2019年04月07日

メモリーズ・オブ・サマー

『メモリーズ・オブ・サマー』(原題 Wspomnienie lata/2016年/ポーランド/配給 マグネタイズ/83分)



監督 アダム・グジンスキ
製作 ウーカッシュ・ジェンチョウ、ピオトル・ジェンチョウ
出演 マックス・ヤスチシェンプスキ、ウルシュラ・グラボフスカ、ロベルト・ビェンツキェビチ

公式サイト http://memories-of-summer-movie.jp/
6月、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー


夏休みに大好きな母と二人きりで過ごすことになった少年の成長を描くドラマ

1970年代と思われるポーランドの田舎町。
父が出張し、友人はバカンスに行った夏、少年は大好きな母と二人きりで過ごすことになる。
しかし楽しい時間もつかの間、母はしばしば家を空けるようになり、少年の心は不安と疑念に埋め尽くされていく。
そんな中、少年は、都会から来た少女と知り合うのだが…

優しく美人でセクシーで大好きな母、親であるだけではなく友人であって恋人のようでもあり、甘えたがりの少年はいつも一緒にいる。
だが家族であっても他人なんだという残酷な事実に、思春期の少年は向き合うことになる。
それは楽園で”性”という禁断の木の実を手に入れる悲劇でしかない。

硝子のテーブルに映る顔、隣室が伺える鏡、窓を叩く小石、遮断機と汽車など、徹底的に映画的な境界線が描かれていく。
すっきりとして小綺麗な室内に効果的に配置された家具や衣装や調度品がいちいちオシャレで、劇中で重要な役割を果たしていく。

そんな豪奢な美術と比べると一家が暮らすアパートは妙に狭く、部屋数が少なく見える。
田舎町だし、もう少し広くてもいいのではないかと思ってしまうが、監督の実体験を反映しているというのだから、こういうものなのだろうか。
夫婦の寝室すらなく、母親の寝床がリビングにあるソファーベッドだなんて、まるで「こわれゆく女」じゃないか。
posted by 井川広太郎 at 19:31| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2019年03月04日

芳華 Youth

『芳華 Youth』(原題 芳華 Youth/2017年/中国/配給 アットエンタテインメント/135分)



監督:フォン・シャオガン
製作:フォン・シャオガン、ワン・チョンジュン、ワン・チョンレイ
原作:ゲリン・ヤン

公式サイト http://www.houka-youth.com/
2019年4月12日より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、 YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次公開


文化大革命期に人民解放軍の文工団という歌劇団に所属した若者たちの青春とその後の人生を描くドラマ

久々にガツンとした文革映画なんてのを期待していたのだが、そんなものは微塵も感じさせないキラキラした青春映画。
正直、その点にはガックシきたが、監督も原作者も実際に文工団に所属していたらしい。
当時を美化しすぎているようにも思えるが、それは現在への不満の表れなのかもしれない。

毛沢東が亡くなったのは、僕が生まれた1976年なので、はるか昔のようでいて割りと最近。
それから中国は急速かつ劇的に変化してきたが、誰もがそれに馴染めているわけではない。
映画の中では、豊かになった現代は拝金主義的すぎて違和感を拭えず、”あの頃”の純真を守り続ける人たちが描かれる。
この映画は中国で大ヒットしたというのだから、同じように感じている人は意外に多いのだろう。
時には吹き出してしまいそうなキラキラした演出も、当時を懐かしみ、そして振り返るための唯一の手段だったのかもしれない。

メインキャストの女優たちが、驚くほどナチュラルで個性的な美女ばかりで眩しく、うっとりさせられる。
何でも、歌って踊れて芝居ができて、さらに”整形していない”女優を選りすぐったのだとか。
あの時代は自然な美が提唱されていたからということらしいが、その辺りにもこの映画の哲学が見え隠れしている。
posted by 井川広太郎 at 22:58| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2019年02月13日

ウトヤ島、7月22日

「ウトヤ島、7月22日」(原題 Utoya 22. juli/2018年/製作国 ノルウェー/配給 東京テアトル/97分)



監督:エリック・ポッペ
製作:フィン・イェンドルム、スタイン・B・クワエ
出演:アンドレア・バーンツェン、エリ・リアノン・ミュラー・オズボーン、ジェニ・スベネビク、アレクサンデル・ホルメン、インゲボルグ・エネス

公式サイトhttp://utoya-0722.com/
2019年3月8日より全国ロードショー


2011年7月22日にノルウェーのウトヤ島で実際に起こった無差別銃乱射事件を映画化。
本編の大半である事件の一部始終を72分間のワンカットで描いている。

率直に言って見ている最中は、そんなに面白くはなかった。
ワンカットという描き方も、大して効果的には思えなかった。

しかし数日経ってからどうだろう、この映画の生々しさ、重さがジワジワと身体にしみ込んで来る。
何かが感覚に直接訴えかけてきて、幾度となく反芻を促す。

実際、この事件についてあまり知らなかった僕も、もはや知らないとは言えない切迫さを共有している。
緊張感漲る「映画体験」と呼ぶべきか、忘れることが出来ない実感を植え付けられた気がする。

鑑賞中は監督のメッセージが強すぎて嫌な感じもしたのだが、それはやはり相当な覚悟と意志を持ってこの映画を撮ったからであろうと今は素直に思える。
名作「ヒトラーに屈しなかった国王」で知られるエリック・ポッペ監督、さすが。
posted by 井川広太郎 at 23:58| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2019年01月29日

ビール・ストリートの恋人たち

『ビール・ストリートの恋人たち』(原題 If Beale Street Could Talk/2018年/アメリカ/配給 ロングライド/119分)



監督:バリー・ジェンキンス
製作:アデル・ロマンスキー、サラ・マーフィ、バリー・ジェンキンス、デデ・ガードナー
出演:キキ・レイン、ステファン・ジェームス、コールマン・ドミンゴ、テヨナ・パリス、マイケル・ビーチ

公式サイト http://longride.jp/bealestreet/
2月22日(金)全国ロードショー


70年代のアメリカを舞台に、幸せの絶頂の黒人カップルが差別と国家権力によって引き裂かれていく様を描くドラマ

アカデミー賞作品賞受賞『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督最新作で、本年度アカデミー賞最有力候補とのこと。
いや、まあ、これ普通に獲るんじゃなかろうか、アカデミー賞とか良く知らないのだけれど。ここぞってとこで良い者でユダヤ人とか出て来るし。

あまりにも見事なファーストカットの美しさに、うっとりさせられる。
ただただ歩く二人を、踊るように祝福するかのように捉える流暢なカメラワークが素晴らしい。

実際、全編を通して圧巻の映像美。
極彩色の衣装や美術に陰影のあるライティング、絶妙なタイミングで入って来る逆光など、隅々まで計算され尽くされ、細やかな所まで緻密に構築されている。
そして演技も素晴らしく物語も面白い、のだが、ちょっと長い。

メロドラマやミュージカルになりそうでならないリアルな話なんだけど、テーマの重さに比べて抑揚が今ひとつ足りない。
主人公二人がいい人過ぎて、一方的に被害者過ぎてイマイチ葛藤が見えないからか。
特に会話のシーンは助長に思え、これで完成尺が90分だったら、と思った。

彼氏役のステファン・ジェームスは幸福の絶頂では生命力溢れる肉体を披露し、壮絶な環境でボロボロになった悲壮な顔まで生々しく演じ切っている。
そしてヒロインのキキ・レインは、とんでもなくチャーミングで可愛らしく、映画の中で成長していく彼女と共に人生という名の時間の旅をしているような夢心地にさせてくれる。
posted by 井川広太郎 at 22:02| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2019年01月17日

ナポリの隣人

ナポリの隣人(原題 La tenerezza/2017年/イタリア/配給 ザジフィルムズ/108分)



監督:ジャンニ・アメリオ
原作:ロレンツォ・マローネ
原案:ジャンニ・アメリオ、アルベルト・タラッリョ、キアラ・バレリオ
出演:レナート・カルペンティエリ、ジョバンナ・メッツォジョルノ、エリオ・ジェルマーノ、グレタ・スカッキ、ミカエラ・ラマゾッティ

公式サイト http://www.zaziefilms.com/napoli/
2019/2/9(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー


家族と溝がある老人が、隣に住む謎めいた若い家族と交流を深めていくミステリアスな人間ドラマ

妻を失ってからは、娘や息子ともまともにコミュニケーションが取れなくなった頑固な老人。
一人で暮らす彼の隣に、幼い娘と息子を育てる若い夫婦が引っ越してくる。
ひょんなことから交流が始まり、次第に老人と一家は擬似家族的な繋がりが芽生えていくのだが…

シンプルな人間ドラマかと思いきや、隣人の闇が露わになると一気にミステリーの様相を帯びて来る。
絶望と不寛容の現代的な家族像は、ハネケの「ハッピーエンド」に通じるものもある。
でもジャンニ・アメリオだけにやっぱりとってもウェット。
ラストはちょっとアントニオーニ。
posted by 井川広太郎 at 23:58| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年12月28日

迫り来る嵐

『迫り来る嵐』(原題 暴雪将至 The Looming Storm/2017年/中国/配給 アットエンタテインメント/119分)



監督:ドン・ユエ
製作:シアオ・チエンツァオ
製作総指揮:ルオ・イエン
出演:ドアン・イーホン、ジャン・イーイェン、トゥ・ユアン、チェン・ウェイ、チェン・チュウイー

公式サイト http://semarikuru.com/
2019/1/5新宿武蔵野館・ヒューマントラストシネマ有楽町にて、全国順次公開


工場の保安課の男が、近隣で起きた殺人事件の捜査にのめり込んでいくサスペンス

中国版「殺人の追憶」とでも呼ぶべきか。
犯罪映画の様相を伴いながら、しかし主人公は刑事でも探偵でもない、ただの「名探偵気取りの一般人」という設定が効いている。

探偵気取りの主人公の姿はそのまま、推理映画に熱中する我々観客にも重なり、殺人事件はお手のものとばかりに慣れた手つきで捜査を進めていく。

だがしかし、掴みかけては消えていく犯人の影、巨大な工場の闇、本物の刑事たちの思惑、翻弄される運命の女と謎も増えていく。
進めば進むほど真相に近づくどころか、むしろ霧深い迷いの森に足を踏み入れたかのように現実と非現実の境すら曖昧な混沌とした状況になってくる。
おかしい、いつもとはなんか違う。

手がかりも、証拠も、重要参考人も、犯人も、全てが嘘か幻のように思えてくる。
ちょっと待て、よくよく考えてみればそんな設定、誰が決めたのであったか。

何を追っていたのか、何を見ていたのか、そもそも誰がなんだったのか。
先入観で勝手に他の事件と同じだと思い込み、いつもの謎解きをすれば解決すると決めつけていた。

騙されたのではない、都合の良い嘘を作り出していたのは、分かりやすい答えを求める自分自身だったのだ。
ハッと我に返ると、そこは何もない森の中で、握りしめていたコインはただの葉っぱだった。
一体、何だって言うのだ。

1990年代後半の中国という大海の中で、経済発展を伴う社会の激動という巨大な「嵐」を目前に迎え、小舟でそれに立ち向かう矮小な個人の強烈な不安と葛藤が見事に描かれている。
posted by 井川広太郎 at 12:05| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年11月07日

いろとりどりの親子

「いろとりどりの親子」(原題Far from the Tree/2018年/アメリカ/配給ロングライド/93分)



監督:レイチェル・ドレッツィン
製作レイチェル・ドレッツィン、ジャミラ・エフロン、アンドリュー・ソロモン

公式サイトhttp://longride.jp/irotoridori/
2018年11月17日(土)新宿武蔵野館ほか全国順次公開

 
ダウン症、小人症、ゲイ、自閉症などの”周りとは違う”子供を持つ親たちにインタビューしたドキュメンタリー

いまのところ今年一番泣いた映画。
超良かった!

本編にも登場する作家アンドリュー・ソロモンの著作を元にしたドキュメンタリーで、ダウン症、小人症、ゲイ、自閉症などの子を持つ親たちへのインタビューで構成されている。

登場する人が皆、困難はあってもとても明るく前向きで、素晴らしい。
最高の笑顔連発で、見ているだけでこっちも楽しくなってくる。

”周りとは違う”などという、おおよそ暴力的なカテゴライズによって、僕らがどれだけ不理解に陥っているか。
”健常者”であれば幸福なのか、全てがうまくいっているのか、問題は何もないのか、そんな疑問を突きつけられる。

そもそもトラブルのない親子関係なんてあるわけもないし、誰もが上手くいかない悩みも人には言えない苦しみも抱えている。
そこで目を塞がず、痛みやつらさといった困難に向き合い乗り越えたからこそ、実感できる愛があるのだ。

そしてラストに描かれる「親になる瞬間」、こんな感動的なことがあろうか!こんな素晴らしいことを僕らは皆、体験し共有しているのだ!
”幸せ”になるか否かは自分次第なんだと痛感し、清々しい涙を流さずにはいられない。

僕らはみんな違う、だからこそ世界は美しい。
他者を認めるということは、自分自身を受け入れることなのだ。
posted by 井川広太郎 at 12:16| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年10月18日

生きてるだけで、愛。

『生きてるだけで、愛。』(2018年/日本/配給クロックワークス/109分)



監督:関根光才
製作:甲斐真樹、松井智
出演:趣里、菅田将暉、田中哲司、西田尚美、松重豊、石橋静河、織田梨沙、仲里依紗

公式サイト http://ikiai.jp/
11月9日(金)新宿ピカデリーほか公開


躁鬱が激しく社会に適応できないで苦しむ女と、彼女と同居する恋人との奇妙な関係を描くラブストーリー

とてもよかった!
ヒロインがどうしようもないクズなんだけど、突き抜けた明るさや苦悩を吐露する正直さがなんとも愛らしい。
ややもすると不快になりそうなところ、いや実際あまりのダメさにムカつくんだけど、ギリギリのラインで魅力的に感じさせる演技が素晴らしい。

こういう奴、いる!いっぱいいる!たくさん見てきた。
今風に言ってしまえば「メンヘラ」で片付くわけだが、実際にメンヘラと生活するとなると、なかなか大変だ。
それだけに、彼女を見守っているのか付き従っているのか、諦めと無気力の中に屈折した激情が見え隠れする彼氏もリアルで惹きつける。

そんな彼らの周りにもいい人がいて、いい出会いもあり、うっかり安直なドラマに陥りそうな罠がありつつも、ろくに進展しないという勇敢さ。
情には流されない物語の停滞感が主人公たちの悩ましいモヤモヤを表象しているからこそ、その中に潜む煌めきがスパークするラストのシークエンスは、なんとも感動的だ。

ここんとこ、シンプルでディープで”文学的な”恋愛ものの日本映画が多い気がするけど、それはキラキラ映画に対する反動なのだろうか。
それとも単に、草臥れて救いどころがないけど愛おしいこの現実を愛でていたいという、大人たちのカタルシスなのであろうか。
ともあれ、その多くが面白い映画であるから、なんとも嬉しい。

ロケ地が良い。
横浜の下町、朽ちたネオンが輝く大岡川沿いの猥雑で寂れた雰囲気が、生活感と哀愁を遺憾無く映している。
posted by 井川広太郎 at 18:35| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年07月20日

判決、ふたつの希望

『判決、ふたつの希望』(原題 L'insulte/2017年/レバノン・フランス合作/配給 ロングライド/113分)



監督 ジアド・ドゥエイリ
出演 アデル・カラム、カメル・エル・バシャ

公式サイト http://longride.jp/insult/
2018年8月31日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国順次公開


レバノン人とパレスチナ移民との小さな口論がレバノンという国をも揺るがす裁判に発展していくドラマ

面白かった!
社会に対する小さな不満が積み重なったイライラ、思わず口にしてしまう挑発的な言葉が引き金となり、誰にでも起こりうるような隣人とのささやかな諍いが、解決策すら見えぬ移民問題の本質を鋭く突く。

レバノンという国の現状と抱えている問題が、リアルな生活の中にとても分かりやすく描かれている。
一般市民のご近所トラブルが、まるでレバノンという国の縮図のようですらあるから見事としか言いようがない。

ただの喧嘩のはずが民族的な背景を持っていて、当事者たちの尊厳を傷つけているからこそ、お互いに簡単には譲れないし、割り切って考えることなどできず、よせばいいのに裁判になる。

しかし、法の下の平等が常にフェアというわけもなく、国の判断や大人の事情、国際情勢的な軋轢もあって、ことは簡単に済まないし、誰もが納得できるとは限らない。

周囲を巻き込み引くに引けなくなったところで、さらに、その純粋な思いを自分たちの主張や利害のために利用しようとする弁護士やメディアたちが焚き付けてくる。
そうして雪だるま式に話が大きくなっていき、国をも揺るがす事案となり、もはや本人たちの意思とは関係なく複雑化し収拾がつかなくなっていく。

登場人物が全員ガンコでクズというか、それぞれがそれぞれの思いを持った人間味溢れる愛すべき人たちばかりで、なかなか上手くはいかない世の中の面白さと素晴らしさを感じずにはいられない。
そしてさらにもう一段、登場人物の一人が隠し持つヨルダンの歴史に絡んだ深い動機付けが描かれ、のっぴきならない問題の根深さを伺わせドラマとしては圧倒的に重みを加え、ますます放ってはおけない気持ちにさせられる。

どこの国でも起こり得て、誰にでも共感できるシンプルな物語になっている点が素晴らしい。
何より、当事者たちの思いとは別の次元で裁判が続くという構図がなんとも皮肉で、それこそ世界情勢そのもののようにも感じられる。
それだけに映画的に見事なエンディングには素直に感動しつつ、綺麗すぎてなんだかちょっぴり物足りなさも感じてしまった。
posted by 井川広太郎 at 10:33| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年07月19日

バッド・ジーニアス 危険な天才たち

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(英題Bad Genius/2017年/タイ/配給 マクザム、ザジフィルムズ/130分)



監督 ナタウット・プーンピリヤ
出演 チュティモン・ジョンジャルーンスックジン、チャーノン・サンティナトーンクン、イッサヤー・ホースワン、ティーラドン・スパパンピンヨー、タネート・ワラークンヌクロ

公式サイト http://maxam.jp/badgenius/
9.22(土)新宿武蔵野館ほか全国順次公開


タイの高校生が金儲けのために組織的なカンニングという犯罪に手を染めていくクライムサスペンス

カンニングを主題にしていると知って、やられた!と思った
狡猾な先生たちの目を盗みどうやってカンニングを成功させるか競う学園もの!なんてのを期待して観に行ったら全く違う映画であった

大人たちはとにかくボンクラで、高校生たちは無邪気で世間知らず、つまりは登場人物が全員バカ。天才なんじゃねーのかよ!
しかも、リスクを冒して罪を繰り返す動機がどんどん曖昧になっていくのに、次々に周囲を巻き込み、多くの人の人生をメチャメチャに壊していくという鬱展開
想像していたのとちょっと違うかな…

学歴偏重社会に対するブラックコメディなのかもなんだけど、その割にはいい人キャラや感動的なメッセージも用意されていて、ちょっとスタンスがよく分からない
クライムサスペンスなら罪悪感なんてあんまない方が面白いんだけど、そこはカンニングというテーマゆえのジレンマか

せめて金以外のモチベーションが明確であれば違っていたと思うが、とにもかくにも登場人物たちが美女イケメン揃いで眼福
主演の子は個性的なスーパーモデルなルックスだし、その親友はスーパーアイドルな可愛さ、メインの男子高校生二人もイケメンで、彼らを眺めているだけでも楽しめる
冒頭でヒロイン2人が出会う図書館、退屈な学校に潜む輝きを上手く捉えた映画的なシーンで綺麗だった
posted by 井川広太郎 at 21:58| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年07月05日

チャーチル ノルマンディーの決断

『チャーチル ノルマンディーの決断』(原題 Churchill/2017年/イギリス/配給 彩プロ/105分)



監督:ジョナサン・テプリツキー
製作:クローディア・ブリュームフーバー、ピアース・テンペスト
製作総指揮:ティム・ハスラム、ヒューゴ・グランバー
出演:ブライアン・コックス、ミランダ・リチャードソン、ジョン・スラッテリー、エラ・パーネル、ジェームズ・ピュアフォイ

公式サイト http://churchillnormandy.ayapro.ne.jp/
2018年8月18日より、有楽町スバル座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開!


イギリス首相チャーチルがノルマンディ上陸作戦を前に葛藤する姿を描く人間ドラマ

チャーチルがノルマンディ上陸作戦に反対していたとは知らなかった!
ので、冒頭でこの映画がノルマンディ上陸作戦を扱っていると知り、ははあ、チャーチルが作戦決行の判断をするまでの物語か!と思ったら、いきなり作戦に異を唱えやがる。
つーことは、そこから作戦を修正するのかと思ってたら、そんなシーンは全くなく、ノルマンディ上陸作戦が嫌で仕方ないチャーチルがグズって酒と葉巻に溺れて鬱で寝込むだけの話であった。

本作はチャーチルの知られざる姿と人間味溢れる側面を描いている、にしても当時の連合国遠征軍最高司令官アイゼンハワーに全権を握られ何も出来ず、個人的な感情で作戦にケチをつけるだけという、トップに立つ人間としてはあまりにもダメすぎる姿は衝撃的。
作戦室にまで出入りする妻に離婚をチラつかされて動揺し、危機的状況なのに飲んではグズるを繰り返し、全く仕事もしないですぐに寝てしまい、戦時中の一国の首相がこれでいいのかと目を疑う。
それだけにチャーチルの演説のシーンはグッと来るものがあり、まあ政治ってこういうことなのかもなーって。

チャーチルの伝記映画と言えば、ついこの間、ゲイリー・オールドマン主演の映画もあったし、ちょっと前には「ダンケルク」もあった。
なぜチャーチルものが続々と映画化されるのか不思議で仕方ないが、どれも描いている時期は微妙にズレている。

なので、むしろ時代順に観ていって、チャーチルの描き方などを比較するのも面白いかもしれない。
時間軸で観るチャーチル映画特集上映、是非やって欲しい。
posted by 井川広太郎 at 09:23| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年07月04日

2重螺旋の恋人

「2重螺旋の恋人」(原題 L'amant double/2017年/フランス/配給 キノフィルムズ/107分)



監督 フランソワ・オゾン
製作 エリック・アルトメイヤー、ニコラ・アルトメイヤー
出演 マリーヌ・バクト、ジェレミー・レニエ、ジャクリーン・ビセット、ミリアム・ボワイエ、ドミニク・レイモン

公式サイト https://www.nijurasen-koibito.com/
8月4日から東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で公開


精神科医に恋した女が、彼に瓜二つの別の精神科医に出会い惹かれていくエログロサスペンス

実は初めてフランソワオゾンを観たんだけど、なんだか女子って大変なんだね
いやでもまあ痩せすぎは良くない、痩せすぎが良くないんだと思う、ほんと
美術館の監視員のバイトというアイデアには激しく嫉妬!
posted by 井川広太郎 at 20:34| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年06月03日

ヒトラーを欺いた黄色い星

『ヒトラーを欺いた黄色い星』(原題 Die Unsichtbaren/2017年/ドイツ/配給アルバトロス・フィルム/110分)



監督 クラウス・レーフレ
製作 クラウス・レーフレ、フランク・エバーズ
出演 マックス・マウフ、アリス・ドワイヤー、ルビー・O・フィーほか

公式サイト http://hittler-kiiroihoshi.com/
2018年7月28日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開


ナチスドイツ時代に迫害を逃れベルリンに潜伏していたユダヤ人たちの運命を証言をもとに描く

「ホロコーストもの」はいまも数多く公開されているが、この映画は切り口も新しく面白かった。
タイトルからは内容を想像しにくいが、原題の「Die Unsichtbaren」は見に見えないとか、透明人間とかそういう意味らしい。

様々な手段を駆使してナチスの追っ手から逃れる四人のユダヤ人のインタビュー映像、当時のニュース映像、そして再現ドラマによって構成されている。
四人を描くってだけで多いのに、さらにインタビューの声と再現ドラマのモノローグが混在し、都合8人の声によって進行されるので、最初はちょっと分かりづらい。
だけどまあ見ていると次第に慣れてきて、複数の視点を持つからこそ刻々と変化していく当時の状況がリアリティと緊張感をもって伝わってくる。

若者たちが知恵と勇気と運を味方にサバイブしていくサスペンスとしても面白いし、リスクを冒してユダヤ人を助けたドイツ人が大勢いたという事実も感動的。
当初は無関係の4人をつなぐ人物も登場し、そういった人間関係から地場を感じさせることで、この映画そのものが当時のベルリンという街を描いている側面もあり興味深い。
posted by 井川広太郎 at 10:10| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年05月08日

ガチ星

『ガチ星』(2017/日本/配給マグネタイズ/106分)



監督 江口カン
プロデューサー 森川幸治、瀬戸島正治
出演 安部賢一/福山翔大/林田麻里/船崎良/森崎健吾/伊藤公一/吉澤尚吾/西原誠吾/博多華丸/モロ師岡

公式サイトhttp://gachiboshi.jp/
5月26日(土)より新宿K's cinemaほか全国順次公開


挫折した元プロ野球選手の男が、酒に溺れギャンブルにはまり離婚を経た後、再起を賭けて競輪選手を目指すドラマ

テレビドラマとして放映されたものを再編集、追撮して映画化したとのこと。

そもそも主人公が四十の冴えないおっさんという時点で沁みるが、その上で飲む打つ買う全てにおいてハイレベルな真性クズ。
それを余計な台詞を排したカッコイイ映像で表現しつつ、分かりやすくテンポのいい圧倒的な演出力で一気に魅せる前半はもう、日本版「レスラー」になるのではないかと大興奮。

ストーリーそのものは、王道なスポ根なのだが、なにより主人公のクズ描写がすごい。
プロ野球選手なのにベンチ裏でタバコを吸っているし、パチンコは家族より優先するほど完全な依存症だし、競輪選手になってもルール違反をガンガンしているし、忖度ない表現にはドキッとさせられる。

だけど異様にモテる、そこも良く分かる。だって人間らしく、人間臭いんだもの。
不器用でも、もがいて必死に生きる人間をリアルに描く前半は泣けるし笑えるし身につまされるし、人間の悪いとこも良いとこも見えてきて素晴らしく面白い。
ただ、とてもいいキャラであった競輪学校の鬼教官が秘めた親心なんてのを吐露してからは転調してしまい、僕は乗れなかった。

ともあれ前半のソリッドな演出には本当に驚かされたので、それだけでも間違いなく見応えある。
こないだ某映画館にいたら、横にいた若いおしゃれカップルがガチ星のチラシを手に「この監督、CM出身で面白いから見たいんだよー」って話してた。
なうなヤングには既に知れ渡っているらしく驚いたが、そんな彼らがクズな四十男の生き様をどう見るのか、それもすごく楽しみ。
posted by 井川広太郎 at 21:30| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年05月02日

妻よ薔薇のように 家族はつらいよV

『妻よ薔薇のように 家族はつらいよV』(2018年/日本/配給 松竹/123分)



監督 山田洋次
プロデューサー 深澤宏
出演 橋爪功、吉行和子、西村まさ彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優

公式サイト http://kazoku-tsuraiyo.jp/
2018年5月25日(金)全国公開


三世代世帯を支える主婦が、とあるトラブルから日頃の不満が爆発し家出をしてしまうホームドラマ

とっても面白かった!
誰もが心当たりのあるシンプルな話で素晴らしい俳優陣の演技が堪能でき、必要以上に押し付けがましくなく、それでいて巧みな演出についつい乗せられてしまい、このシリーズは初めて観たがまったく安心して楽しめる映画だった。
家族あるある満載で、試写会場どっかんどっかんウケてた。

鑑賞後、隣の席の人たちが「あの家族に娘がいれば」とか「愚痴を吐き出す場は必要だから」とか早速、家族や家庭について話し合っていて、まっこと映画の理想だなあと。

家族に不満がある主婦はもちろん、家庭について思うことがある人や、これから新たな家族を迎える人も、身近な人と見に行って鑑賞後にあーだこーだ話し合ったら一層、面白い作品だと思う。

松竹にはこのホームドラマという世界に誇れる伝家の宝刀があるのだから、是非とも今後も続けて欲しいし、こういったハイレベルで素晴らしいホームドラマを撮れる若い監督をなんとか育成して欲しい。
posted by 井川広太郎 at 21:03| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年05月01日

死の谷間

『死の谷間』(原題 Z for Zachariah/2015年/アイスランド・スイス・アメリカ合作/配給ハーク/98分)



監督 クレイグ・ゾベル
製作 シガージョン・サイバッツォン、ソール・シグルヨンソン、スクーリ・Fr・マルムクィスト、ソフィア・リン
出演 マーゴット・ロビー、キウェテル・イジョフォー、クリス・パイン

公式サイト http://hark3.com/shinotanima/
6月23日(土)新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー


核戦争後と思しき荒廃した世界で、放射能の影響を免れた谷間で孤独に生きる女の元に二人の男が訪れるサスペンス

どうとでも面白く出来そうな設定なので期待に胸を膨らませ見たのだが、冒頭の30分ほどは裏切らない面白さ。
自然豊かな谷間で孤独に暮らす女、飼い犬だけが友達、原始的な生活の中でも理性を維持する知性、そこに外の放射能に犯された世界から誰かが来るとしたら…確かにこんな感じなのかもしれないと想像力を掻き立てられる。

それ以降は、え、こういう展開するんだ…と些か拍子抜けしてしまったのだが、ロウソクはとんでもなく蓄えあるのかとか、このままではガソリン足りなくなるのではとか、トイレは保つのかとか、万が一似たような状況に陥った際にサバイバルするシミュレーションがいろいろ出来そう。

主演のマーゴット・ロビーはハーレイ・クイン役の人で、いまはトーニャ・ハーディング役の映画が公開中。
大人しい美女役よりも、ワイルドな女の方がハマる気がする。
そういえばハーレイ・クインのスピンオフ映画を計画中とかなんだっけ。
posted by 井川広太郎 at 22:58| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年04月24日

フジコ・ヘミングの時間

『フジコ・ヘミングの時間』(2018年/日本/配給 日活/115分)



監督 小松莊一良
出演 フジコ・ヘミング

公式サイト http://fuzjko-movie.com/
2018年6月16日(土)より、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー


60歳を過ぎてから世界的な人気を得たピアニストのフジコ・ヘミングに密着したドキュメンタリー

一年のうちの多くの時間を各国での演奏ツアーに費やすためパリを始め世界中に家があり、物に溢れた部屋の中で多数の動物を養いながら、毎日四時間の練習を欠かさない孤独な生活を送っているという。

戦後間もない頃に本人が描いた絵日記の素晴らしさには驚かされ、それを軸に持ってくる構成は面白い。
時折見せる口を歪めるような表情とか、とっておきの皮肉でも飛び出してきそうでワクワクするんだけど、そのあたりももっと掘り下げて欲しかった。

あと、若い指揮者に恋していて「あなたみたいに若ければって言ったんだけど… 二、三年でも楽しく過ごせれば、それでいいじゃない」みたいなことを語るシーンが印象的。
恋多き女感とか、酸いも甘いも噛み分けた感とか、人生を謳歌するためのテクニック感が滲み出ていて、とってもいい話なだけにもっと突っ込んで欲しかった。

ともあれ、never too lateのテーマはグッと来る。
ピアノって本当に素晴らしい楽器だなあ。
僕もまたピアノを習ってみようかしら、遅すぎることなんてきっとないのだから。
posted by 井川広太郎 at 12:41| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年04月22日

四月の永い夢

『四月の永い夢』(2017年/配給ギャガ・プラス/93分)



監督:中川龍太郎
製作総指揮:石川俊一郎, 木ノ内輝
出演:朝倉あき 三浦貴大 川崎ゆり子 高橋由美子 青柳文子 志賀廣太郎 高橋惠子

公式サイト http://tokyonewcinema.com/works/summer-blooms/
5月12日(土) 新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー


いまは亡き恋人からの手紙を受け取ったことで、揺れる女の心情を繊細に描く

この映画の舞台は国立市。僕にとっては学生時代を過ごした特別に思い入れのある街なので最初、この映画の構想を監督の中川君から聞いた時には「国立の映画を撮るなんて君には無理だ」と生意気なことを言ってしまった。
ところがどうだろう、完成した作品は見事な国立映画であった。脱帽である。

国立には良くも悪くも閉じた雰囲気があって、外界から切り離され守られているような独特の安心感があり、この映画はそういった国立の空気感を見事に捉えつつ、物語に昇華している。
出て行けそうで出て行けない、例えるなら、まだ冷える春の朝に布団に包まってグズっているような感じか。
そんな温もりに甘えてしまうようなモラトリアムは、誰にでも心当たりがあるはずだ。

そういった社会性に敏感なせいか中川君は、公衆浴場を愛し劇中でも度々使うが、本作ではさらにラジオを巧みに使っている。
ラジオは仕事や家事や移動中など、どこかで何かしながらでも聞くことができるためか聴取者それぞれの生活に馴染んでいて、生放送かつ葉書を紹介したりとインタラクティブな面もあって一体感や共有感が高い。
メジャーなものからマイナーなものまで様々な曲が流れるが、どんな曲もいまどこかで誰かが一緒に聴いているという安心感があるのだ。

であるから、ラジオを愛するヒロインが夜道で、ポータブルオーディオプレイヤーのイヤホンを耳に刺し、密かに音源で音楽を聴いて悦にいるというシーンは、なんとも甘美な背徳感に満ちている。
この曲をいま聴いているのは世界で自分独りであるという優越感、この曲はわたしだけのものなのだという独占欲、他の何も耳には入らないという自己満足、それらが禁を犯した罰でもあるかのように過去の過ちを思い出させるというのは、なんとも象徴的である。

楽しんで良いのか幸せになって良いのか、愚問のようなしかし誠実な戸惑いは、その罪悪感に蝕まれた告白に耳を傾けてくれる人を必要としていた。
ラジオのDJに懺悔の葉書を書いたのも、きっと同じ気持ちであったのだ。

主演の朝倉あきがなんとも見事。
鮮やかな情景を纏いながら瑞々しい感情を湛える映画女優を、心地よい移動撮影と躍動感にあふれた切り返しで存分に捉えた名作だ。
posted by 井川広太郎 at 12:25| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年04月16日

名もなき野良犬の輪舞

『名もなき野良犬の輪舞』(原題 The Merciless/2017年/韓国/配給 ツイン/120分)



監督 ビョン・ソンヒョン
出演 ソル・ギョング、イム・シワン、チョン・ヘジン、キム・ヒウォン、イ・ギョンヨン、ホ・ジュノ

公式サイト http://norainu-movie.com/
2018年5月5日(土)新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー


組織の大物と向こう見ずな若者が刑務所で出会い、手を組みながらも疑念と友情との狭間で揺れるクライムドラマ

「インファナル・アフェア」か「男たちの挽歌」あるいはジョニー・トーのノワールを彷彿とさせるが、香港映画のような裏切りの裏切りというドライなテーマも、韓国映画だとウェットな質感を帯びる。

カンヌ国際映画祭で絶賛され韓国国内の映画賞も多数受賞しているとのこと。
二人の主人公の葛藤と意外な展開で魅せようという意図は分かりつつも、そのために他の登場人物たちがちょっとご都合すぎる気がして、僕には少し難解だった。

とはいえ主演のソル・ギョングはもちろん、ハンパないチンピラ感のキム・ヒウォンや、全てが脂ギッシュなイ・ギョンヨン、まるで宇崎竜童なホ・ジュノなどアクも顔も濃い面々が次々に画面に溢れてもうお腹はいっぱい。

そんな中、紅一点のチョン・へジンが綺麗で、登場するたびに癒しになったー。
そういえば美しいマジックアワーのシーン、突っ立って台詞を言い合うだけで単調になりそうなところ、陽落ちしちゃうよ!という緊張感が漲ってハラハラドキドキとても良かった。
posted by 井川広太郎 at 23:15| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年04月12日

29歳問題

『29歳問題』(原題 29+1/2016年/香港/配給 ザジフィルムズ、ポリゴンマジック/111分)



監督 キーレン・パン
挿入歌 レスリー・チャン、レオン・ライ、ビヨンド
出演 クリッシー・チャウ、ジョイス・チェン、ベビージョン・チョイ、ベン・ヨン、ジャン・ラム、エレイン・チン、エリック・コット

公式サイト http://29saimondai.com/
5月19日(土)、ロードショー!YEBISU GARDEN CINEMA他


30歳を目前に迎えたワーカホリックな女が、全く正反対に自由奔放な人生を送ってきた同年齢の女と出会うドラマ

女優キーレン・パンがライフワークとして演じてきた舞台を、自ら監督し映画化したものらしい。
そんなわけで舞台の初演の頃の2005年の香港が舞台のようで、香港の俳優や歌手といったスターのネタがてんこ盛りになっている。

レオン・ライのモノマネしたり、ビヨンドの歌が出てきたり、懐かしかったり笑えたり。なにより、レスリー・チャンがヒロインのアイドルというのは、どうにもこうにも胸熱。
なんだけど、レスリー主演という「日落巴里」というドラマを見たことないので、そのドラマに憧れてヒロインがどうしてもパリに行きたがるというのが全く理解できない。
それが大きなドラマツルギーになっているだけに、分からないことが残念。

初めの方に出てくるバスのシーンが王家衛の「天使の涙」(95)のパロディとは分かったんだけど、それ以外はシーンとしてのオマージュはどこにも発見できなかった。
他にも香港映画に詳しい人ならクスリとくる仕掛けが色々と施されているのかもしれない。

最近は「あの頃」、つまり80~90年代の香港スターを扱った映画が多いと言われる。
当時若者だったファンたちが大人になって懐かしむようになり、あるいは制作者となっての第一線にいるからかもしれない。
台湾映画「私の少女時代」(15)なんかはアンディ・ラウの存在そのものをネタにしつつ、なおかつアンディを知らない人にもちゃんと分かるように描いていて、スターの有効活用ともいうべき映画的なダイナミズムに感動した。
posted by 井川広太郎 at 09:32| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする