2018年03月22日

さよなら、僕のマンハッタン

『さよなら、僕のマンハッタン』(原題The Only Living Boy in New York/2017年/アメリカ/配給ロングライド/88分)



監督:マーク・ウェブ
製作:アルバート・バーガー、ロン・イェルザ
製作総指揮:ジェフ・ブリッジス、マリ・ジョー・ウィンクラー=イオフレダ

オフィシャルサイト http://www.longride.jp/olb-movie/
4月14日(土)丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国順次公開


作家志望ながら挫折した若者が、恋や出会いを通じて、父と母との葛藤を乗り越え成長していく姿を描く

文学への愛情深い、王道的な成長物語
主人公の苗字が監督と同じだし、格段の思い入れがあるのかも

現在のNYを舞台にさえしなければ、”無難な”作品にはならなかったのではと考えてしまう
いまのNYは商業的すぎて叙情の欠片もないので文学は似合わず、演出だとしてもあまりに寓話的すぎて白々しい
イマドキの感覚だと大した障害もなくオイタもしていない若者に試練だ成長だと言われてもピンとこないし、アバンタイトルの文学と芸術と都市への思索も言い訳のように聞こえてしまう
せめてコスプレにすれば成立したのかもしれないが、やっぱウディアレンって偉大なのかもと思ってしまう

ともあれ俳優陣の存在感が素晴らしく、最後まで見入ってしまう
文句なしにダサかっこいいピアース・ブロスナン、唯一文学的な香りを漂わせるジェフ・ブリッジス、カーシー・クレモンズの可愛さと知的な雰囲気もとても良い
そして、ケイト・ベッキンセールが美しすぎてツライ
posted by 井川広太郎 at 18:13| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年03月21日

泳ぎすぎた夜

『泳ぎすぎた夜』(原題 La nuit ou j'ai nage/2017年/フランス・日本合作/配給コピアポア・フィルム、NOBO/上映時間 78分)



監督:五十嵐耕平、ダミアン・マニベル
製作:ダミアン・マニベル、マルタン・ベルティエ、大木真琴
出演:古川鳳羅、古川蛍姫、古川知里、古川孝、工藤雄志

公式サイト http://oyogisugitayoru.com/
2018年4月14日より、シアターイメージフォーラムほか、全国順次公開


子供を演出するのは映画の極意みたいなところがある。
”子供映画”の金字塔であるアッバス・キアロスタミの「友だちのうちはどこ?」と「トラベラー」を彷彿とさせる本作をダミアン・マニベルと共同監督した五十嵐耕平くんは、新作「ライオンは今夜死ぬ」でも子供を演出し続けている巨匠、諏訪敦彦監督の教え子であり、そこには確かな意志と偽らざる伝統を感じる。

第74回ヴェネチア国際映画祭のオリゾンティ・コンペティション部門に正式出品された「泳ぎすぎた夜」は雪深い青森を舞台とし、現地に暮らす演技未経験であった古川鳳羅くんを主役に迎え、子供が小さな大冒険をする話である。
ほぼ台詞は無いながら、押さえきれないエモーションを身体の全てと街の一部を使って鳳羅くんが表現する中で、様々な物事に機敏に反応する子供の頃の純粋な感情と、未知と発見に溢れた世界の面白さ、そして、いつの間にか見失ってしまった日常の楽しさを思い出させてくれる。

2017年11月に有楽町朝日ホールほかで開催された国際映画祭「第18回東京フィルメックス」では学生審査委員賞を受賞し、さらに国内最大級の映画レビューサービス・Filmarks(フィルマークス)とのコラボレーションで創設された「Filmarks賞」も受賞した。
海外やら国際映画祭やらで評価された映画となると小難しそうに感じるかもだが、なにより日本の若き学生や一般観客が実際に観てこの映画を選んだというのは、なんとも感慨深い。

誰もが確かに体験していながらとうに失われた何かを、圧倒的な自然に囲まれて暮らす人々を捉えた美しい映像で描く『泳ぎすぎた夜』は、言葉ではなく感覚的に訴えかっける子供映画のようでありながら、子供を思う父親の目線をも湛えた映画であるというのもまた感動的。
posted by 井川広太郎 at 09:24| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年02月23日

ザ・キング

『ザ・キング』(原題 The King/2017年/韓国/配給ツイン/134分)



監督:ハン・ジェリム
出演:チョ・インソン、チョン・ウソン、ペ・ソンウ、リュ・ジュンヨル

公式サイトhttp://theking.jp/
2018年3月10日(土)よりシネマート新宿ほか全国順次ロードショー


権力を得るために悪事に手を染めていく若き検事の戦いと葛藤を描くハードボイルドなドラマ

フィクションでありながら妙にリアルな説得力があって、なぜ、"薄給で激務"のはずの検事が異常な富と権力を持ち得るのか、よく分かる。
重大事案が起こるとそれを打ち消すかのようにスキャンダルが報道されたり、政治家とめっちゃ癒着したり、出世こそが正義であったり、組織の論理が最優先されたり、なんか知っているような気がする検察の暗部が次々と描かれていく。

なんといっても歴代韓国大統領の実際の映像を使い、その失脚と選挙のたびに検察が暗躍しているというシーンが面白い。
韓国の歴代大統領は逮捕されたり、殺されたりと、必ず悲惨な末路をたどっているが、この映画を見ると色々と納得できる。やっぱりなー。そうだったのかー。

かといってこれが韓国だけの話とはとても思えず、むしろ、これは日本の話ではなかったっけと、既視感でクラクラする。
国家権力とか組織とか政治とか、どこもこんなもんなんだろうなという爽やかな絶望感。

しかし単なる暴露映画かというとそんなことは全くなく、権力と欲望とに惑わされた若者の一代記になっている。
主役のめちゃんこイケメンなチョ・インソンが、時代の波に飲まれる男を真摯に演じていて、ピカレスクというよりハードボイルドな雰囲気が骨太で良い。
さらに、憧れの先輩検事を演じるチョン・ウソンが素晴らしい。
恐ろしいほどに切れ者で、近づきがたいほどのオーラを放ちつつ、実はめっちゃ軽薄な小者っていう難しい役どころを見事に演じていて、めちゃくちゃカッコいい。
ビシッと決まったシチサン分けが最高にクールだぜ!
posted by 井川広太郎 at 12:57| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年01月30日

ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ

『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』(原題The Big Sick/2017年/アメリカ/配給ギャガ/120分)



監督:マイケル・ショウォルター
製作:ジャド・アパトー、バリー・メンデル
製作総指揮:グレン・バスナー、ベン・ブラウニング
出演:クメイル・ナンジアニ、ゾーイ・カザン、ホリー・ハンター、レイ・ロマノ

公式サイト http://gaga.ne.jp/bigsick/
2018年2月23日(金)TOHOシネマズ日本橋ほか全国順次ロードショー


恋に落ちた異文化カップルが様々なトラブルを乗り越えていく実話を基にしたコメディ

メチャメチャ良かった!
シカゴに暮らすパキスタン出身のコメディアン志望の若者が、白人の女性と恋に落ちるのだが、家族や宗教そして差別や病気と次々に試練が訪れる。
これがなんと、主役のクメイルを演じるクメイル・ナンジアニの実体験なんだとか。
彼が端役で参加していた現場でその話を聞いたジャド・アパトーがピピっと閃いて「脚本を書け!」と鶴の一声。
そこから何年もかけて脚本を完成させ、自ら主演しているのだとか。
さらに驚きなのが、脚本を共同執筆したのが、劇中のヒロインのモデル本人らしい。
カップルが自分たちの出会いと苦難をこんな開けっぴろげな脚本に仕立て上げるなんて…

ジョークに溢れたエピソードの数々と、ハチャメチャなキャラクターたちが素晴らしい。
アホすぎて迷惑ばかりかけるけど憎めない、そんな愛すべき家族や隣人が次々に登場する。
そしてなにより、深刻な話を堂々とコメディしながら、重くなりすぎず、しかし決して軽くはなりすぎず、絶妙なバランス感覚を発揮する演出が秀逸。

なんというか、観客を楽しませつつテーマをちゃんと伝える、ということに徹しているのだ。
ジャド・アパトーのルーツでもあるアメリカのスタンダップコメディについて詳しく描かれているので、その意味でもとても興味深い。
笑いとは何かコメディとは何か、面白くすることに真摯で真剣なスタンスが微塵たりともブレず、しかし堅苦しさは皆無でとにかく最高に笑えるのにグッときて心に響く。
posted by 井川広太郎 at 12:33| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年12月13日

二十六夜待ち

『二十六夜待ち』(2017年/日本/配給フルモテルモ/上映時間124分)



監督:越川道夫
出演:井浦新、黒川芽以、諏訪太朗

12月23日(土)よりテアトル新宿ほかにて全国順次公開


東北の小さな町を舞台に記憶を失った男とトラウマを抱える女の性愛を描く

寂れた町に生きる男と女の淡々とした日常の中で次第に、それぞれの過去や事情や秘めたる激情が垣間見えて来るのだが…
佐伯一麦の小説を原作としつつ、やはり「アレノ」の越川道夫監督だからこそ成立した作品なんだと思う。
シンプルで力強く叙情的に、ただただ人間を描くという、端的に言って僕の好みそのままの映画である。
渋いかもしれないし、地味かもしれないが、俳優の生々しい肉体が鈍く輝く、映画ならではの感動に満ち溢れている。

井浦新と黒川芽以の濃厚な絡みが、なんとも狂おしく美しく素晴らしい。
すがり求め合う男女の孤独と、愚かしさと、凍えるような寒さと、飢えと乾きと、温もりと、やるせなさと愛と、生と死を感じる。
posted by 井川広太郎 at 10:28| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年12月04日

新世紀、パリ・オペラ座

『新世紀、パリ・オペラ座』(原題L'Opera/2017年/フランス・スイス合作/配給 ギャガ/111分)



監督ジャン=ステファヌ・ブロン
製作フィリップ・マルタン、ダビド・ティオン
出演ステファン・リスナー、バンジャマン・ミルピエ、オーレリ・デュポン、フィリップ・ジョルダン、ロメオ・カステルッチ

公式サイト http://gaga.ne.jp/parisopera/
12月9日よりBunkamuraル・シネマほか全国にて順次公開


世界最高峰のオペラやバレエを上演するパリのオペラ座の舞台裏を追ったドミュメンタリー

冒頭、会議室での際どい発言の応酬とテンポの良い編集に否応無く期待感が高まる。
華やかな舞台を運営する巨大な劇場には、様々な部署と数多くのスタッフが必要であろうことはなんとなく分かるが、想像の域を出ないその裏方の仕事っぷりを生々しく描く。

時代の波をモロ受けて入場料金を下げるべきかを話し合う経営者達の姿は身につまされるし、スタッフの去就に振り回される職場の人間関係の難しさもあり、しかしVIPたち来賓の席順を真剣に議論する様は滑稽でもある。

そんな上層部の指示の元に舞台を作り上げていく演出家や指揮者たちもまた当然ながら軋轢があり、そして歌手やダンサーもプロであるからこその葛藤がある。
新人歌手として雇われた若者の成長も描かれるが、ファンと間違われるほどに初々しい彼が夢舞台に足を踏み入れた興奮とプレッシャーの凄まじさ。

特に中盤以降は大道具やメイク、衣装係など様々な部署の仕事っぷりも矢継ぎ早に描かれ、劇場を運営していく難しさが嫌という程伝わる。
テロの恐怖にも立ち向かい毎夜催されている舞台がどれほど多くの人と時間と情熱が注ぎ込まれているのかよく分かり、とりあえず幕が閉じたらその足でオペラやバレエを観に行きたくなるような映画であった。
posted by 井川広太郎 at 18:02| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年11月11日

南瓜とマヨネーズ

『南瓜とマヨネーズ』(2017年/日本/配給S・D・P/93分)



監督・脚本:冨永昌敬
原作:魚喃キリコ
プロデューサー:甲斐真樹
出演:臼田あさ美、太賀、光石研、オダギリジョー

公式サイト http://kabomayo.com/
11月11日(土)新宿武蔵野館ほか全国ロードショー


売れないバンドマンを支える女の揺れ動く心情と人生の選択を描くドラマ

とても繊細な感情が漂う、人生の中の何気ない時間を儚くも力強く描く
見慣れたようなしょぼくれた街角なのに、役者が活き活きと演技をすることで、重厚なのに軽やかな世界観を構築し、見逃しがちな日常の煌めきを気付かせてくれる
日本映画って素晴らしいね

シンプルなようでいて凝りに凝った音の演出に、さすが冨永監督と脱帽
さらに歌うとことか緊張感と温もりが共存しているようで、えっコレ生演奏?と錯覚するような臨場感でグッときた

臼田あさみが最高すぎてドキドキした
女のどうしようもなくダメなとこと最高に可愛いとこを同時にやりきってみせた
こんなに魅力的な女優がいるとは
posted by 井川広太郎 at 01:03| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年10月25日

リュミエール!

『リュミエール!』(原題 Lumiere!/2016年/フランス/配給 ギャガ/90分)



監督 ティエリー・フレモー
製作 ティエリー・フレモー、ベルトラン・タベルニエ

公式サイト http://gaga.ne.jp/lumiere!/
10月28日から東京・恵比寿の東京都写真美術館ホールほか全国で順次公開


映画の父“リュミエール兄弟”が製作した作品1422本から厳選された108本で構成された映画

1895年12月28日にリュミエール兄弟がパリの劇場で興行し、映画が誕生した。
到着する列車の映像を観た観客が逃げ出したという逸話は有名だが、実際、大好評でそれ以降、次々に映画が作れられるようになった。

リュミエールが製作した短編にこそ映画の基本が詰まっているという事実は、古今東西の映画人が指摘してきたことであるが、こうしてまとめて見ることで再確認できる。

当初より演出がなされていたこととその的確さには改めて目を見張るし、アクションと移動撮影こそが醍醐味であること、扉は開くものであること、被写体は庶民であること、行ったことのない場所に連れて行ってくれる世界の窓であることなど、普遍的なエンターテイメント性が貫かれている。

奥行きを作る構図の完璧さは唸るほどで、全く同じ構図が多いことからも徹底した意図が読み取れる。
似たようなカットが続くとさすがに飽きてくるのだが、そんな時に異質な構図が挿入されるとまた感動的で、逆説的にカット割という概念を予感させてくれる。

ナレーションが語りすぎて作品の邪魔をしているという見方もあろうが、この偉業の前には寛容になるべきだし、そもそもリュミエールに音はない。
ちなみに劇中で映画史に絡めて幾つかの作品と監督が挙げられるが、そのうち実に二つが日本映画である。

リュミエールの作品をまとめて一本の映画にするという発想を、なぜ今まで誰も思いつかなかったのであろうか。
どの短編も極めて高い技術による圧倒的な映像美と、信じられないほどの瑞々しさに溢れていて驚くほどに素晴らしい。
この映画はリュミエールの作品をまとめて見るのに最適な美の教科書だ。
posted by 井川広太郎 at 10:44| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年10月23日

ヒトラーに屈しなかった国王

『ヒトラーに屈しなかった国王』(原題 Kongens nei/2016年/ノルウェー/配給 アットエンタテインメント/136分)



監督:エリック・ポッペ
製作:ペーター・ガルデ、フィン・イェンドルム、スタイン・B・クワエ
製作総指揮:ヘンリク・ツェイン
出演:イェスパー・クリステンセン、アンドレス・バースモ・クリスティアンセン、ツバ・ノボトニー

公式サイト http://kings-choice-jp.com/
12月よりシネスッチ銀座ほか全国順次公開


ナチスの侵略に抵抗するノルウェー国王の決断を描く史実に基づく歴史ドラマ。
堅苦しさはカケラもなく、ハラハラドキドキ手に汗握るサスペンフルな展開でメチャメチャ面白かった!

ノルウェーは1905年にスウェーデンから独立し、新憲法のもと立憲君主制のノルウェー王国を樹立。
その際、ゆかりの深いデンマークの王子を国王として迎え入れることになり、そうしてノルウェーの国王になったホーコン7世のお話。

国王といっても孫と遊ぶのが日課のおじーちゃまなのだが、突如ナチスドイツが侵略してきて、平和な日々がふいに破壊される。
情報が錯綜し、敵の攻撃の手が迫り一刻の猶予もない、その中で交渉を求めるべきか、断固戦うべきか、逃げるべきか隠れるべきか、様々な意見の対立も含めて国内は混乱する。
その結果、本来は政治的な影響力を持たない国家元首のホーコン7世はある決断を迫られるわけだが、そこに至るわずか数日がドラマティックに描かれる。

なにより国王が人間味ある人物として描かれているのが面白い。
王として父として一人の人間としてどう生き、自分の役割をどう全うすべきか悩む姿が誠実で魅力的である。
また他の登場人物たちもそれぞれの立場で葛藤しながら行動していることが大胆かつ繊細に描かれ、人間一人ひとりに尊厳があるのだというメッセージが力強く伝わってくる。
北欧について知らないことも多いので、この作品の中で学ぶことも多かったが、こういう映画を観ると親近感も湧くし、とりあえずめっちゃノルウェー行きたくなる。

立憲君主制という”憲法により君主の権限が規制されている国家制度”において、国家元首たるホーコン7世がどういう立場でどういう決断をするのか。
憲法、国家、そして権力者のあり方を問うこの映画を、いまこそ多くの日本人に観て欲しい。
posted by 井川広太郎 at 10:59| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年09月30日

月と雷

『月と雷』(2017年/2時間/配給 スールキートス)



監督:安藤尋
出演:初音映莉子、高良健吾、草刈民代

公式サイト http://tsukitokaminari.com/
2017年10月7日(土)よりテアトル新宿、テアトル梅田ほか全国公開!


角田光代の小説を原作に、幼児期の体験に囚われたまま大人になろうとする男女のいびつな関係を描く

トラウマやら、ネグレクトやら、幼児期の性的なアレとか、大人になれない子供たちが寄り添って、甘え合って、傷つけたり、怖がったり、すがったり頼ったりする。
草刈民代がメッチャいい、見事なダメ女っぷりが素晴らしい。

人生を感じさせる陰すらも魅力的に映る絶妙なあばずれ感を、草刈民代が完璧に表現している。
単に自堕落だったり淫らだったりするわけではなく、涙も枯れ果てたような哀しさ、死ぬのが面倒だから生きているだけというような虚無感をまとっていて、その達観っぷりがすごい。
誰に対しても無関心な態度は全ての人に平等な寛容さでもあり、売春婦の持つ聖女的なイメージにも似ていて、痩せてて不健康なのに美人!この説得力。

どうしようもなく救いようがなくて暗い話なんだけど、なぜか明るさと前向きさがあるのが不思議で。
それこそ、あえて大人にならずに子供のままでいることを選択したかのような、なんだか絶望的に悲惨なのに異様に瑞々しい映画だった。
posted by 井川広太郎 at 22:38| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年09月08日

あなた、そこにいてくれますか

『あなた、そこにいてくれますか』(英題 Will You Be There?/2016年/韓国/配給 ギャガ・プラス/111分)



監督:ホン・ジヨン
出演:キム・ユンソク、ピョン・ヨハン、チェ・ソジン、キム・サンホ

公式サイト http://gaga.ne.jp/anasoko/
10月14日(土) ヒューマントラストシネマ渋谷 他 全国順次ロードショー


フランスの作家ギヨーム・ミュッソのベストセラー小説「時空を超えて」を韓国で実写映画化

甘ったるいタイトルの韓流ラブストーリーなんでしょって軽い気持ちで観たら、うっかり泣かされた。
冒頭で医療感動もの?と思わせて、メルヘン寄りのファンタジーに展開してからの、実はタイムトリップするSFってところに驚かされるのだが、その設定を活かし、ひと時の恋愛から愛や人生の選択を問う人間ドラマに昇華していくのが素晴らしい。

タイムトリップものだと、いまの流行は圧倒的に平行宇宙で、タイムトリップするたびにパラレルワールドが増えていくというアレ。
その点、この映画は『バックトゥーザフューチャー』のようにタイムトリップするたびに歴史を塗り替えていく設定で、つまり”正しい歴史”に辿り着くための冒険。

でも、正しい歴史って何? 正しい恋愛って何なんだろう? そもそも恋愛感情で何もかも決定していいのかな?
いや、そうではなく、僕らには家族とか友人とか仕事とか人生という重みがあって。
しかし、恋愛がどうでもいいわけでは決してなく、だとしたら、人生をかけて恋愛を問う瞬間って、どんな時なんだろう?

若い時には若い恋があるように、年を取ると大人の愛があるのかもしれない。
おっさんの心にジーンと沁みるいい映画だった!
posted by 井川広太郎 at 18:36| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年09月06日

ひかりのたび

『ひかりのたび』(2017年/日本/配給 マグネタイズ・太秦/91分)



監督・脚本:澤田サンダー
製作:小林栄太朗、畠中博英、木滝和幸
出演:志田彩良、高川裕也、瑛蓮、杉山ひこひこ、萩原利久、山田真歩、浜田晃、ほか

公式サイト http://hikarinotabi.com/
2017年9月16日(土)新宿K's cinemaほか全国順次公開!


地方都市で暗躍する不動産ブローカーの男と、そんな父に連れられ各地を転々とする娘との関係性を描く

日本人は呑気に利権を貪り、外国人が土地買収に勤しむという殺伐とした資本主義の限界集落には、悪い奴等しかいやしないが、みんな等しくかよわく、寂しく、その日を生き延びるために必死でもがいている。
そんな彼らが奏でる哀愁の協奏曲は、なんとも牧歌的だ。

テレビ番組「カンブリア宮殿」などのナレーションでおなじみで「キミサラズ」にもご出演頂いた高川裕也さん、ファッション誌「ピチレモン」の専属モデルを務めたという志田彩良さんなど、実力ある俳優たちが、“普通”という逞しさを丹念に演じていて素晴らしい。

最近は地方映画も多いけれど観光パンフレットみたいなノリの作品ばかりなので、こういう独自の切り口の作品はとても興味深い。
過去に縛られれ今を生きるた人たちの物語は、陰惨なようでいてどこか瑞々しいのだ。
素直になれない高校生カップルが自転車を押して坂道を登る長い長い長回しが、とても印象的だった。うーん、これもそれも青春なんだぜ!
posted by 井川広太郎 at 16:20| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年08月13日

パターソン

『パターソン』(原題 Paterson/2016年/アメリカ/配給 ロングライド/118分)



監督:ジム・ジャームッシュ
製作:ジョシュア・アストラカン、カーター・ローガン
製作総指揮:オリバー・ジーモン、ダニエル・バウアー
出演:アダム・ドライバー、ゴルシフテ・ファラハニ、永瀬正敏

公式サイト http://paterson-movie.com/
8月26日から東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開!


アメリカの田舎町に暮らし詩を愛するバスの運転手の”何も起きない”一週間を淡々と描く

ジャームッシュの新作観に行くと言ったら、若者に「ジャームッシュって誰ですか?」と聞かれたので、「アメリカ人が何もせずにダラダラするだけの映画を発明した人」って答えたら面白がってた

ところでこないだ武蔵野館に予備知識無く『ウィッチ』というホラー映画を観に行ったら、『パターソン』公開記念でジャームッシュのコーナーが!
そんなものあるとは知らず、うっかり『ストレンジャー・ザン・パラダイス』のTシャツを着ていってしまったので、何人かにジロジロ見られた
これはそういうグッズとかではなく、もう何年も前に発売していたUNIQLOのジャームッシュTシャツですとこの場を借りて弁明したい

そんなわけで『パターソン』を観ていたら、かつてのようにまた、詩を書くためのノートを常備したくなる
やっぱり罫線のない小型のノートに、手書きするのがいい
僕らの平凡な日常は、いつも奇跡と感動で満ち溢れていることを気づかせてくれる

予告編の制止画面が「緊急事態だ」ってとこなのが秀逸
posted by 井川広太郎 at 12:31| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年06月30日

天使の入江

『天使の入江』(原題 La baie des anges/1963年/フランス/配給 ザジフィルムズ/85分)



監督:ジャック・ドゥミ
出演:ジャンヌ・モロー、クロード・マン、ポール・ゲール

特集上映『ドゥミとヴァルダ、幸福についての5つの物語』
7月22日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
公式サイト http://www.zaziefilms.com/demy-varda/


カジノで出会った男女がギャンブルに没入しつつ恋の駆け引きを繰り広げる姿を描く

ヒドイ話で、むちゃくちゃで、シーンの半分ぐらいがカジノでルーレットしてるだけなんだけれど、なにこれ超ラブリー!な映画。
そもそも冒頭、アイリスからのジャンヌ・モローを超高速ドリーアウトしかも超長いっていう悶絶もんのワンカットで、ハートをわしづかみにされジャンヌ・モローのファムファタール感をガッツし植えつけられているので、なにがどうあっても「ぐぬぬぬ」って感じである。

ギャンブル狂の男と女のどうしようもなさに「いやいや、しかし!」と突っ込みたくなることも多々あるのだが、そのたびにミシェル・ルグランのピアノが絶妙なタイミングで流れる。
上に貼ってある『ドゥミとヴァルダ、幸福についての5つの物語』のトレイラーでも使われているわけだが、この素晴らしい曲が流れてしまうと、うっかり「ですよねー」ってなってしまう圧倒的な説得力。

うがった見方すると、そういう女のズルさを描いている映画とも言えるわけだが、にしても映像が美しい。
何気ないフィックスのカットがまばゆく、そして流れるようなカメラワークにうっとりしてしまう。
このカメラはジャン・ラビエ、ネストール・アルメンドロスの師匠とか。いやもうとにかく映像が素晴らしい。

そんなこんなでギャンブル嫌いの僕もルーレットを猛烈にしたくなってしまって困っているわけだが、とにもかくにも、音楽と映像の美しさにうっとりしながら恋の駆け引きを愉しむオシャレ映画である。
posted by 井川広太郎 at 22:40| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年06月23日

ローラ

『ローラ』(原題Lola/1960年/フランス/配給 ザジフィルムズ/88分)



監督:ジャック・ドゥミ
製作:ジョルジュ・ド・ボールガール、カルロ・ポンティ
出演:ジャック・アルダン、アヌーク・エーメ、マルク・ミシェル、コリンヌ・マルシャン

特集上映『ドゥミとヴァルダ、幸福についての5つの物語』
7月22日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
公式サイト http://www.zaziefilms.com/demy-varda/


港町で初恋の人を想い待ち続ける踊り子ローラを巡る恋模様を描く

その晩はフランスの映画監督と飲んで、僕はやっぱりドゥミが好きなんだ「ローラ」が好きなんだという話しをしていた。
で、酔って千鳥足で家に帰ったら「ローラ」の試写状が届いていたんだ!
こんなことってあるか?
嬉しくて思わず叫び、この嬉しい巡り合わせをすぐさまその監督に伝えた。

そして待ちわびた試写の日、初恋の人に再会するようなウキウキした気持ちで会場に駆けつけた。
いつもはしかめっ面のおじさま達も、なんだかこの日ばかりはみんなニコニコしていたのは僕の勘違いなんかではないはずだ。
みんな浮かれてる、久々の上陸でキャバレーを訪れた水兵達みたいだ。

僕は「ララランド」は観ていないけれど「ローラ」を下敷きにしているのは知っている。
全てのミュージカル映画にとって「ローラ」は幼い頃の憧れの想い人であるのに違いないからだ。
「ララランド」で映画やミュージカルに興味を持った人たちが「ローラ」を観てくれることを切に願う。
僕もいつか「ララランド」を観るのを楽しみにしている。

てへぺろ案件だが、僕の監督作「キミサラズ」も「ローラ」からめちゃめちゃ影響を受けている。
公開中にある人からそのことを指摘されて、すごく嬉しかった!

実際、「ローラ」は初めて観た学生の時から何一つ変わらない眩さなのに、何度観ても全てが新鮮!
ヌーベルバーグの真珠、心の中の宝石。美しいとはこういうことだ。
posted by 井川広太郎 at 10:39| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年06月16日

海辺の生と死

『海辺の生と死』(2017年/日本/配給 フルモテルモ、スローラーナー/155分)



監督:越川道夫
製作:畠中鈴子
出演:満島ひかり、永山絢斗、井之脇海、川瀬陽太、津嘉山正種

2017年7月29日[土] テアトル新宿 他 全国ロードショー
作品公式サイト http://www.umibenoseitoshi.net/


島尾ミホの小説「海辺の生と死」や夫の島尾敏雄の小説「島の果て」などを原作にしつつ、そのミホと敏雄をモデルとし、戦争末期の奄美に暮らす国民学校教師の女と、特攻隊隊長として赴任した若者とのつかの間の激しい恋を描く

子供達の通学路が使用不能になったと兵隊さんが告げる、そんな形で戦争が忍び寄ってくる。
言葉や歌などで表される独特の文化が漂う島。
ともすれば戦時中であることすら忘れてしまうほどの長閑さのあまり、うっかりオルガンで敵国の曲を奏でてしまうような教室の”お国”は、果たしてどこにあるんだろうか。
女の業を表現する満島ひかりの熱演が際立っている。
あまりにも情熱的な愛は、もはや愛ではないのか。
それもまた静けさを破る。
posted by 井川広太郎 at 20:31| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

『丸』(2014年/日本/配給 マグネタイズ/89分)



監督:鈴木洋平
プロデューサー:池田将、今村左悶
出演:飯田芳、池田将、木原勝利

公式サイト http://www.yoheisuzuki.com/maru.html
7月8日(土)よりシアター・イメージフォーラムにて<逆輸入>ロードショー!!


とある民家の中に謎の球体が出現したことから巻き起こる不可思議な出来事を描く不条理劇

映画にはいろんな表現や可能性があるにも関わらず、昨今の映画館で観られる映画ときたら、どれも似たようなものばかりだ。
ハッキリ言うと、いま映画館で興行しているほとんどの映画は”ハリウッド映画”の真似事でしかない。

ハリウッド映画がよくできていることには疑う余地はないが、映画にはもっと色んな面白さがある。
音楽で例えるならロックだけではなく、雅楽も、クラシックも、民族音楽もあるように。
好みは人それぞれだからこそ多様性が損なわれると脆く弱くなるし、なにより、似たような映画ばかり観ていて楽しいか?正直、僕は飽きた。退屈だ。

「丸」を鑑賞中、ぶっちゃけ僕の趣味には合わず、素直には乗れなかった。
だが、どうだろう、観賞後に振り返ってみると、稀有な映画体験をしたという充実感がある。
あんな映画は今まで観たことないし、似たような映画が思いつかない。
独特な映画だからこそ、各国の映画祭で絶賛されたというのも頷ける。
万人に受けるかどうかは分からないが、「丸」という映画でしか得られない感覚、感情、感動があるのだ。
映画にはこんな表現もあるのか、こんな可能性もあるのかと、映画を観る楽しみがさらに広がった気がする。

ありふれた日常かと思いきや、ノイズのような音楽の心地よさに惑わされ、紙一重でシュールな世界へと足を踏み入れてしまい、台詞は全て言葉遊びのように分解され形骸化する中で未知の言語のような独特の響きを帯びてゆき、感覚に訴えかける細やかな演出がちりばめられたパラレルワールドは物語の定型を一切受け入れない。

ファーストフード店のように世界中どこでも同じ味が提供できるというシステムは紛れもなく偉大だ。
しかし例えば異国を訪れたのなら、その土地ならではの料理を楽しみたいという人には「丸」をオススメする。
お口に合うかどうかは分からないが、しかしきっと忘れがたき映画体験になるはずだ。
posted by 井川広太郎 at 20:30| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年06月12日

アリーキャット

『アリーキャット』(2017年/日本/配給アークエンタテインメント/129分)



監督:榊英雄
製作:間宮登良松、川村英己、野田孝寛
出演:窪塚洋介、降谷建志、市川由衣、品川祐、高川裕也、火野正平

2017年7月15日[土]よりテアトル新宿ほか全国ロードショー
公式サイト http://alleycat-movie.com/


窪塚洋介と降谷建志が演じる凸凹コンビが珍道中を繰り広げるバディムービー。
二人のカリスマが出会い手を組むという、ありそうでなかった設定だけでワクワク感を刺激する。
しかも可愛い女子を救うために長閑な片田舎から魔窟と化した東京に向かうという、ファンタジーとリアリティを横断する現代の冒険潭。
特に後半からクライマックスにかけてバイオレンスアクションの様相を呈していくのだが、そっからの演出がキレッキレで手に汗を握ってしまう。
主役の二人に負けじと個性的な登場人物が次から次に登場してきて楽しいのだが、その中でも「キミサラズ」にも出演して頂いた高川裕也さんも柔道をたしなむ政治家役で出演していて、これまた強そうでカッコいい!
posted by 井川広太郎 at 16:12| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年06月09日

マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白

『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』(原題 Madame B., histoire d'une Nord-Coreenne/2016年/韓国・フランス合作/配給 33 BLOCKS/72分)



監督:ユン・ジェホ
製作:ギョーム・デ・ラ・ブウレイ、チャ・ジェクン

公式サイト http://mrsb-movie.com/
6月10日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開!


中国で「脱北ブローカー」をする女の数奇な運命と愛を描くドキュメンタリー

めちゃめちゃ面白かった!
タイトルにある通り被写体のマダムは当初「脱北ブローカー」をしているのだが、そのインパクトあるフック「脱北ブローカー」でさえ些細なことに思えてくるほど壮絶な、女の生き様を描いている。
極限状態を描いた社会派のドキュメンタリーでありながら、一人の女の愛の物語になっているのが、この映画の魅力だ。

北朝鮮に生まれたマダムは夫と子供達を養うために中国に出稼ぎに来たつもりが、騙されて貧しい農村に売り飛ばされ、そこで中国人の農夫と事実婚状態になる。
しかし貧しさは変わらず、身分証もないため仕事も選べず、生活と仕送りのために脱北ブローカーなどもする。
そんな中、北朝鮮に残した家族が韓国への亡命を計画し、マダム自身も身分証を得るために韓国行きを目指すのだが…

めちゃめちゃ政治的な状況に追い込まれながらも、ただただ家族と共に生きるために、マダムは国々を相手に凄まじい大立ち回りをしてみせる。
苦難や抑圧や障害を乗り越え、信じられないようなタフさでサバイブしていくマダムの姿には、「お前らは生きることの重みを感じているか?」と、檻の中で飼い慣らされた観客たちに訴えかける無言の圧力がある。

そして当初は生き延びることだけを考えているような殺伐としたマダムの表情が、北朝鮮と中国との二つの家族の間で揺れているうちに、次第に女の顔になっていくのが素晴らしい。
国や国同士の争いは簡単には変えられないし変わらないかもしれないが、逞しく生きることで人々の運命は劇的に変えることができる。
そして、その勇気や活力を与えてくれるのは、いつも愛なのだ。
愛に生きる女の顔はやはり美しい。
posted by 井川広太郎 at 10:53| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2017年05月23日

十年

『十年』(十年 Ten Years/2015年/香港/配給スノーフレイク/108分)



プロデューサー:アンドリュー・チョイ、ン・ガーリョン
監督:クォック・ジョン、ウォン・フェイパン、ジェボンズ・アウ、キウィ・チョウ、ン・ガーリョン

公式サイト http://www.tenyears-movie.com/
2017年7月22日(土)よりK's cinemaほか全国順次公開


この映画が作られた時から十年後の2025年の香港を描くオムニバス映画

ストレートに政治を風刺する五本の短編が並ぶ。
近未来の香港として描かれたディストピアは『華氏451』や『メトロポリス』『未来世紀ブラジル』などを彷彿とさせ、まるで日本のことのようにも感じられ面白い。

もうちょっとエンタメした方が多くの人に受け入れられるのではないかなどと危惧してしまうが、実際この映画は超低予算のインディペンデント映画ながら口コミで劇場に行列が出来るほど話題になり異例のヒット、香港映画界に絶大なインパクトを与えたのだという。
その刺激的かつ的確に庶民の声を代弁してみせる真摯な姿勢が歓迎されたのであろうか、いずれにしろ観客は常に制作者の先を行っているからこそ、いつも新しい作品に飢えている。
あるいは、それは国家や資本の論理でしか動けないメディアへの不信感の表れなのか。

最近の日本ではインディペンデントでありながらまるでメジャー映画のような作品が多く、大学に行きながらもバイトと就活ばかりしている学生のようだ。
メジャーにはメジャーの良さや役割があるからこそ、インディペンデントにしかできなこともある。
日本でも是非、こういう映画を撮ろうという心意気のあるプロデューサーに出てきて欲しい。
posted by 井川広太郎 at 11:13| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする