受験を目前に誘拐された少年が、犯人一家と交流するうちに大人へと成長していく様を描くコメディ

初公開時に観て以来、つまり20年ぶりに観たのだが、紛うことない傑作であった。
加熱する受験戦争、都会への一極集中、拝金主義などといった台湾の社会問題を背景としながら、 ポップでキャッチーに、おかしなおかしな誘拐事件を描く。

実際、この頃の台湾では誘拐事件が多く重大な社会問題になっていたらしいのだが、描かれる事件は深刻さよりも滑稽さが圧倒している。
上手に誘拐も出来ないドジで間抜けな犯人たちは、悪人ではあっても悪意はない。
す巻きにされた少年たちに箸で食べ物を与える犯人の姿は、まるでヒナに餌を与える親鳥のようでもあり、なんとも愛らしく微笑ましい。

台北で誘拐された少年は、犯人の故郷である田舎に連れて行かれ、そこでしばらく過ごすことになる。
核家族化が進み学歴偏重で功利的な都会とは違い、田舎では親類縁者やご近所さんとの家族的な結びつきが残っている。
喧嘩しながらも食事の時は皆そろって食卓を囲むという繋がりの中で、少年もその一員として、つまりは一人の人間として扱われる。
殺伐とした受験戦争や冷たい家族に疲れていた少年は、あらぬ場所に迷い込むことでモラトリアムという不思議の特権を得るのだが、そこはまるで異世界かパラダイスのような居心地の良さがある。
だがしかし、そこで暮らす人々とて挫折や痛みや哀しみを隠し持っていることを知り、少年は自身も責任を負う覚悟を決める。

スパルタな教師がなぜか首にコルセット巻いていたり、田舎町では堰が決壊したとかで家の中まで水浸し、警察官が犯人の元同僚であったりと、シュールな世界観を築く独特のタッチが素晴らしい。
リアルとファンタジーとの境界線を自由奔放に行き来し、愉しく型破りな演出が隅々まで施され、独特のフォルムで映画的な面白味に溢れている。

そして主役は紛れもなく少年でありながら主人公を固定せず様々な登場人物やエピソードに自在に切り替わっていく巧みな話法は、主観と客観を同時に揺さぶられるようでテーマにもグッと即していて、青春の一筋縄ではいかない心理や複雑な感情を見事に表している。
思春期の美しも切ない哀しみを捉えつつも圧倒的なイマジネーションで映画を締めくくるラストは圧巻で、侯孝賢の「恋々風塵」や相米慎二の「台風クラブ」などを彷彿とさせる青春映画の金字塔だ。
posted by 井川広太郎 at 10:16| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2019年06月30日

ワイルドライフ

『ワイルドライフ』(原題 Wildlife/2018年/アメリカ/配給 キノフィルムズ/105分)



監督 ポール・ダノ
製作 アンドリュー・ダンカン、アレックス・サックス、ポール・ダノ、オーレン・ムーバーマン、アン・ロアク、ジェイク・ギレンホール、リバ・マーカー
出演 キャリー・マリガン、ジェイク・ギレンホール、エド・オクセンボールド、ビル・キャンプ

公式サイト http://wildlife-movie.jp/
7月5日(金)YEBISU GARDEN CINEMA、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー


1960年代のアメリカ、大規模な山火事に苛まれるモンタナ州を舞台に、生活苦から心が離れていく両親の姿を見つめる少年の葛藤を描くドラマ

現時点で圧倒的に今年のベスト。

定職に就けない父親は一念発起し山火事の消火作業員を志願して去り、取り残された母親は寂しさと生活苦の中でパート先で知り合った金持ちの男と親しくなっていき、一人息子は自分の居場所である家庭を守りたいと思いつつ力のない己を恥じて生き方を模索する。

観ていて、侯孝賢やカサヴェテスが脳裏をよぎった。
ポール・ダノ初監督にして圧倒的な才能であった。

冒頭の、父子がアメフトの練習をする長回しでそれは予感される。
タッチダウンの瞬間が木に隠れるという絶妙、そうタッチダウンは映っていないのだが、我々は否応なくそれを想像してしまう。
その後の食事のシーン、家族のつながりと違和感と、彼らが共存する場所といった様々が周到に込められていて決定的だ。
それからはもう脱帽、めくるめく映画の世界にどっぷりと浸かった。

ゆっくりと家族が崩壊していく、静かに音を立て僅かながらしかし確かに。
それは判を押すような単純なことではなく、いろんな葛藤、迷い、事情、溢れんばかりのエモーションがある。
その情景を繊細を丁寧に、そして大胆かつ克明に、なんとも美しく切り取っていく。

母が不倫に陥ちる瞬間、その迷いと喜び、救済と罪悪感、背徳感と恋をするかけがいのないときめきといった矛盾する様々な感情が入り乱れるその時間を、長い長いシークエンスが描いていく。

とにかく俳優が素晴らしい。
妻であり母であり女であるキャリー・マリガン、父であり夫であり男であるジェイク・ギレンホール、主演の名優二人が深い人間性を伴った複雑な人物の魅力を見事に表現している。
感動的に最高だ。

俳優部と演出部は表裏一体であると、いつも思っている。
共同作業である映画の現場において、俳優部と演出部は共犯関係だ。
だから名優が名監督、あるいは名監督が名優とは限らないが、その可能性は比較的に高いと思う。
リチャード・リンクレイターの「ファーストフード・ネイション」で初めてポール・ダノをすげえ役者だと認識したが、それが素晴らしい監督でもあるとこの映画で確信した。

夫と妻の微妙な距離、その躊躇いがちに漂うささやかな空間に、語り尽くせぬ物語が広がっていることを僕らは感じることができる。
そして、それを見つめる眼差し、あまりに完璧なラストカットは映画の神様の祝福なのだろうか。
posted by 井川広太郎 at 18:11| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2019年06月20日

さらば愛しきアウトロー

『さらば愛しきアウトロー』(原題 The Old Man & the Gun/2018年/アメリカ/配給 ロングライド/93分)



監督 デビッド・ロウリー
出演 ロバート・レッドフォード、ケイシー・アフレック、ダニー・グローバー、チカ・サンプター、トム・ウェイツ

公式サイト https://longride.jp/saraba/
2019年7月12日(金)全国公開


決して傷つけないことをポリシーに愉しみとして銀行強盗と脱獄を繰り返した老人の実話を元に描く

映画史上屈指のスターであるロバート・レッドフォードが「引退作品」として自ら製作し、ダニー・グローバー、トム・ウェイツ、シシー・スペイセクら往年の名俳優達が共演。
ロバート・レッドフォードが主催するサンダンス映画祭で見出されたデヴィッド・ロウリーが監督。
Show must go onなメッセージは感じつつ、ロバート・レッドフォードの「引退作品」があくまで甘くマイルドなコメディ調というのは驚きもあった。
やはり「明日に向かって撃て」のイメージが強いのか、あるいは監督の好みなのかもと思ったが、デヴィッド・ロウリーの過去作「セインツ -約束の果て-」もシリアスに犯罪者を描く映画であるらしくて意外。
「セインツ -約束の果て-」はデヴィッド・ロウリーの盟友である「ア・ゴースト・ストーリー」のコンビ、ケイシー・アフレックとルーニー・マーラが主演。
あいにく「さらば愛しきアウトロー」にはルーニー・マーラは出ていないが、「ア・ゴースト・ストーリー」が好きな人は是非!
posted by 井川広太郎 at 23:36| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2019年05月30日

北の果ての小さな村で

『北の果ての小さな村で』(原題 Une annee polaire/2018年/フランス/配給 ザジフィルムズ/94分)




監督 サミュエル・コラルデ
製作 グレゴワール・ドゥバイ
出演 アンダース・ビーデゴー、アサー・ボアセン

公式サイト http://www.zaziefilms.com/kitanomura/
7月シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー


グリーンランドの小さな村に教師として派遣されたデンマーク人の若者が、現地の人と心を通わせていくさまを描く

ドキュメンタリー映画なのだろうと思って観はじめたら、ドラマだったので驚いた
いやしかし、ドラマのようでありながら確かにドキュメンタリーでもある
実際は、ドキュメンタリーとドラマの垣根を超えた独特の作風とのこと

一年間に渡って取材を続け、ドキュメンタリーはドラマのように撮り、ドラマはドキュメンタリーのように撮るという基本を忠実に行った成果らしい
とはいっても、どうしたってドキュメンタリーとドラマの境目が分かってしまうものだが、この作品では驚くほど違和感がない

その結果、登場人物たちが何とも活き活きとしている
喜怒哀楽リアルな表情が溢れていて見飽きず、カメラなど意識しない自然な立ち振る舞いに見とれてしまう
彼らはどんな俳優たちよりも魅力的で、きっと多くの俳優たちはこの映画に嫉妬する

ドキュメンタリーと勘違いしたのは、試写状に写っていたデンマーク人の若者と現地の少年のツーショットが、あまりにナチュラルであったからだ
それを見て、これは芝居ではないと思い込み、きっとドキュメンタリーなのだろうと錯覚したのだ

登場人物たちのありなままの姿が現地の生活を包み隠さず伝え、過酷でありながらとんでもなく美しい自然環境に圧倒される
人間が共生する様々な生き物の生と死が描かれ、命のありがたさと高貴さに心打たれる

パラダイスとして描きすぎているという指摘もあるだろうし、デンマークとの関係や、それと共に若干語られるグリーンランドの経済的な問題点なども、もっと掘り下げてもいいのかもしれない
だが、見た目は大人ながら中身は幼いデンマーク人の若者の成長物語として秀逸であるし、彼の都会的な脆さに対し、現地の少年の無邪気な逞しさはまさに対極的であり、そんな二人の言葉の違い、文化の違いを超えて生まれる友情には素直に熱くなる
なんという景色の美しさ!なんという動物たちの愛らしさ!こういう映画を見たかった!
posted by 井川広太郎 at 22:32| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2019年04月07日

メモリーズ・オブ・サマー

『メモリーズ・オブ・サマー』(原題 Wspomnienie lata/2016年/ポーランド/配給 マグネタイズ/83分)



監督 アダム・グジンスキ
製作 ウーカッシュ・ジェンチョウ、ピオトル・ジェンチョウ
出演 マックス・ヤスチシェンプスキ、ウルシュラ・グラボフスカ、ロベルト・ビェンツキェビチ

公式サイト http://memories-of-summer-movie.jp/
6月、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー


夏休みに大好きな母と二人きりで過ごすことになった少年の成長を描くドラマ

1970年代と思われるポーランドの田舎町。
父が出張し、友人はバカンスに行った夏、少年は大好きな母と二人きりで過ごすことになる。
しかし楽しい時間もつかの間、母はしばしば家を空けるようになり、少年の心は不安と疑念に埋め尽くされていく。
そんな中、少年は、都会から来た少女と知り合うのだが…

優しく美人でセクシーで大好きな母、親であるだけではなく友人であって恋人のようでもあり、甘えたがりの少年はいつも一緒にいる。
だが家族であっても他人なんだという残酷な事実に、思春期の少年は向き合うことになる。
それは楽園で”性”という禁断の木の実を手に入れる悲劇でしかない。

硝子のテーブルに映る顔、隣室が伺える鏡、窓を叩く小石、遮断機と汽車など、徹底的に映画的な境界線が描かれていく。
すっきりとして小綺麗な室内に効果的に配置された家具や衣装や調度品がいちいちオシャレで、劇中で重要な役割を果たしていく。

そんな豪奢な美術と比べると一家が暮らすアパートは妙に狭く、部屋数が少なく見える。
田舎町だし、もう少し広くてもいいのではないかと思ってしまうが、監督の実体験を反映しているというのだから、こういうものなのだろうか。
夫婦の寝室すらなく、母親の寝床がリビングにあるソファーベッドだなんて、まるで「こわれゆく女」じゃないか。
posted by 井川広太郎 at 19:31| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2019年03月04日

芳華 Youth

『芳華 Youth』(原題 芳華 Youth/2017年/中国/配給 アットエンタテインメント/135分)



監督:フォン・シャオガン
製作:フォン・シャオガン、ワン・チョンジュン、ワン・チョンレイ
原作:ゲリン・ヤン

公式サイト http://www.houka-youth.com/
2019年4月12日より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、 YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次公開


文化大革命期に人民解放軍の文工団という歌劇団に所属した若者たちの青春とその後の人生を描くドラマ

久々にガツンとした文革映画なんてのを期待していたのだが、そんなものは微塵も感じさせないキラキラした青春映画。
正直、その点にはガックシきたが、監督も原作者も実際に文工団に所属していたらしい。
当時を美化しすぎているようにも思えるが、それは現在への不満の表れなのかもしれない。

毛沢東が亡くなったのは、僕が生まれた1976年なので、はるか昔のようでいて割りと最近。
それから中国は急速かつ劇的に変化してきたが、誰もがそれに馴染めているわけではない。
映画の中では、豊かになった現代は拝金主義的すぎて違和感を拭えず、”あの頃”の純真を守り続ける人たちが描かれる。
この映画は中国で大ヒットしたというのだから、同じように感じている人は意外に多いのだろう。
時には吹き出してしまいそうなキラキラした演出も、当時を懐かしみ、そして振り返るための唯一の手段だったのかもしれない。

メインキャストの女優たちが、驚くほどナチュラルで個性的な美女ばかりで眩しく、うっとりさせられる。
何でも、歌って踊れて芝居ができて、さらに”整形していない”女優を選りすぐったのだとか。
あの時代は自然な美が提唱されていたからということらしいが、その辺りにもこの映画の哲学が見え隠れしている。
posted by 井川広太郎 at 22:58| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2019年02月13日

ウトヤ島、7月22日

「ウトヤ島、7月22日」(原題 Utoya 22. juli/2018年/製作国 ノルウェー/配給 東京テアトル/97分)



監督:エリック・ポッペ
製作:フィン・イェンドルム、スタイン・B・クワエ
出演:アンドレア・バーンツェン、エリ・リアノン・ミュラー・オズボーン、ジェニ・スベネビク、アレクサンデル・ホルメン、インゲボルグ・エネス

公式サイトhttp://utoya-0722.com/
2019年3月8日より全国ロードショー


2011年7月22日にノルウェーのウトヤ島で実際に起こった無差別銃乱射事件を映画化。
本編の大半である事件の一部始終を72分間のワンカットで描いている。

率直に言って見ている最中は、そんなに面白くはなかった。
ワンカットという描き方も、大して効果的には思えなかった。

しかし数日経ってからどうだろう、この映画の生々しさ、重さがジワジワと身体にしみ込んで来る。
何かが感覚に直接訴えかけてきて、幾度となく反芻を促す。

実際、この事件についてあまり知らなかった僕も、もはや知らないとは言えない切迫さを共有している。
緊張感漲る「映画体験」と呼ぶべきか、忘れることが出来ない実感を植え付けられた気がする。

鑑賞中は監督のメッセージが強すぎて嫌な感じもしたのだが、それはやはり相当な覚悟と意志を持ってこの映画を撮ったからであろうと今は素直に思える。
名作「ヒトラーに屈しなかった国王」で知られるエリック・ポッペ監督、さすが。
posted by 井川広太郎 at 23:58| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2019年01月29日

ビール・ストリートの恋人たち

『ビール・ストリートの恋人たち』(原題 If Beale Street Could Talk/2018年/アメリカ/配給 ロングライド/119分)



監督:バリー・ジェンキンス
製作:アデル・ロマンスキー、サラ・マーフィ、バリー・ジェンキンス、デデ・ガードナー
出演:キキ・レイン、ステファン・ジェームス、コールマン・ドミンゴ、テヨナ・パリス、マイケル・ビーチ

公式サイト http://longride.jp/bealestreet/
2月22日(金)全国ロードショー


70年代のアメリカを舞台に、幸せの絶頂の黒人カップルが差別と国家権力によって引き裂かれていく様を描くドラマ

アカデミー賞作品賞受賞『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督最新作で、本年度アカデミー賞最有力候補とのこと。
いや、まあ、これ普通に獲るんじゃなかろうか、アカデミー賞とか良く知らないのだけれど。ここぞってとこで良い者でユダヤ人とか出て来るし。

あまりにも見事なファーストカットの美しさに、うっとりさせられる。
ただただ歩く二人を、踊るように祝福するかのように捉える流暢なカメラワークが素晴らしい。

実際、全編を通して圧巻の映像美。
極彩色の衣装や美術に陰影のあるライティング、絶妙なタイミングで入って来る逆光など、隅々まで計算され尽くされ、細やかな所まで緻密に構築されている。
そして演技も素晴らしく物語も面白い、のだが、ちょっと長い。

メロドラマやミュージカルになりそうでならないリアルな話なんだけど、テーマの重さに比べて抑揚が今ひとつ足りない。
主人公二人がいい人過ぎて、一方的に被害者過ぎてイマイチ葛藤が見えないからか。
特に会話のシーンは助長に思え、これで完成尺が90分だったら、と思った。

彼氏役のステファン・ジェームスは幸福の絶頂では生命力溢れる肉体を披露し、壮絶な環境でボロボロになった悲壮な顔まで生々しく演じ切っている。
そしてヒロインのキキ・レインは、とんでもなくチャーミングで可愛らしく、映画の中で成長していく彼女と共に人生という名の時間の旅をしているような夢心地にさせてくれる。
posted by 井川広太郎 at 22:02| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2019年01月17日

ナポリの隣人

ナポリの隣人(原題 La tenerezza/2017年/イタリア/配給 ザジフィルムズ/108分)



監督:ジャンニ・アメリオ
原作:ロレンツォ・マローネ
原案:ジャンニ・アメリオ、アルベルト・タラッリョ、キアラ・バレリオ
出演:レナート・カルペンティエリ、ジョバンナ・メッツォジョルノ、エリオ・ジェルマーノ、グレタ・スカッキ、ミカエラ・ラマゾッティ

公式サイト http://www.zaziefilms.com/napoli/
2019/2/9(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー


家族と溝がある老人が、隣に住む謎めいた若い家族と交流を深めていくミステリアスな人間ドラマ

妻を失ってからは、娘や息子ともまともにコミュニケーションが取れなくなった頑固な老人。
一人で暮らす彼の隣に、幼い娘と息子を育てる若い夫婦が引っ越してくる。
ひょんなことから交流が始まり、次第に老人と一家は擬似家族的な繋がりが芽生えていくのだが…

シンプルな人間ドラマかと思いきや、隣人の闇が露わになると一気にミステリーの様相を帯びて来る。
絶望と不寛容の現代的な家族像は、ハネケの「ハッピーエンド」に通じるものもある。
でもジャンニ・アメリオだけにやっぱりとってもウェット。
ラストはちょっとアントニオーニ。
posted by 井川広太郎 at 23:58| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年12月28日

迫り来る嵐

『迫り来る嵐』(原題 暴雪将至 The Looming Storm/2017年/中国/配給 アットエンタテインメント/119分)



監督:ドン・ユエ
製作:シアオ・チエンツァオ
製作総指揮:ルオ・イエン
出演:ドアン・イーホン、ジャン・イーイェン、トゥ・ユアン、チェン・ウェイ、チェン・チュウイー

公式サイト http://semarikuru.com/
2019/1/5新宿武蔵野館・ヒューマントラストシネマ有楽町にて、全国順次公開


工場の保安課の男が、近隣で起きた殺人事件の捜査にのめり込んでいくサスペンス

中国版「殺人の追憶」とでも呼ぶべきか。
犯罪映画の様相を伴いながら、しかし主人公は刑事でも探偵でもない、ただの「名探偵気取りの一般人」という設定が効いている。

探偵気取りの主人公の姿はそのまま、推理映画に熱中する我々観客にも重なり、殺人事件はお手のものとばかりに慣れた手つきで捜査を進めていく。

だがしかし、掴みかけては消えていく犯人の影、巨大な工場の闇、本物の刑事たちの思惑、翻弄される運命の女と謎も増えていく。
進めば進むほど真相に近づくどころか、むしろ霧深い迷いの森に足を踏み入れたかのように現実と非現実の境すら曖昧な混沌とした状況になってくる。
おかしい、いつもとはなんか違う。

手がかりも、証拠も、重要参考人も、犯人も、全てが嘘か幻のように思えてくる。
ちょっと待て、よくよく考えてみればそんな設定、誰が決めたのであったか。

何を追っていたのか、何を見ていたのか、そもそも誰がなんだったのか。
先入観で勝手に他の事件と同じだと思い込み、いつもの謎解きをすれば解決すると決めつけていた。

騙されたのではない、都合の良い嘘を作り出していたのは、分かりやすい答えを求める自分自身だったのだ。
ハッと我に返ると、そこは何もない森の中で、握りしめていたコインはただの葉っぱだった。
一体、何だって言うのだ。

1990年代後半の中国という大海の中で、経済発展を伴う社会の激動という巨大な「嵐」を目前に迎え、小舟でそれに立ち向かう矮小な個人の強烈な不安と葛藤が見事に描かれている。
posted by 井川広太郎 at 12:05| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年11月07日

いろとりどりの親子

「いろとりどりの親子」(原題Far from the Tree/2018年/アメリカ/配給ロングライド/93分)



監督:レイチェル・ドレッツィン
製作レイチェル・ドレッツィン、ジャミラ・エフロン、アンドリュー・ソロモン

公式サイトhttp://longride.jp/irotoridori/
2018年11月17日(土)新宿武蔵野館ほか全国順次公開

 
ダウン症、小人症、ゲイ、自閉症などの”周りとは違う”子供を持つ親たちにインタビューしたドキュメンタリー

いまのところ今年一番泣いた映画。
超良かった!

本編にも登場する作家アンドリュー・ソロモンの著作を元にしたドキュメンタリーで、ダウン症、小人症、ゲイ、自閉症などの子を持つ親たちへのインタビューで構成されている。

登場する人が皆、困難はあってもとても明るく前向きで、素晴らしい。
最高の笑顔連発で、見ているだけでこっちも楽しくなってくる。

”周りとは違う”などという、おおよそ暴力的なカテゴライズによって、僕らがどれだけ不理解に陥っているか。
”健常者”であれば幸福なのか、全てがうまくいっているのか、問題は何もないのか、そんな疑問を突きつけられる。

そもそもトラブルのない親子関係なんてあるわけもないし、誰もが上手くいかない悩みも人には言えない苦しみも抱えている。
そこで目を塞がず、痛みやつらさといった困難に向き合い乗り越えたからこそ、実感できる愛があるのだ。

そしてラストに描かれる「親になる瞬間」、こんな感動的なことがあろうか!こんな素晴らしいことを僕らは皆、体験し共有しているのだ!
”幸せ”になるか否かは自分次第なんだと痛感し、清々しい涙を流さずにはいられない。

僕らはみんな違う、だからこそ世界は美しい。
他者を認めるということは、自分自身を受け入れることなのだ。
posted by 井川広太郎 at 12:16| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年10月18日

生きてるだけで、愛。

『生きてるだけで、愛。』(2018年/日本/配給クロックワークス/109分)



監督:関根光才
製作:甲斐真樹、松井智
出演:趣里、菅田将暉、田中哲司、西田尚美、松重豊、石橋静河、織田梨沙、仲里依紗

公式サイト http://ikiai.jp/
11月9日(金)新宿ピカデリーほか公開


躁鬱が激しく社会に適応できないで苦しむ女と、彼女と同居する恋人との奇妙な関係を描くラブストーリー

とてもよかった!
ヒロインがどうしようもないクズなんだけど、突き抜けた明るさや苦悩を吐露する正直さがなんとも愛らしい。
ややもすると不快になりそうなところ、いや実際あまりのダメさにムカつくんだけど、ギリギリのラインで魅力的に感じさせる演技が素晴らしい。

こういう奴、いる!いっぱいいる!たくさん見てきた。
今風に言ってしまえば「メンヘラ」で片付くわけだが、実際にメンヘラと生活するとなると、なかなか大変だ。
それだけに、彼女を見守っているのか付き従っているのか、諦めと無気力の中に屈折した激情が見え隠れする彼氏もリアルで惹きつける。

そんな彼らの周りにもいい人がいて、いい出会いもあり、うっかり安直なドラマに陥りそうな罠がありつつも、ろくに進展しないという勇敢さ。
情には流されない物語の停滞感が主人公たちの悩ましいモヤモヤを表象しているからこそ、その中に潜む煌めきがスパークするラストのシークエンスは、なんとも感動的だ。

ここんとこ、シンプルでディープで”文学的な”恋愛ものの日本映画が多い気がするけど、それはキラキラ映画に対する反動なのだろうか。
それとも単に、草臥れて救いどころがないけど愛おしいこの現実を愛でていたいという、大人たちのカタルシスなのであろうか。
ともあれ、その多くが面白い映画であるから、なんとも嬉しい。

ロケ地が良い。
横浜の下町、朽ちたネオンが輝く大岡川沿いの猥雑で寂れた雰囲気が、生活感と哀愁を遺憾無く映している。
posted by 井川広太郎 at 18:35| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年07月20日

判決、ふたつの希望

『判決、ふたつの希望』(原題 L'insulte/2017年/レバノン・フランス合作/配給 ロングライド/113分)



監督 ジアド・ドゥエイリ
出演 アデル・カラム、カメル・エル・バシャ

公式サイト http://longride.jp/insult/
2018年8月31日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国順次公開


レバノン人とパレスチナ移民との小さな口論がレバノンという国をも揺るがす裁判に発展していくドラマ

面白かった!
社会に対する小さな不満が積み重なったイライラ、思わず口にしてしまう挑発的な言葉が引き金となり、誰にでも起こりうるような隣人とのささやかな諍いが、解決策すら見えぬ移民問題の本質を鋭く突く。

レバノンという国の現状と抱えている問題が、リアルな生活の中にとても分かりやすく描かれている。
一般市民のご近所トラブルが、まるでレバノンという国の縮図のようですらあるから見事としか言いようがない。

ただの喧嘩のはずが民族的な背景を持っていて、当事者たちの尊厳を傷つけているからこそ、お互いに簡単には譲れないし、割り切って考えることなどできず、よせばいいのに裁判になる。

しかし、法の下の平等が常にフェアというわけもなく、国の判断や大人の事情、国際情勢的な軋轢もあって、ことは簡単に済まないし、誰もが納得できるとは限らない。

周囲を巻き込み引くに引けなくなったところで、さらに、その純粋な思いを自分たちの主張や利害のために利用しようとする弁護士やメディアたちが焚き付けてくる。
そうして雪だるま式に話が大きくなっていき、国をも揺るがす事案となり、もはや本人たちの意思とは関係なく複雑化し収拾がつかなくなっていく。

登場人物が全員ガンコでクズというか、それぞれがそれぞれの思いを持った人間味溢れる愛すべき人たちばかりで、なかなか上手くはいかない世の中の面白さと素晴らしさを感じずにはいられない。
そしてさらにもう一段、登場人物の一人が隠し持つヨルダンの歴史に絡んだ深い動機付けが描かれ、のっぴきならない問題の根深さを伺わせドラマとしては圧倒的に重みを加え、ますます放ってはおけない気持ちにさせられる。

どこの国でも起こり得て、誰にでも共感できるシンプルな物語になっている点が素晴らしい。
何より、当事者たちの思いとは別の次元で裁判が続くという構図がなんとも皮肉で、それこそ世界情勢そのもののようにも感じられる。
それだけに映画的に見事なエンディングには素直に感動しつつ、綺麗すぎてなんだかちょっぴり物足りなさも感じてしまった。
posted by 井川広太郎 at 10:33| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年07月19日

バッド・ジーニアス 危険な天才たち

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(英題Bad Genius/2017年/タイ/配給 マクザム、ザジフィルムズ/130分)



監督 ナタウット・プーンピリヤ
出演 チュティモン・ジョンジャルーンスックジン、チャーノン・サンティナトーンクン、イッサヤー・ホースワン、ティーラドン・スパパンピンヨー、タネート・ワラークンヌクロ

公式サイト http://maxam.jp/badgenius/
9.22(土)新宿武蔵野館ほか全国順次公開


タイの高校生が金儲けのために組織的なカンニングという犯罪に手を染めていくクライムサスペンス

カンニングを主題にしていると知って、やられた!と思った
狡猾な先生たちの目を盗みどうやってカンニングを成功させるか競う学園もの!なんてのを期待して観に行ったら全く違う映画であった

大人たちはとにかくボンクラで、高校生たちは無邪気で世間知らず、つまりは登場人物が全員バカ。天才なんじゃねーのかよ!
しかも、リスクを冒して罪を繰り返す動機がどんどん曖昧になっていくのに、次々に周囲を巻き込み、多くの人の人生をメチャメチャに壊していくという鬱展開
想像していたのとちょっと違うかな…

学歴偏重社会に対するブラックコメディなのかもなんだけど、その割にはいい人キャラや感動的なメッセージも用意されていて、ちょっとスタンスがよく分からない
クライムサスペンスなら罪悪感なんてあんまない方が面白いんだけど、そこはカンニングというテーマゆえのジレンマか

せめて金以外のモチベーションが明確であれば違っていたと思うが、とにもかくにも登場人物たちが美女イケメン揃いで眼福
主演の子は個性的なスーパーモデルなルックスだし、その親友はスーパーアイドルな可愛さ、メインの男子高校生二人もイケメンで、彼らを眺めているだけでも楽しめる
冒頭でヒロイン2人が出会う図書館、退屈な学校に潜む輝きを上手く捉えた映画的なシーンで綺麗だった
posted by 井川広太郎 at 21:58| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年07月05日

チャーチル ノルマンディーの決断

『チャーチル ノルマンディーの決断』(原題 Churchill/2017年/イギリス/配給 彩プロ/105分)



監督:ジョナサン・テプリツキー
製作:クローディア・ブリュームフーバー、ピアース・テンペスト
製作総指揮:ティム・ハスラム、ヒューゴ・グランバー
出演:ブライアン・コックス、ミランダ・リチャードソン、ジョン・スラッテリー、エラ・パーネル、ジェームズ・ピュアフォイ

公式サイト http://churchillnormandy.ayapro.ne.jp/
2018年8月18日より、有楽町スバル座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開!


イギリス首相チャーチルがノルマンディ上陸作戦を前に葛藤する姿を描く人間ドラマ

チャーチルがノルマンディ上陸作戦に反対していたとは知らなかった!
ので、冒頭でこの映画がノルマンディ上陸作戦を扱っていると知り、ははあ、チャーチルが作戦決行の判断をするまでの物語か!と思ったら、いきなり作戦に異を唱えやがる。
つーことは、そこから作戦を修正するのかと思ってたら、そんなシーンは全くなく、ノルマンディ上陸作戦が嫌で仕方ないチャーチルがグズって酒と葉巻に溺れて鬱で寝込むだけの話であった。

本作はチャーチルの知られざる姿と人間味溢れる側面を描いている、にしても当時の連合国遠征軍最高司令官アイゼンハワーに全権を握られ何も出来ず、個人的な感情で作戦にケチをつけるだけという、トップに立つ人間としてはあまりにもダメすぎる姿は衝撃的。
作戦室にまで出入りする妻に離婚をチラつかされて動揺し、危機的状況なのに飲んではグズるを繰り返し、全く仕事もしないですぐに寝てしまい、戦時中の一国の首相がこれでいいのかと目を疑う。
それだけにチャーチルの演説のシーンはグッと来るものがあり、まあ政治ってこういうことなのかもなーって。

チャーチルの伝記映画と言えば、ついこの間、ゲイリー・オールドマン主演の映画もあったし、ちょっと前には「ダンケルク」もあった。
なぜチャーチルものが続々と映画化されるのか不思議で仕方ないが、どれも描いている時期は微妙にズレている。

なので、むしろ時代順に観ていって、チャーチルの描き方などを比較するのも面白いかもしれない。
時間軸で観るチャーチル映画特集上映、是非やって欲しい。
posted by 井川広太郎 at 09:23| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年07月04日

2重螺旋の恋人

「2重螺旋の恋人」(原題 L'amant double/2017年/フランス/配給 キノフィルムズ/107分)



監督 フランソワ・オゾン
製作 エリック・アルトメイヤー、ニコラ・アルトメイヤー
出演 マリーヌ・バクト、ジェレミー・レニエ、ジャクリーン・ビセット、ミリアム・ボワイエ、ドミニク・レイモン

公式サイト https://www.nijurasen-koibito.com/
8月4日から東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で公開


精神科医に恋した女が、彼に瓜二つの別の精神科医に出会い惹かれていくエログロサスペンス

実は初めてフランソワオゾンを観たんだけど、なんだか女子って大変なんだね
いやでもまあ痩せすぎは良くない、痩せすぎが良くないんだと思う、ほんと
美術館の監視員のバイトというアイデアには激しく嫉妬!
posted by 井川広太郎 at 20:34| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年06月03日

ヒトラーを欺いた黄色い星

『ヒトラーを欺いた黄色い星』(原題 Die Unsichtbaren/2017年/ドイツ/配給アルバトロス・フィルム/110分)



監督 クラウス・レーフレ
製作 クラウス・レーフレ、フランク・エバーズ
出演 マックス・マウフ、アリス・ドワイヤー、ルビー・O・フィーほか

公式サイト http://hittler-kiiroihoshi.com/
2018年7月28日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開


ナチスドイツ時代に迫害を逃れベルリンに潜伏していたユダヤ人たちの運命を証言をもとに描く

「ホロコーストもの」はいまも数多く公開されているが、この映画は切り口も新しく面白かった。
タイトルからは内容を想像しにくいが、原題の「Die Unsichtbaren」は見に見えないとか、透明人間とかそういう意味らしい。

様々な手段を駆使してナチスの追っ手から逃れる四人のユダヤ人のインタビュー映像、当時のニュース映像、そして再現ドラマによって構成されている。
四人を描くってだけで多いのに、さらにインタビューの声と再現ドラマのモノローグが混在し、都合8人の声によって進行されるので、最初はちょっと分かりづらい。
だけどまあ見ていると次第に慣れてきて、複数の視点を持つからこそ刻々と変化していく当時の状況がリアリティと緊張感をもって伝わってくる。

若者たちが知恵と勇気と運を味方にサバイブしていくサスペンスとしても面白いし、リスクを冒してユダヤ人を助けたドイツ人が大勢いたという事実も感動的。
当初は無関係の4人をつなぐ人物も登場し、そういった人間関係から地場を感じさせることで、この映画そのものが当時のベルリンという街を描いている側面もあり興味深い。
posted by 井川広太郎 at 10:10| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする