2016年07月08日

カンパイ!世界が恋する日本酒

『カンパイ!世界が恋する日本酒』(Kampai! For the Love of Sake/2015年/アメリカ・日本合作/配給 シンカ/95分)



監督:小西未来
エグゼクティブプロデューサー:駒井尚文、スージュン、マイケル・J・ワーナー
出演:ジョン・ゴントナー、フィリップ・ハーパー、久慈浩介

公式サイト http://kampaimovie.com/
2016年7月9日シアター・イメージフォーラム、他全国順次公開!


日本酒に魅せられた国も経歴も違う三人の男たちの姿を描くドキュメンタリー

面白かった!
日本酒は好きだけどなにぶん無知なもんで、種類とか作り方とか歴史とか知識的な欲求も満たしてくれるのかと楽しみにしていたのだが、そのあたりは全く期待外れであった。
iMovieの既成曲がBGMとして執拗に繰り返されるのが集中を妨げるのか、特に序盤は退屈に感じた。
取材対象の三人の男は素晴らしく個性的だが、説明的でさほど深く迫るわけでもないので次第に飽きてくる。
にも関わらず、この作品が面白いのは、ひとえに日本酒という、とてつもなく魅力的な酒の魔力に尽きると思う。

イギリス出身で日本酒作りにのめり込む杜氏、アメリカ出身で日本酒の伝道者と呼ばれるライター、そして酒屋の五代目として生まれた岩手の蔵元という、三人の男の狂気にすら似た、人生を賭してストイックに酔い痴れる生き様が、日本酒の止めどない魅力を体現している。
「ここまで彼らを惑わす日本酒の魅力とは一体何なのであろうか」と、観ているこちらまで引き込まれていく。

日本酒は香り豊かで口の中に入れた瞬間に様々な風味が爆発し、さらに複雑な香気と喩え難い口当たりが怒涛のごとく広がり、そしてそれが腑に落ちるまで幕が閉じない劇場かのように続き、つまりは本当に美味く、温度や器によって常に変化し同じ瞬間など二度ないかのような豊かな表情を見せてくれ、土地や風土に根ざすがゆえ毎年違い数え切れないほどの種類を楽しめる。
というようなありふれて陳腐な言葉では遥かに足らず、少なくとも三人の男を惑わし、狂わし、鬼にするには事足りない。
これは由々しき事態であり、一つ、酒でも酌み交わしながら共に想いを巡らしたい案件なのである。
そんなわけで、この映画を観た後には是非とも一献、酔い痴れたい。乾杯!
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2016年07月02日

暗殺

『暗殺』(Assassination/2015年/韓国/配給ハーク/139分)



監督:チェ・ドンフン
製作:アン・スヒョン、チェ・ドンフン
出演:チョン・ジヒョン、イ・ジョンジェ、ハ・ジョンウ、チョ・ジヌン、チェ・ドクムン

公式サイト http://www.ansatsu.info/
7月16日(土) シネマート新宿他にて全国順次ロードショー!


日本の植民地支配からの独立を目指し暗躍する韓国のレジスタンス達の愛憎を描くアクションサスペンス巨編

悪い日本兵ももちろん登場するのだけれど、それよりもレジスタンス内の裏切り、恨みなどが主題として延々と描かれる、むしろ内部抗争的な話であった。
韓国では1270万人を動員し、韓国映画歴代TOP10入りの大ヒットを記録したとのこと。
なんだかチョン・ジヒョンを久しぶりに見た気がしたが、元気そうで何より。
posted by 井川広太郎 at 11:56| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2016年05月30日

二ツ星の料理人

『二ツ星の料理人』(原題:Burnt/2015年/アメリカ/配給:KADOKAWA/101分)



監督:ジョン・ウェルズ
製作:ステイシー・シェア、アーウィン・ストフ、ジョン・ウェルズ
共同製作:キャロライン・ヒューイット
出演:ブラッドリー・クーパー、ユマ・サーマン、エマ・トンプソン、シエナ・ミラー、オマール・シー

公式サイト http://futatsuboshi-chef.jp/
6月11日(土)より 角川シネマ有楽町 , 新宿ピカデリー , 渋谷シネパレス ...他 全国ロードショー


腕前は天才的だがトラブルの絶えないシェフが、三ツ星を獲得するために再起を図るレストラン・エンターテイメント。

最高!泣いた!めちゃくちゃ面白かった!!
早々に台詞で「『七人の侍』は最高の映画だ」とか言ってしまうから、こちらもブルってしまうのだが、その果敢な宣誓に恥じぬ、素晴らしい映画であった。

料理の腕前は折り紙付きで、知識も経験も十分!
とはいえ厨房はなによりチームワークが大切なので、性格にクセがある彼はレストランを経営するたびに失敗してしまう。
パリで大きな失敗をしてからアメリカでみそぎを終え、再起をかけてロンドンで開店の準備を始める。

まずは仲間を集めていくのだが、その過程がまるで七人の侍。
「厨房は戦場だ!」と啖呵をきって個性的なメンバーを一人ずつ口説いていくのだが、その中で主人公のシェフの過去や人柄も見えて来る。
そして紆余曲折経てオープンしたレストランの厨房のシーンが圧巻。
まさに戦場かのように、組織化された大勢が細かく分担されたそれぞれの仕事を激しくかつ緻密に入り乱れながらこなしていく。
怒声が響き料理人たちが走り回る厨房の描写が素晴らしく、まるで映画の現場のようですらある。

個人の力とチームワークとしての組織力が同時に要求される様子は、まるで映画の現場のようであり、オーケストラのようであり、会社のようであり、サッカーのようであり、家族のようである。
そこに生きる人々への愛情がたっぷり注がれたシーンは見るも感動的で、そう、この映画は厨房を描きつつ、監督の深い映画愛に裏打ちされた作品なのだ。

そして、出て来る料理がとにかく全部美味しそう!
是非とも空腹で見るべきだし、鑑賞時には垂涎に備えて前掛けの着用をお勧めするし、劇場の後は最寄りのレストランに直行すべきなのである。

成長物語、恋愛、親子関係、しがらみや葛藤、ライバルとの友情と堂々と展開する王道のストーリーのど真ん中を深い映画愛が貫き、監督のありったけの思いがこもったとても重厚な映画である。
そしてラストで三ツ星を目指していたはずの主人公が辿り着くささやかな境地に、本当の「勝ち」とは何なのか、まるで七人の侍を向こう側から見るような爽快感がある。
posted by 井川広太郎 at 09:50| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2016年05月04日

ダーク・プレイス

『ダーク・プレイス』(DARK PLACES/2015年/イギリス、フランス、アメリカ/配給:ファントム・フィルム)



監督・脚本: ジル・パケ=ブランネール
原作: ギリアン・フリン(『ゴーン・ガール』)
出演:シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、クロエ・グレース・モレッツ

公式サイト http://dark-movie.jp/
6月より、TOHOシネマズみゆき座ほかにて全国公開


28年前に起きた一家惨殺事件の生存者の女性が、トラウマに苦しみながらも事件の真相に迫るミステリー。

面白かった!

メディアに注目された殺人事件の唯一の生存者、その彼女はとんでもなくクズな大人になっていたというセットアップからして堪らない。
かよわい被害者として同情を集めたのは遥か昔、事件の”当事者”としてのトラウマから誰も信用できず、義援金などに頼って生きているうちに経済的にも自立できていないロクデナシになっていましたとさ、という人物造形が秀逸。

そして、次から次に出てくる事件と彼女を取り巻く人々も、みんな揃いも揃ってどうしようもないクズたちなのだが、そんなクズたちが、少しはマシに生きるために自らのトラウマに立ち向かい、事件の真相を探っていく。
弱い人たちのほんの少しの勇気が次第につながり広がっていく過程が素直に感動的。

見方を変えれば、全員があの事件によって28年経っても消えない傷を心と体に負っているとも言える。
犯罪は法とか罪とかの問題だけではなく、加害者、被害者、そして周りの多くの人たちを傷つけるものなのだと痛感する。

かといって僕らはどうしても、過ちを犯してしまう。
無邪気な子供たちの残酷さや、間抜けな大人たちの必死さが、無自覚な悪意として他人を傷つけてしまう様子が、とてもよく出ていて、見ていて辛い。
聖人君子などいるわけもなく、誰もが心当たることがあるはずで、そういった痛みの記憶がズキズキと疼く。
みんなそれぞれが懸命で、そして等しく愚かだ。
だとしたら、僕たちはどうしたら寛容になれるのか。

「黄色い馬」という小さな疑問が全く予想だにしない、しかし素晴らしく映画的に昇華される瞬間は、衝撃的な事件の後の28年間という途方もない時間を生き延びた彼女へのささやかな祝福のようでいて美しい。

ミステリーとしては辻褄が合わないところやよく分からないところとかあるにはあるんだけど、謎解きではなく、愛と家族をめぐる話であることがとても良かった。
未解決事件や不可思議な事件の真相は、全てが愛の問題なのではないかとすら思えて来る。
posted by 井川広太郎 at 11:02| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2016年04月06日

ノーマ、世界を変える料理

『ノーマ、世界を変える料理』(原題 Noma: My Perfect Storm/2015年/イギリス/配給ロングライド/99分)



監督:ピエール・デュシャン
製作:エタ・デュシャン
出演:レネ・レゼピ

公式サイト http://noma-movie.com/
4月29日(金・祝)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー


デンマークにある北欧の食材を活かしたメニューで有名な”世界一のレストラン”「ノーマ」のオーナーシェフを追ったドキュメンタリー。

いま流行りのいわゆる”オサレ・ドキュメンタリー”で、GoPro的なウェアラブルカメラを多用し、お約束のドローンも出てくるし、そういった映像を使ったモンタージュシークエンスをバンバン挟んでくるし、最新かつ安価な機材を活かした”オサレ”なテクニックは今後ますます広まっていくのだろうなあなどと思っていた。

だが、波乱万丈ではあってもほとんどオーナーシェフであるレネ・レゼピ側の視点で描かれていて、また音声や映像をバラバラにしてから再構成しているので重みがなく、見た目は洒脱ではあるけどあまりコクはない。
劇中では昆布で出汁をとるという話があるのだけれど。

そのせいか次から次へと高級メニューが出てくるのだが、なぜか、どれも、いまいちピンとこない。
そもそも俺は決してグルメではないので、この映画を美食家の人たちならどう観るのか、むしろ気になるところ。

しかし、そんな俺から見てもノーマで使っている食器はなかなか面白くて、アジアっぽい陶磁器や木の器なんかも登場する。
ひょっとして特に日本の影響を大きく受けているのかなあなどと想像していたら、ノーマの厨房では「umami(旨味)」とか「dashi(出汁)」とか英語で言ってて、さもありなん。

あと、ノーマでは肉類のメニューがほとんどないのが、とても気になった。
食材は基本的に北欧(スカンジナビアと言ってた気がする)のものが望ましいというのがノーマのコンセプトとのこと。
魚やウニや卵料理は食べるようだし、地元の森で採れた野草やキノコとか、道端に咲いてるバラとか生きてるアリとか他では見向きもしないようなものは出てくるんだけど、皿に乗るのはほとんどが野菜。
肉類をあまりメニューとして出さないのは、北欧では地産としてはあまり食べないからなのだろうか。
北欧料理の店をオープンすると言ったら「クジラの脂身レストラン」とか「アザラシ野郎」とか馬鹿にされたという話が出てくるので、そういうことなのかしら。
宗教の話は若干出てくるけど、そういう影響ではなさそうだし、よく分からなかった。

そうそう、カリスマシェフであるレネ・レゼピは、とても柔和な印象なんだけど、時々、言葉遣いがとても乱暴。
字幕ではマイルドだけど、英語ではちょっとアレなことを頻繁に言ってる気がする。
彼がマケドニアからデンマークに来た移民であるということも関係しているのかもしれないけど、そういうアンビバレントな部分から彼の素の人間性が垣間見える気がした。
posted by 井川広太郎 at 10:06| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2016年03月16日

無伴奏

『無伴奏』(2015年/日本/配給アークエンタテインメント/132分)



監督:矢崎仁司
製作:重村博文
出演:成海璃子、池松壮亮、斎藤工、遠藤新菜、松本若菜

公式サイト http://mubanso.com/
2016年3月26日より 新宿シネマカリテほか全国ロードショー!


直木賞作家小池真理子の半自叙伝的小説を原作に、70年安保闘争の最中に仙台で受験を控える少女が、年上の男たちと出会い成長していく姿を描く。

傑作でした。
こんなん矢崎監督にしかできない、誰にも真似できないような独特の映画。

ぶっちゃけ最近、見終わった瞬間に全てを忘れてしまうような軽い映画をたくさん見ていたのだが、この映画は全く逆で、見終わってから幕が上がるような本物の映画。
劇場を出た後に余韻に浸るというより、まるで現実に体験したかのような実感を持って、日常の中で感傷がグッとこみあげてくる。
それこそバッハの曲のように緻密に築き上げられた螺旋状の構成が、感動を波のように繰り返し押し上げてくる。

誰もが経験する青春の過ちと愚かさ、背伸びして傷つくことで大人になっていくあの煌めき。
それを追体験あるいは再体験するような芳醇な時間。

俳優陣が素晴らしい。
安定の池松君が見せる起伏の激しさと秘めたる歪んだ内面が抑揚をつけ、斎藤工のぽっかりと空洞のような虚無感が時代感とシンクロしている。
なにより成海璃子の肉体の眩さが心に焼き付いて忘れがたい。
美しく壊れやすく、儚く逞しい青春を表象し、とうに全て失われてしまった何かを呼び起こしてくれるようだ。
posted by 井川広太郎 at 16:13| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2016年03月04日

見えない目撃者

『見えない目撃者』(原題:我是証人 The Witness/2015年/中国・韓国合作/配給ギャガ・プラス/112分)



監督:アン・サンフン
出演:ヤン・ミー、ルハン、ワン・ジンチュン、チュー・ヤーウェン

公式サイト http://gaga.ne.jp/mokugekisha/
4/1(金)TOHOシネマズ新宿ほか全国順次ロードショー


目の見えない女が交通事故に遭遇したことから事件に巻き込まれていくサスペンス。

2011年に製作された韓国映画「ブラインド」を監督自ら中国でリメイクした作品とのこと。
街中のシーンが結構色々とあるのだけど、大きな通りにも広い店内にも人気がなくて、とても怖かった。
まるで廃墟かゴーストタウンのように人がいないのは盲目の暗喩なのだろうか、それとも中国の都市では普通の光景なんだろうか。
posted by 井川広太郎 at 18:35| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

木靴の樹

『木靴の樹』(原題L'albero degli Zoccoli/1978年、日本初公開1979年4月28日/イタリア/配給ザジフィルムズ/187分)



監督エルマンノ・オルミ

公式サイト http://www.zaziefilms.com/kigutsu/
3月26日(土)より 岩波ホールほか全国順次公開


19世紀末のイタリア北部の農村で、貧しい小作人として暮らす四家族を描く。

時々、このままずっとこの映画を観ていたいと思うことがある。
侯孝賢の『悲情城市』や、ジョン・フォードの『わが谷は緑なりき』とかジャン・ルノアールの『フレンチ・カンカン』とかがそうだが、この作品を観ている時もまた、心の底からそう思った。

派手な物語は特になく、地主に搾取され、寒さに震え、豚を解体し、トマトを栽培し、酒を飲み交わし、子が生まれ、学校に行き、洗濯物を預かり、恋をするというように、四家族の生活を淡々と描いている。

それが、どうしようもなく面白い。
上映開始直前にこの映画が3時間オーバーと知り、2時間超の映画すら鑑賞意欲がわかない僕としてはかなりモチベーションが低かったのだが、見始めたら虜になって、どうかこの映画がずっとずっと終わらないでくれと願っていた。

映像にはドキュメンタリーのような生々しさと、フィクションならではの瑞々しさと、いや、どんなドキュメンタリーでもフィクションでも目にしたことがないような、どうしようもない力強さがみなぎっている。
どうやったら、あんなに美しい映像が撮れるのか、僕には全く想像もつかないが、でも、そんなことはどうでもいい、とてつもなく甘美な時間に、ただただ酔いしれていたい。

人生を感じさせる映画ではなく、本当に人生そのもののような映画というのがこの世にはあって、映画を観たというよりも、まるで映画の世界で自分自身が生きていたようにすら感じる。

僕が生まれて間もなくの頃に作られた映画で、そもそも遥か昔を描いていて、イタリアの農村になど行ったこともないのに、どうしようもない郷愁というか、懐かしさというか、心地よさというか、実感やぬくもりを感じずにはいられない。

確かに彼らの暮らしは貧しく厳しいのだけれど、しかしまるで理想郷かパラダイスのようにすら見える。
なぜなのか、それは原風景的な何かなのか、彼らの喜怒哀楽に満ちた日々と、家族の強い結びつきと、隣人との深い交流と、自然と共生がそう思わせるのだろうか。

とにかく、べらぼうに面白かった。
観たのは先月だが、いまだに興奮さめやらぬ。
僕らは映画の続きを生きている。
posted by 井川広太郎 at 18:33| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2016年02月11日

ディーパンの闘い

『ディーパンの闘い』(原題 Dheepan/2015年/フランス/配給 ロングライド/115分)



監督:ジャック・オーディアール
出演:アントニーターサン・ジェスターサン、カレアスワリ・スリニバサン、カラウタヤニ・ビナシタンビ

公式サイト http://www.dheepan-movie.com/
2016年、2月12(金)全国公開


内戦中のスリランカからフランスに逃亡した元兵士ディーパンが、一緒に来た女、少女とともに疑似家族を形成しながら懸命に生き延びる姿を描く、2015年に第68回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した作品。

戦場を離れても戦いから逃れることはできないという戦争が持つ本質的な苦悩を描いた、ランボーやタクシードライバーのような映画。

戦火を逃れてフランスに密入国し、見知らぬ街で必死に生きていくという中盤まではめちゃめちゃ面白かった。

見ず知らずの男と女と少女が、それぞれの事情を抱えながらも生き延びるために疑似家族となり、いがみ合いながらも同志として行動を共にする。

彼らが棲む団地という閉鎖空間がまた効果的だし、疑似家族ならではのいざこざが本物の家族のようで説得力がある。

程度の差はあれ人間誰もが様々な問題やトラブルを抱えて生きているから、彼らの置かれている状況や緊張感を察することができる。

平穏な日常を得たとしてもサバイバルとしての戦いは続くというリアリティが素晴らしかった。

だけど、クライマックスに向けてのバイオレンスな表現は、ちょっとご都合すぎて僕にはよく分からなかった。

いや壮大なギャグとしては面白いんだけど、そういうことじゃないんだよなあ。

暗闇に差し込むかすかな光、よく見るとそれは、電飾のオモチャを頭に付けて売り歩くディーパンなんてとこは、ブリッジとしても哀愁あるギャグとして秀逸なんだけれども。
posted by 井川広太郎 at 11:54| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2016年01月27日

マンガ肉と僕 Kyoto Elegy

マンガ肉と僕 Kyoto Elegy』(2014年/日本/配給 和エンタテイメント、KATSU-do/94分)



監督:杉野希妃
エグゼクティブプロデューサー:奥山和由
プロデューサー:中村直史、杉野希妃
出演:三浦貴大、杉野希妃、徳永えり、ちすん

公式サイト http://manganikutoboku.com/
2016年2月11日(木) 新宿K's cinemaシネマにて先行上映、2月13日(土)より全国順次公開


京都を舞台に、様々な女性とめぐり合いながら成長していく青年の姿を描く青春映画。

女優そしてプロデューサーとして活躍する杉野希妃さんの初監督作品ということで観る前は少し身構えていたのだが、正直なところ面白くて驚いた。

冒頭のマンガ的な展開もなるほどタイトルが『マンガ「肉と僕」』だからなのかと、うっかり勘違いしていた。
正しくは「マンガ肉」であって、はじめ人間ギャートルズに出てくるような骨つき肉のことなわけだが、つまりはタイトルは『「マンガ肉」と僕』であるということが分かり始めた頃から雰囲気が変わってくる。

パラパラとページをめくるように、そして過ぎ去りし日々が儚く消し飛んでいくかのようにあっさりと時間を超えて展開していく構成が、後半にはアッと驚くような質量を携えて「僕」にのし掛かってくる。
その重み、肌と身体で感じる確かな圧力。
その確かさこそが青春なんですよ、僕らが体験したことも、失ったことも全部。
過ちも、喜びも、その全部を包み込む何かも、きっと。

少しデフォルメされた世界も青春こそが持つちょっぴり肥大化した自意識の表れであって、涙が乾いた後のような爽やかさがこの映画には満ち溢れている。
そこに鴨川を吹く風を感じずにはいられないのである。

あと、後半に登場するちすんが可愛すぎて俺、病みそう。
posted by 井川広太郎 at 20:16| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2016年01月23日

ビューティー・インサイド

ビューティー・インサイド』(原題 The Beauty Inside/2015年/韓国/配給 ギャガ・プラス/127分)



監督:ペク
出演:ハン・ヒョジュ、パク・ソジュン、上野樹里、イ・ジヌク、キム・ジュヒョク

公式サイト http://gaga.ne.jp/beautyinside/
2016/1/22(金)より全国順次公開


目覚めるたびに姿が変わってしまう男が、運命の恋に落ちるラブストーリー

超よかった!
奇妙な設定を構築していく前半、そしてそこから真実の愛というテーマに展開していく中盤、ずっとドキドキしっぱなしだった。
奇想天外な主人公を映画的に表現する遊び心、奇抜なエピソードで物語を紡いでいく緻密さ、丁寧に作られた世界と映像が贅沢で心地いい。

日ごとに姿を変わるのを、別の俳優が演じることで表現するので、とにかく、たくさんの俳優が出てくるわけだが、みんな個性的で面白い。
韓国人の友人に聞くと、みなさんとても有名な俳優さんなんだそうだ。
実際、とても達者で飽きさせない。

突っ込みどころはあるっちゃいっぱいあるけど、テンポの良さと正々堂々としたラブストーリーの前では、そんなの野暮でしかない。

ラストも、そりゃないだろうという展開ではあるんだけれども… ラストのラストに現れるカットの素晴らしさに、うーん…技あり!お見事!!って感じで参りました。
こういった特異な設定の映画は矛盾が生じてしまうのでラストはなかなか上手くいかないもんなんだが、そんな小さなことを吹き飛ばすような映画的なカットの連続がなんとも爽快。
こりゃ予想しなかった。カッコイイからあり!

そしてそして、なによりも、ハン・ヒョジュが可愛すぎてヤバい。
ヤバい。ヤバいヤバいヤバい。僕は病気になってしまった。
映画を観ながらずっと胸が苦しくて、この苦しみから一刻も早く解放されたいがそれでもずっと観ていたい!!とスクリーンを見つめながら悶絶していた。
夏目雅子と原田知世と深田恭子が一緒にウチに遊びに来たようなトキメキ。
ハン・ヒョジュの可憐さと美しさと逞しさが、この繊細な映画を成立させている。
ヤバい、思い出すだけで病みそう。だって可愛いんだもん。そりゃ患うわ。
そんなわけで、いま世界で一番好き。好きだー!!!
posted by 井川広太郎 at 22:24| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年11月20日

放浪の画家ピロスマニ

放浪の画家ピロスマニ』(原題 Pirosmani/1969年/ソ連/配給 パイオニア映画シネマデスク/日本初公開1978年9月15日/87分)



監督:ゲオルギー・シェンゲラーヤ
製作:スサナ・クバラツヘリア
出演:アフタンジル・ワラジ、アッラ・ミンチン

公式サイト
11月21日から岩波ホールほか全国で順次公開


グルジアの国民的画家ピロスマニの半生を描いた伝記映画。

加藤登紀子が歌った「百万本のばら」のモデルであったり、ピカソが絶賛していたりと、何かと逸話が多いにも関わらず世界的にはあまり有名というわけではないのだが、グルジアでは母国の風土と気風を描き残した画家として、とても愛されているらしい。

自由奔放なピロスマニが個人的な愉しみとして描いてきた絵が突然、中央画壇に取り上げられ注目された直後に今度は吊るし上げを食らったりと、お人好しゆえか散々に振り回される波乱万丈の人生を描いている。
そんな繊細かつ朴訥としていて人間味に溢れた人物像は、紛れもなく愛すべき存在だ。

極めてシンプルでありながら、今までに見たことがないような独特で異様な映像が凄まじい。
それこそ異国の地で今までに味わったことがないワインかチーズを振舞われたような、そんな贅沢かつ豊潤な体験である。
最初はちょっと驚く、なにこれ食べたことない、美味しいのか不味いのかも分からないのだが、それもそのはず、次第にそれが全く新しい味覚と感動であることに気付かされる。
僕らはまだまだ新しい映画を観るチャンスが沢山あるし、近くの映画館でこんな体験ができるなんて本当に贅沢だしありがたいし尊い。

圧倒的なダンスのシーンの迫力たるや、心が震え魂で泣けるかのようですらある。
その美しい映像はピロスマニの絵をも彷彿とさせ、クライマックスに向けて見事な近似曲線を描いていく。
素朴で親しみやすく時には滑稽に見えるのに、しかし神聖で高貴で気高く、イコンを眺めているような不思議な穏やかな心持ちにさせてくれる。
クライマックスで復活祭の絵が登場した時、僕はアッと声を上げ腰を抜かしそうになったよ。
そしてラストカットのあまりに映画的なアレを目の当たりにすると、もはや感涙にむせぶしかないのである。
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2015年11月18日

アレノ

アレノ』(2015/79分/配給 スローラーナー)



監督 越川道夫
出演 山田真歩/渋川清彦/川口覚/内田淳子/遊屋慎太郎/諏訪太朗

公式サイト http://www.areno-movie.com/
2015年11月21日より、新宿 K's cinemaにてロードショー


エミール・ゾラの「テレーズ・ラカン」を下敷きに、愛人と共謀して夫を殺した人妻の姿を描くラブストーリー。

やっぱりフィルムっていいなと素直に思ったし、この映画に嫉妬するのはきっと僕だけではないはず。

かつてのピンク映画がそうであったようにとてもシンプルで、ほとんど物語らしい物語もないのだけれど、人物がとても強く美しく描かれていて、否応無く引き込まれる。

設定もよく分からないのだけれど、登場人物たちはとても素敵だ。
それこそ名前も職業も年齢も知らぬような初めて会ったはずの他人に目が釘付けになるみたいに、そんな、なんだろう、一目惚れとはまた少し違っても確かに虜にさせる類まれな魅力を彼らはたゆたえている。

繰り返されるラブシーンがどれも扇情的で素晴らしい。
生きている喜びと哀しみを同時に映し出してみせるのがラブシーンだと僕は思うのだが、そういう意味で久しぶりに本物のラブシーンを堪能した気がする。

刹那に消えてしまう儚い衝動というか、名もない微かな感情というか、なんというか匂いとか味とか肌触りとか、湖を流れる冷たい空気というか、そういう、映っているはずのない色々を感じさせてくれる映画であった。
僕はこういう映画が好きだし、こういう映画を撮りたいとずっと思っていたことを思い出した。
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2015年11月06日

フランス組曲

なにこれメチャクチャ面白かった!


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2015年10月10日

顔のないヒトラーたち

顔のないヒトラーたち』(原題 Im Labyrinth des Schweigens/2014年/ドイツ/配給アットエンタテインメント/123分)



監督:ジュリオ・リッチャレッリ
製作:ヤコブ・クラウセン、ウリ・プッツ、サビーヌ・ランビ
出演:アレクサンダー・フェーリング、フリーデリーケ・ベヒト

公式サイト http://kaononai.com/
10月3日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町&新宿武蔵野館(モーニング&レイトショー)ほか全国順次ロードショー


戦後、復興しはじめたドイツで、当時まだ秘密にされていたアウシュビッツでの犯罪に気づいた若き検事が、様々な苦難を乗り越えて裁判に臨んだという史実を基にした、社会派エンターテイメント。

めちゃめちゃ重い実話を、とっても面白いエンターテイメントに仕上げた、珠玉のサスペンス。
思わず、ダンケ!と言いたくなってしまった。

出世と幸せな結婚しか考えていなかった若い検事が偶然、アウシュビッツでの事実を知ることになる。
当初は信じられず、受け入れられないが、多くの当事者と触れ合う中で、次第に確信に変わっていく。
そして無知であった己を恥じ、加害者達のあまりの非道さに怒り、真相を探ることに自分の全てを捧げていくようになる。
しかし、姿を見せぬ者たちによってアウシュビッツは何重にも秘められ守られていて、謎を解くことは容易ではない。
誰が敵なのか、味方なのかも分からなくなっていき、疑心暗鬼が広がっていく。
捜査は思うようには進展せず、職場での立場も危うくなり、さらに私生活すら脅かされていく中、彼が下した決断とは…!!

巨大な組織を前にして無力感に苛まれながらも、しかし一人の勇敢な行動が多くの仲間の決起を促し、少しずつだが確実に大きな変化を生み出していくというストーリーに、素直に感動した。
そうだよな!本当に、その通りだよな!たとえ最初は孤独であっても、信念と勇気を持って諦めずに行動し続けるしかないんだよなって、心から思った。

ところで、この映画はサスペンスで、全編に独特の怖さが漂っているのだが、その恐怖感を演出するテクニックとして敵が全く映らない。
それどころかアウシュビッツの史実も、ほとんど証言によってのみ展開し、物的証拠が映らない。
それによって、まるで主人公は黒い霧に立ち向かうような、悪夢と対峙しているような、異様な雰囲気が立ち込めていてる。
そう、まるでハネケの『白いリボン』(09)のような目に見えぬ圧倒的な怖さが潜み、うごめいているのだ。
そう考えるとガチに怖くてブルってしまうのだが、なんというかドイツ映画ならではの凄みなんだと思う。
posted by 井川広太郎 at 00:13| Comment(0) | TrackBack(1) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年10月09日

ハーバー・クライシス 都市壊滅

『ハーバー・クライシス 都市壊滅』(原題:痞子英雄 黎明再起 Black & White: The Dawn of Justice/2014/台湾/配給 ツイン/126分)



監督:ツァイ・ユエシュン
出演:マーク・チャオ、ケニー・リン、ホアン・ボー、チャン・チュンニン

公式サイトhttp://www.harborcrisis-movie.net/
10/10(土)からシネマート新宿ほかにて全国順次ロードショー


正反対の性格の二人の刑事が、台湾の湾岸都市を壊滅させようと企む悪党と対決する、バディもののアクション映画。

もともとはテレビドラマとして人気を博し、それが映画化され大ヒットして、今作はその続編とのこと。
そりゃまあ、なんとなく「シリーズものなんだろうな」とは予感させつつ、キレのいいアバンタイトルから予備知識が無くても十分に楽しめる疾走感全開。
ド派手なアクションを支えるCGの使い方も巧みで、最小限で最大限の効果を生み出していて素敵。

これは意外な掘り出し物かもと思って見ていたのだが、中盤から不可解な設定や意味不明な人物とかが立て続けに出てきて、すっかり着いていけなくなる。
この辺りは、前作などを見ていれば分かることなのだろうか、どうだろうか。

極め付けは、ラスボス。
え?この人がラスボスなの?と拍子抜けするようなダメダメな感じ。
なのに無茶して唐突に主人公とアクション対決し始めるのだが、それまた思わず「おじーちゃん、ガンバレ!!」と応援したくなるような頼りなさ。
謎の捨て台詞まで微妙で、これでいいのだろうかと困惑しつつ鑑賞後に調べたら、なんとラスボスを演じているのは本作の監督自身とのこと。
わりと今年最大級の衝撃。

台湾に舞い降りた三番目の天使ことチャン・チュンニンちゃんが出演していて、相変わらず破天荒な癒しパワーを発揮している。
そんな、アジア・バッケンレコード級のヒーリング力を持つチャン・チュンニンちゃんも、監督自ら演じるラスボスとの謎なシーンでアレされてしまうのである!!
いかん、いろいろ書いてたら、なんだか、ものすごくもう一回観たくなってきた。
posted by 井川広太郎 at 13:13| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年09月30日

カプチーノはお熱いうちに

『カプチーノはお熱いうちに』(原題 Allacciate le cinture/2014年/イタリア/配給 ザジフィルムズ/112分)



監督:フェルザン・オズペテク
出演:カシア・スムトゥアニク、フランチェスコ・アルカ、フィリッポ・シッキターノ、カロリーナ・クレシェンティーニ

公式サイト http://www.zaziefilms.com/cappuccino/
9月から、シネスイッチ銀座ほか全国公開


カフェでアルバイトをしている女が運命的な恋に落ち、結婚して子供にも恵まれた13年後、幸せの絶頂で病魔に蝕まれるというヒューマンラブストーリー。

オシャレ感全開でテンポよく進む物語が、あり得ないぐらい唐突かつ大胆に転調するのに驚かされるのだが、そこで発生する大幅な時間経過が見もので、本当にタイムトンネルを抜けたかのようにすら感じられる。
というのも俳優陣が、実際に歳をとったかのように、外見が一変しているのだ。
CGでも老けメイクでもなく、撮影期間が10年に渡っているわけでも、別の役者が演じているわけでもないのに、その肉体から本物の老いを感じる。

個人的には、肉体をコントロールしての「体当たりの演技」とかってスゴイとは思いつつ、なんか体育会的というか、演技とは違うように感じてしまうのか、どこかスッキリしないことが多い。
しかし、本作でのそれは圧倒的すぎて、本当にビックリした。
さながら熱いカプチーノと冷めたカプチーノを一人で演じてみせるかのように、短期間で痩せたり太ったりと大変な労力と身体的な負担をかけ、10数年に渡る時の流れをリアルに体で表現してみせた俳優陣が見事の一言なのである。
posted by 井川広太郎 at 09:55| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年09月13日

3泊4日、5時の鐘

3泊4日、5時の鐘』(2014/日本・タイ合作/配給 和エンタテインメント、オムロ/89分)



監督・脚本:三澤拓哉
エグゼクティブプロデューサー:杉野希妃
出演:小篠恵奈、杉野希妃、堀夏子、中崎敏、蜿r太郎

公式サイト http://www.chigasakistory.com/
2015年9月19日より新宿K's cinemaほか全国順次ロードショー!!


小津安二郎監督が脚本執筆の際に定宿にしていたことでも知られる茅ヶ崎館に集った男女の恋愛模様を描く。

茅ヶ崎出身者として、この映画に嫉妬を禁じ得ない。
しかし同じ茅ヶ崎と言っても、僕が住んでいた辻堂の辺りと、この映画のロケ地であり海の真ん前の茅ヶ崎館の辺りとではだいぶ違うので、見知ってはいるが、どこか見慣れぬ風景を新鮮な気持ちで眺めていた。

夏!海!といったノリとはまた違うが、のんびりしていて過ごしやすい茅ヶ崎の姿を上手に背景とし描いている。
その雰囲気の中で当初は爽やかな恋愛劇と思いきや、次第に女たちがそれぞれ隠していた別の顔をむき出しにしていく様子が面白い。
対照的に、男たちが一様に大人しいところも世相を反映しているようで興味深く、いまはこういう時代なのかもしれないと考えると、なんとなく新しい恋愛映画のスタイルも見えてくるような気もする。

ひょっとしたら物語にはならないような、あわや見過ごしてしまいそうな繊細な女心を見事に掬い上げ、独特なタッチの作品に仕立てあげている。
そんなアラサー女子の機微を表現する女優陣の演技が見ごたえ十分なわけだが、その中でも堀夏子さんには驚かされた。よかったわー。ああいうのグッと来るよね。
posted by 井川広太郎 at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年08月21日

ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女

『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』(2014/A GIRL WALKS HOME ALONE AT NIGHT/アメリカ/101分)



監督・脚本:アナ・リリー・アミールポアー
出演:シェイラ・ヴァンド、アラシュ・マランディ
製作総指揮者:イライジャ・ウッド

オフィシャル・サイト http://vampire.gaga.ne.jp/
9月19日(土)新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー


死と絶望とアメリカ文化が蔓延するイランの架空の都市を舞台に、孤独に生きる吸血鬼少女と、彼女と出会うことで運命が変わっていく青年の姿を描く異色のホラー。

設定はホラーなんだけど、ボーイ・ミーツ・ガールな物語で、映画的にはジャームッシュという、ありそうでなかった、いや、無かったようであったような気もするけど、やっぱり独特な雰囲気の映画。
原題のA GIRL WALKS HOME ALONE AT NIGHTは、まさにそんな感じがよく出ていてカッコイイ。

最初、ガチでイラン映画と勘違いしていたので、ワンシーンごとに「マジで!?マジで!?」と本当に驚かされたのだが、純然たるアメリカ映画だそうで、ロケ地はアメリカのゴーストタウンらしい。
なるほど、しかし、それはそれで十分にヤバい気もする。

フックのあるログラインや、キャッチーなポスタービジュアル、そしてデフォルメされたキャラクターなどといった「世界観」で魅せる映画というのは、まだまだ可能性があるから面白いし、ジャンルものと見せかけつつ、新たな切り口を提示して、独自のスタイルを貫くこういう映画、やりたい。
posted by 井川広太郎 at 13:54| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年08月16日

天使が消えた街

天使が消えた街』(原題 The Face of an Angel/2014年/イギリス・イタリア・スペイン合作/配給 ブロードメディア・スタジオ/101分)



監督:マイケル・ウィンターボトム
製作:メリッサ・パーメンター
出演:ダニエル・ブリュール、ケイト・ベッキンセール、カーラ・デルビーニュ

公式サイト http://www.angel-kieta.com/
9月5日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開


国際的なスキャンダルとして注目を浴びる「英国人女子留学生殺害事件」の映画化に取り組む映画監督が、裁判が行われている現地イタリアで取材中に出会う女たちに翻弄され、数奇な運命に巻き込まれていくというファンタジックな社会派ドラマ。

映画の冒頭で示されるように、本編はダンテの『神曲』をモチーフにしている。
そして驚くことに劇中でも、”実際にあった英国人女子留学生殺害事件”の映画化に取り組んでいるはずの主人公が、その映画の構造は神曲からインスパイアされているということをハッキリ口にする。
なんとも複雑に入り組んだ映画だ。

劇中で、映画監督が構想をプレゼンするシーンがあるのだが、”作品”について語り合いたい彼の一言一言を切り取り、プロデューサーたちは配役やプロモーションについてばかり意見を言い、すれ違ったまま建設的な話し合いは出来ず、主人公は深い溝を感じるというシーンがある。
確かに、”映画あるある”ではあるけれど、いや、しかし何なんだ。

そういったもろもろを踏まえると、「英国人女子留学生殺害事件」をスキャンダルな映画にするようオファーされたマイケル・ウィンターボトム監督が、苦悩の末、自らの葛藤をそのまま映画化したような、そんな話なのではないかと邪推してしまうぐらい、奇妙な作品だ。

にしても、『神曲』がどこから出てきたのか、よく分からない。
イタリアだからなのか。そうでもしないとフォルムが見つからなかったのか。そこまで苦しんだのか。絶望の底で何を見たというのか。そして一体、誰がベアトリーチェなのか。

とにもかくにも、ケイト・ベッキンセールがイイ女すぎてヤバい。
これでもかというぐらい美女ばかり出てくる映画ではあるが、ケイト・ベッキンセールの溢れ出る大人の色気がマジでハンパ無くて比類無きほどに圧倒的である。

それにしても映画監督って、映画の中ではみんなモテてるよね。
うらやましいなあ。
posted by 井川広太郎 at 13:02| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする