2016年01月27日

マンガ肉と僕 Kyoto Elegy

マンガ肉と僕 Kyoto Elegy』(2014年/日本/配給 和エンタテイメント、KATSU-do/94分)



監督:杉野希妃
エグゼクティブプロデューサー:奥山和由
プロデューサー:中村直史、杉野希妃
出演:三浦貴大、杉野希妃、徳永えり、ちすん

公式サイト http://manganikutoboku.com/
2016年2月11日(木) 新宿K's cinemaシネマにて先行上映、2月13日(土)より全国順次公開


京都を舞台に、様々な女性とめぐり合いながら成長していく青年の姿を描く青春映画。

女優そしてプロデューサーとして活躍する杉野希妃さんの初監督作品ということで観る前は少し身構えていたのだが、正直なところ面白くて驚いた。

冒頭のマンガ的な展開もなるほどタイトルが『マンガ「肉と僕」』だからなのかと、うっかり勘違いしていた。
正しくは「マンガ肉」であって、はじめ人間ギャートルズに出てくるような骨つき肉のことなわけだが、つまりはタイトルは『「マンガ肉」と僕』であるということが分かり始めた頃から雰囲気が変わってくる。

パラパラとページをめくるように、そして過ぎ去りし日々が儚く消し飛んでいくかのようにあっさりと時間を超えて展開していく構成が、後半にはアッと驚くような質量を携えて「僕」にのし掛かってくる。
その重み、肌と身体で感じる確かな圧力。
その確かさこそが青春なんですよ、僕らが体験したことも、失ったことも全部。
過ちも、喜びも、その全部を包み込む何かも、きっと。

少しデフォルメされた世界も青春こそが持つちょっぴり肥大化した自意識の表れであって、涙が乾いた後のような爽やかさがこの映画には満ち溢れている。
そこに鴨川を吹く風を感じずにはいられないのである。

あと、後半に登場するちすんが可愛すぎて俺、病みそう。
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2016年01月23日

ビューティー・インサイド

ビューティー・インサイド』(原題 The Beauty Inside/2015年/韓国/配給 ギャガ・プラス/127分)



監督:ペク
出演:ハン・ヒョジュ、パク・ソジュン、上野樹里、イ・ジヌク、キム・ジュヒョク

公式サイト http://gaga.ne.jp/beautyinside/
2016/1/22(金)より全国順次公開


目覚めるたびに姿が変わってしまう男が、運命の恋に落ちるラブストーリー

超よかった!
奇妙な設定を構築していく前半、そしてそこから真実の愛というテーマに展開していく中盤、ずっとドキドキしっぱなしだった。
奇想天外な主人公を映画的に表現する遊び心、奇抜なエピソードで物語を紡いでいく緻密さ、丁寧に作られた世界と映像が贅沢で心地いい。

日ごとに姿を変わるのを、別の俳優が演じることで表現するので、とにかく、たくさんの俳優が出てくるわけだが、みんな個性的で面白い。
韓国人の友人に聞くと、みなさんとても有名な俳優さんなんだそうだ。
実際、とても達者で飽きさせない。

突っ込みどころはあるっちゃいっぱいあるけど、テンポの良さと正々堂々としたラブストーリーの前では、そんなの野暮でしかない。

ラストも、そりゃないだろうという展開ではあるんだけれども… ラストのラストに現れるカットの素晴らしさに、うーん…技あり!お見事!!って感じで参りました。
こういった特異な設定の映画は矛盾が生じてしまうのでラストはなかなか上手くいかないもんなんだが、そんな小さなことを吹き飛ばすような映画的なカットの連続がなんとも爽快。
こりゃ予想しなかった。カッコイイからあり!

そしてそして、なによりも、ハン・ヒョジュが可愛すぎてヤバい。
ヤバい。ヤバいヤバいヤバい。僕は病気になってしまった。
映画を観ながらずっと胸が苦しくて、この苦しみから一刻も早く解放されたいがそれでもずっと観ていたい!!とスクリーンを見つめながら悶絶していた。
夏目雅子と原田知世と深田恭子が一緒にウチに遊びに来たようなトキメキ。
ハン・ヒョジュの可憐さと美しさと逞しさが、この繊細な映画を成立させている。
ヤバい、思い出すだけで病みそう。だって可愛いんだもん。そりゃ患うわ。
そんなわけで、いま世界で一番好き。好きだー!!!
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2015年11月20日

放浪の画家ピロスマニ

放浪の画家ピロスマニ』(原題 Pirosmani/1969年/ソ連/配給 パイオニア映画シネマデスク/日本初公開1978年9月15日/87分)



監督:ゲオルギー・シェンゲラーヤ
製作:スサナ・クバラツヘリア
出演:アフタンジル・ワラジ、アッラ・ミンチン

公式サイト
11月21日から岩波ホールほか全国で順次公開


グルジアの国民的画家ピロスマニの半生を描いた伝記映画。

加藤登紀子が歌った「百万本のばら」のモデルであったり、ピカソが絶賛していたりと、何かと逸話が多いにも関わらず世界的にはあまり有名というわけではないのだが、グルジアでは母国の風土と気風を描き残した画家として、とても愛されているらしい。

自由奔放なピロスマニが個人的な愉しみとして描いてきた絵が突然、中央画壇に取り上げられ注目された直後に今度は吊るし上げを食らったりと、お人好しゆえか散々に振り回される波乱万丈の人生を描いている。
そんな繊細かつ朴訥としていて人間味に溢れた人物像は、紛れもなく愛すべき存在だ。

極めてシンプルでありながら、今までに見たことがないような独特で異様な映像が凄まじい。
それこそ異国の地で今までに味わったことがないワインかチーズを振舞われたような、そんな贅沢かつ豊潤な体験である。
最初はちょっと驚く、なにこれ食べたことない、美味しいのか不味いのかも分からないのだが、それもそのはず、次第にそれが全く新しい味覚と感動であることに気付かされる。
僕らはまだまだ新しい映画を観るチャンスが沢山あるし、近くの映画館でこんな体験ができるなんて本当に贅沢だしありがたいし尊い。

圧倒的なダンスのシーンの迫力たるや、心が震え魂で泣けるかのようですらある。
その美しい映像はピロスマニの絵をも彷彿とさせ、クライマックスに向けて見事な近似曲線を描いていく。
素朴で親しみやすく時には滑稽に見えるのに、しかし神聖で高貴で気高く、イコンを眺めているような不思議な穏やかな心持ちにさせてくれる。
クライマックスで復活祭の絵が登場した時、僕はアッと声を上げ腰を抜かしそうになったよ。
そしてラストカットのあまりに映画的なアレを目の当たりにすると、もはや感涙にむせぶしかないのである。
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2015年11月18日

アレノ

アレノ』(2015/79分/配給 スローラーナー)



監督 越川道夫
出演 山田真歩/渋川清彦/川口覚/内田淳子/遊屋慎太郎/諏訪太朗

公式サイト http://www.areno-movie.com/
2015年11月21日より、新宿 K's cinemaにてロードショー


エミール・ゾラの「テレーズ・ラカン」を下敷きに、愛人と共謀して夫を殺した人妻の姿を描くラブストーリー。

やっぱりフィルムっていいなと素直に思ったし、この映画に嫉妬するのはきっと僕だけではないはず。

かつてのピンク映画がそうであったようにとてもシンプルで、ほとんど物語らしい物語もないのだけれど、人物がとても強く美しく描かれていて、否応無く引き込まれる。

設定もよく分からないのだけれど、登場人物たちはとても素敵だ。
それこそ名前も職業も年齢も知らぬような初めて会ったはずの他人に目が釘付けになるみたいに、そんな、なんだろう、一目惚れとはまた少し違っても確かに虜にさせる類まれな魅力を彼らはたゆたえている。

繰り返されるラブシーンがどれも扇情的で素晴らしい。
生きている喜びと哀しみを同時に映し出してみせるのがラブシーンだと僕は思うのだが、そういう意味で久しぶりに本物のラブシーンを堪能した気がする。

刹那に消えてしまう儚い衝動というか、名もない微かな感情というか、なんというか匂いとか味とか肌触りとか、湖を流れる冷たい空気というか、そういう、映っているはずのない色々を感じさせてくれる映画であった。
僕はこういう映画が好きだし、こういう映画を撮りたいとずっと思っていたことを思い出した。
posted by 井川広太郎 at 22:42| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年11月06日

フランス組曲

なにこれメチャクチャ面白かった!


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2015年10月10日

顔のないヒトラーたち

顔のないヒトラーたち』(原題 Im Labyrinth des Schweigens/2014年/ドイツ/配給アットエンタテインメント/123分)



監督:ジュリオ・リッチャレッリ
製作:ヤコブ・クラウセン、ウリ・プッツ、サビーヌ・ランビ
出演:アレクサンダー・フェーリング、フリーデリーケ・ベヒト

公式サイト http://kaononai.com/
10月3日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町&新宿武蔵野館(モーニング&レイトショー)ほか全国順次ロードショー


戦後、復興しはじめたドイツで、当時まだ秘密にされていたアウシュビッツでの犯罪に気づいた若き検事が、様々な苦難を乗り越えて裁判に臨んだという史実を基にした、社会派エンターテイメント。

めちゃめちゃ重い実話を、とっても面白いエンターテイメントに仕上げた、珠玉のサスペンス。
思わず、ダンケ!と言いたくなってしまった。

出世と幸せな結婚しか考えていなかった若い検事が偶然、アウシュビッツでの事実を知ることになる。
当初は信じられず、受け入れられないが、多くの当事者と触れ合う中で、次第に確信に変わっていく。
そして無知であった己を恥じ、加害者達のあまりの非道さに怒り、真相を探ることに自分の全てを捧げていくようになる。
しかし、姿を見せぬ者たちによってアウシュビッツは何重にも秘められ守られていて、謎を解くことは容易ではない。
誰が敵なのか、味方なのかも分からなくなっていき、疑心暗鬼が広がっていく。
捜査は思うようには進展せず、職場での立場も危うくなり、さらに私生活すら脅かされていく中、彼が下した決断とは…!!

巨大な組織を前にして無力感に苛まれながらも、しかし一人の勇敢な行動が多くの仲間の決起を促し、少しずつだが確実に大きな変化を生み出していくというストーリーに、素直に感動した。
そうだよな!本当に、その通りだよな!たとえ最初は孤独であっても、信念と勇気を持って諦めずに行動し続けるしかないんだよなって、心から思った。

ところで、この映画はサスペンスで、全編に独特の怖さが漂っているのだが、その恐怖感を演出するテクニックとして敵が全く映らない。
それどころかアウシュビッツの史実も、ほとんど証言によってのみ展開し、物的証拠が映らない。
それによって、まるで主人公は黒い霧に立ち向かうような、悪夢と対峙しているような、異様な雰囲気が立ち込めていてる。
そう、まるでハネケの『白いリボン』(09)のような目に見えぬ圧倒的な怖さが潜み、うごめいているのだ。
そう考えるとガチに怖くてブルってしまうのだが、なんというかドイツ映画ならではの凄みなんだと思う。
posted by 井川広太郎 at 00:13| Comment(0) | TrackBack(1) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年10月09日

ハーバー・クライシス 都市壊滅

『ハーバー・クライシス 都市壊滅』(原題:痞子英雄 黎明再起 Black & White: The Dawn of Justice/2014/台湾/配給 ツイン/126分)



監督:ツァイ・ユエシュン
出演:マーク・チャオ、ケニー・リン、ホアン・ボー、チャン・チュンニン

公式サイトhttp://www.harborcrisis-movie.net/
10/10(土)からシネマート新宿ほかにて全国順次ロードショー


正反対の性格の二人の刑事が、台湾の湾岸都市を壊滅させようと企む悪党と対決する、バディもののアクション映画。

もともとはテレビドラマとして人気を博し、それが映画化され大ヒットして、今作はその続編とのこと。
そりゃまあ、なんとなく「シリーズものなんだろうな」とは予感させつつ、キレのいいアバンタイトルから予備知識が無くても十分に楽しめる疾走感全開。
ド派手なアクションを支えるCGの使い方も巧みで、最小限で最大限の効果を生み出していて素敵。

これは意外な掘り出し物かもと思って見ていたのだが、中盤から不可解な設定や意味不明な人物とかが立て続けに出てきて、すっかり着いていけなくなる。
この辺りは、前作などを見ていれば分かることなのだろうか、どうだろうか。

極め付けは、ラスボス。
え?この人がラスボスなの?と拍子抜けするようなダメダメな感じ。
なのに無茶して唐突に主人公とアクション対決し始めるのだが、それまた思わず「おじーちゃん、ガンバレ!!」と応援したくなるような頼りなさ。
謎の捨て台詞まで微妙で、これでいいのだろうかと困惑しつつ鑑賞後に調べたら、なんとラスボスを演じているのは本作の監督自身とのこと。
わりと今年最大級の衝撃。

台湾に舞い降りた三番目の天使ことチャン・チュンニンちゃんが出演していて、相変わらず破天荒な癒しパワーを発揮している。
そんな、アジア・バッケンレコード級のヒーリング力を持つチャン・チュンニンちゃんも、監督自ら演じるラスボスとの謎なシーンでアレされてしまうのである!!
いかん、いろいろ書いてたら、なんだか、ものすごくもう一回観たくなってきた。
posted by 井川広太郎 at 13:13| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年09月30日

カプチーノはお熱いうちに

『カプチーノはお熱いうちに』(原題 Allacciate le cinture/2014年/イタリア/配給 ザジフィルムズ/112分)



監督:フェルザン・オズペテク
出演:カシア・スムトゥアニク、フランチェスコ・アルカ、フィリッポ・シッキターノ、カロリーナ・クレシェンティーニ

公式サイト http://www.zaziefilms.com/cappuccino/
9月から、シネスイッチ銀座ほか全国公開


カフェでアルバイトをしている女が運命的な恋に落ち、結婚して子供にも恵まれた13年後、幸せの絶頂で病魔に蝕まれるというヒューマンラブストーリー。

オシャレ感全開でテンポよく進む物語が、あり得ないぐらい唐突かつ大胆に転調するのに驚かされるのだが、そこで発生する大幅な時間経過が見もので、本当にタイムトンネルを抜けたかのようにすら感じられる。
というのも俳優陣が、実際に歳をとったかのように、外見が一変しているのだ。
CGでも老けメイクでもなく、撮影期間が10年に渡っているわけでも、別の役者が演じているわけでもないのに、その肉体から本物の老いを感じる。

個人的には、肉体をコントロールしての「体当たりの演技」とかってスゴイとは思いつつ、なんか体育会的というか、演技とは違うように感じてしまうのか、どこかスッキリしないことが多い。
しかし、本作でのそれは圧倒的すぎて、本当にビックリした。
さながら熱いカプチーノと冷めたカプチーノを一人で演じてみせるかのように、短期間で痩せたり太ったりと大変な労力と身体的な負担をかけ、10数年に渡る時の流れをリアルに体で表現してみせた俳優陣が見事の一言なのである。
posted by 井川広太郎 at 09:55| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年09月13日

3泊4日、5時の鐘

3泊4日、5時の鐘』(2014/日本・タイ合作/配給 和エンタテインメント、オムロ/89分)



監督・脚本:三澤拓哉
エグゼクティブプロデューサー:杉野希妃
出演:小篠恵奈、杉野希妃、堀夏子、中崎敏、蜿r太郎

公式サイト http://www.chigasakistory.com/
2015年9月19日より新宿K's cinemaほか全国順次ロードショー!!


小津安二郎監督が脚本執筆の際に定宿にしていたことでも知られる茅ヶ崎館に集った男女の恋愛模様を描く。

茅ヶ崎出身者として、この映画に嫉妬を禁じ得ない。
しかし同じ茅ヶ崎と言っても、僕が住んでいた辻堂の辺りと、この映画のロケ地であり海の真ん前の茅ヶ崎館の辺りとではだいぶ違うので、見知ってはいるが、どこか見慣れぬ風景を新鮮な気持ちで眺めていた。

夏!海!といったノリとはまた違うが、のんびりしていて過ごしやすい茅ヶ崎の姿を上手に背景とし描いている。
その雰囲気の中で当初は爽やかな恋愛劇と思いきや、次第に女たちがそれぞれ隠していた別の顔をむき出しにしていく様子が面白い。
対照的に、男たちが一様に大人しいところも世相を反映しているようで興味深く、いまはこういう時代なのかもしれないと考えると、なんとなく新しい恋愛映画のスタイルも見えてくるような気もする。

ひょっとしたら物語にはならないような、あわや見過ごしてしまいそうな繊細な女心を見事に掬い上げ、独特なタッチの作品に仕立てあげている。
そんなアラサー女子の機微を表現する女優陣の演技が見ごたえ十分なわけだが、その中でも堀夏子さんには驚かされた。よかったわー。ああいうのグッと来るよね。
posted by 井川広太郎 at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年08月21日

ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女

『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』(2014/A GIRL WALKS HOME ALONE AT NIGHT/アメリカ/101分)



監督・脚本:アナ・リリー・アミールポアー
出演:シェイラ・ヴァンド、アラシュ・マランディ
製作総指揮者:イライジャ・ウッド

オフィシャル・サイト http://vampire.gaga.ne.jp/
9月19日(土)新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー


死と絶望とアメリカ文化が蔓延するイランの架空の都市を舞台に、孤独に生きる吸血鬼少女と、彼女と出会うことで運命が変わっていく青年の姿を描く異色のホラー。

設定はホラーなんだけど、ボーイ・ミーツ・ガールな物語で、映画的にはジャームッシュという、ありそうでなかった、いや、無かったようであったような気もするけど、やっぱり独特な雰囲気の映画。
原題のA GIRL WALKS HOME ALONE AT NIGHTは、まさにそんな感じがよく出ていてカッコイイ。

最初、ガチでイラン映画と勘違いしていたので、ワンシーンごとに「マジで!?マジで!?」と本当に驚かされたのだが、純然たるアメリカ映画だそうで、ロケ地はアメリカのゴーストタウンらしい。
なるほど、しかし、それはそれで十分にヤバい気もする。

フックのあるログラインや、キャッチーなポスタービジュアル、そしてデフォルメされたキャラクターなどといった「世界観」で魅せる映画というのは、まだまだ可能性があるから面白いし、ジャンルものと見せかけつつ、新たな切り口を提示して、独自のスタイルを貫くこういう映画、やりたい。
posted by 井川広太郎 at 13:54| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年08月16日

天使が消えた街

天使が消えた街』(原題 The Face of an Angel/2014年/イギリス・イタリア・スペイン合作/配給 ブロードメディア・スタジオ/101分)



監督:マイケル・ウィンターボトム
製作:メリッサ・パーメンター
出演:ダニエル・ブリュール、ケイト・ベッキンセール、カーラ・デルビーニュ

公式サイト http://www.angel-kieta.com/
9月5日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開


国際的なスキャンダルとして注目を浴びる「英国人女子留学生殺害事件」の映画化に取り組む映画監督が、裁判が行われている現地イタリアで取材中に出会う女たちに翻弄され、数奇な運命に巻き込まれていくというファンタジックな社会派ドラマ。

映画の冒頭で示されるように、本編はダンテの『神曲』をモチーフにしている。
そして驚くことに劇中でも、”実際にあった英国人女子留学生殺害事件”の映画化に取り組んでいるはずの主人公が、その映画の構造は神曲からインスパイアされているということをハッキリ口にする。
なんとも複雑に入り組んだ映画だ。

劇中で、映画監督が構想をプレゼンするシーンがあるのだが、”作品”について語り合いたい彼の一言一言を切り取り、プロデューサーたちは配役やプロモーションについてばかり意見を言い、すれ違ったまま建設的な話し合いは出来ず、主人公は深い溝を感じるというシーンがある。
確かに、”映画あるある”ではあるけれど、いや、しかし何なんだ。

そういったもろもろを踏まえると、「英国人女子留学生殺害事件」をスキャンダルな映画にするようオファーされたマイケル・ウィンターボトム監督が、苦悩の末、自らの葛藤をそのまま映画化したような、そんな話なのではないかと邪推してしまうぐらい、奇妙な作品だ。

にしても、『神曲』がどこから出てきたのか、よく分からない。
イタリアだからなのか。そうでもしないとフォルムが見つからなかったのか。そこまで苦しんだのか。絶望の底で何を見たというのか。そして一体、誰がベアトリーチェなのか。

とにもかくにも、ケイト・ベッキンセールがイイ女すぎてヤバい。
これでもかというぐらい美女ばかり出てくる映画ではあるが、ケイト・ベッキンセールの溢れ出る大人の色気がマジでハンパ無くて比類無きほどに圧倒的である。

それにしても映画監督って、映画の中ではみんなモテてるよね。
うらやましいなあ。
posted by 井川広太郎 at 13:02| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年08月03日

最後の1本 ペニス博物館の珍コレクション

最後の1本 ペニス博物館の珍コレクション』(原題 The Final Member/2012年/カナダ/配給 ギャガ映像事業部/73分)



監督・製作:ジョナ・ベッカー、ザック・マス

公式サイト http://saigo-no-ippon.gaga.ne.jp/
8月8日(土) シネマカリテほかにて順次ロードショー


アイスランドに実在するあらゆるほ乳類のペニスを展示している博物館に唯一チン列されていない人間のペニスの座を巡って、創設者である館長と、元アイスランド一のプレイボーイである老人、そして世界一のペニスも持つと自称するアメリカ人の3人が壮絶な駆け引きを繰り広げる姿を追ったドキュメンタリー。

メチャメチャ面白かった!!
完全にイカれた3人が、大真面目にペニスについて熱く語り、自らのプライドを賭け、そして人生をペニスに捧げる。

劇中で館長が言っている通り、ペニスについて語ることがタブーになっているのはおかしい。本当にそう思う。
けど、40年間もペニスの収集してペニス博物館を作ってしまうのも、完全にどうかしてる。
自分はアイスランド一のプレイボーイだと吹聴するのも、自分のペニスは世界最高だと信じるのも、完全にクレイジーだ。
そんな、どうかしている連中が、名誉と栄誉という私利私欲の果てにペニスという固い絆で結ばれ、お互いのことを尊敬し、ライバルとして競い切磋琢磨し、時には語り合い、そしてウザくなったら罵り合う、人間味に溢れた姿が非常に魅力的だ。
こんなの見ていて面白くないわけが無い。決して関わりたくはないけれど。

実は元教師というペニス博物館館長が、博物館の運営と同時進行で宣教師の本の翻訳やキツネの研究本の執筆もしているというのに驚かされる。
人口たった30万人のアイスランドだが、国民それぞれがこうして八面六臂の活躍をすることで成り立っているのだろうか。
さらにアイスランドには、ペニスの「法的な長さ」を規定したという伝承があるとかなんとか、これも冗談なのかと思っていたのだが劇中、最後の最後まで気にしているので、意外と本当なのかもしれない。
なんだか色々と大丈夫なんだろうか、マジで。

面白い奴らの魅力をありのままに描いているようでいて、実は撮影もすこぶる上手いし、特にドキュメンタリーでありながらノリのいい作劇的な編集で見やすく分かりやすく面白く魅せていくテクは圧巻。
なんだかホント、隅々まで出来が良くて、思いっきり楽しめるチン品にして傑作だった。
posted by 井川広太郎 at 10:56| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年07月18日

共犯

共犯』(原題:共犯 Partners in Crime/2014/台湾/ザジフィルムズ/89分)



監督:チャン・ロンジー
出演:ウー・チエンホー、トン・ユィカイ、チェン・カイユアン、ヤオ・アイニン、サニー・ホン

公式サイト http://www.u-picc.com/kyouhan/
7月25日から新宿武蔵野館ほか全国順次公開


少女が謎の死を遂げた現場に偶然、居合わせた3人の男子高校生が、彼女の死因を探っていく学園ミステリー。

同じ校舎にいてもお互いに無関心で、交わるはずの無かったイジメラレっ子、ガリ勉、悪ガキの3人が、同じ学校の生徒が死んだ場に居合わすという偶然から、一緒にその謎を探っていくことになる。
なるほど、謎解きの中でお互いに理解していくというストーリーなのか、なんて想像してたら、予想外の展開でマジでビビった。

やはり侯孝賢の『恋恋風塵』(87)のせいなのか、台湾の学園ものというだけで観る前からワクワクしてしまう。
他にも『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』(91)など台湾の学園ものには傑作も多いのだが、最近だと『あの頃、君を追いかけた』(11)などポップさ全開で、過去の作品とは大分、毛色が変わってきたと思う。
他国のエンターテイメント作品と大差ないと、台湾映画としての強い個性が感じられずに物足りないが、それでも古くて趣きある校舎とか、学籍番号が胸に縫い付けられた白いワイシャツの制服とか、台湾ならではのディテールが映るだけでも萌える。

そして、死んだ少女のクールで儚い謎めいた美しさに始まり、捜査線上に浮かび上がる女生徒の爽やかで健康的な魅力、そしてこれぞ妹キャラって感じのキュートな妹など、次から次に美少女が登場し、それぞれが個性的で素晴らしい。
あと、カウンセラーの先生も、ちょっとしか映らないのにメッチャ綺麗で妙に存在感があって良かったなあ、などと思ってプロフィールを見てみたら、『一年之初−いちねんのはじめ−』(06)の主演の人だった。懐い。
posted by 井川広太郎 at 00:09| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年07月13日

チャップリンからの贈りもの

チャップリンからの贈りもの』(La rancon de la gloire/2014/フランス/配給ギャガ/115分)



監督:グザビエ・ボーボワ
撮影:カロリーヌ・シャンプティエ
音楽:ミシェル・ルグラン
出演:ブノワ・ポールブールド、ロシュディ・ゼム、キアラ・マストロヤンニ

オフィシャルサイト http://chaplin.gaga.ne.jp/
7月18日から東京・恵比寿のYEBISU GARDEN CINEMAほか全国で順次公開


チャップリンの遺体を盗み出して身代金を要求するという、実際にあった奇妙な事件を元にしたヒューマンコメディ。

主役の二人の男たちは金もなくて貧しくて、色んなことが重なって確かになんだか大変そうではあるが、とても優しくて賢くて、娘は可愛いし、そして間抜けでいい人過ぎるから犯罪はまるで似合わない。
そんな彼らが、なんとも下らない犯行を企てるという時点でバカバカしい。
無理しちゃってる背伸び感が、計画を実行する過程でのドジとミスの連続とドタバタにつながっている。
いや、おまえらには無理だよ!止めとけよ!と思わず叫びたくなる。

にしても、遺体を盗まれたと脅迫電話を受けた遺族が、もう死んだんだからと取り合わずに電話を切っちゃう下りが痛快。
この冗談みたいな話が史実らしいのだが、さすがチャップリンの家族としか言いようがない。こうありたいものである。
で、劇中では寡黙な執事が亡き主人の遺体を回収するために尽力するわけだが、この執事の忠誠っぷりがまたかっこ良かったりする。
登場人物の中で唯一、ダークサイドを匂わすところがまた渋味を効かせている。

なにより、それら全てを踏まえたコトの顛末が、なんともチャップリンならではの処理になっていて、なるほどという感じ。
冒頭から映画音楽が強烈で、なんという巨匠感と驚いたら、ミシェル・ルグランとクレジットされ、これまた納得。
ところで、劇中でチャップリンの映画の一部が出て来るのだが、とにかく続きが見たくなっちゃって困った。
posted by 井川広太郎 at 14:54| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年06月28日

ブラフマン

ブラフマン』(2015/配給:プレシディオ/日本/118分)



監督・撮影:箭内道彦
出演:TOSHI-LOW(BRAHMAN)、KOHKI(BRAHMAN)、MAKOTO(BRAHMAN)、RONZI(BRAHMAN)、横山健、りょう、井浦新

オフィシャルサイト http://brahman-movie.jp/
7月4日(土)新宿バルト9ほか全国公開!


ハードコアパンクバンド「BRAHMAN(ブラフマン)」が曲を制作する過程を追いつつ、インタビューを中心に構成されたドキュメンタリーで、クリエイティブディレクターである箭内道彦の初監督作品。

バンドって良いよね。バンド。バンド組みたい、バンド。楽器もできないし、音痴だけど。バンド組んでみたい。
けど、無理なんだろうなと、薄々感づいている。色んな意味で。映画が関の山であり、それが向いているんだとも思う。

でもバンド的なつながりや関係性は素直に羨ましいし、嫉妬する。良いなあ、ああいうの、良い。
当然いろいろメンバー間のあーだこーだとかあるんだろうけど、ギター鳴らせばあーねみたいな。
そこまで単純じゃなくても、しかしやはり何にも例えようがなく、バンドはバンドという概念で成立しているんだと思う。
なんか羨ましいからバンドを映画にしてやりたいとか考える。

そんなわけで『東京失格』も『恋人たち』もバンドの話だし、必ずスタジオなどで練習してたり演奏するシーンが出てくる。
元々は学生時代に作った『言語論』という言語とコミュニケーションがテーマの短編で、知人のバンドが部室で練習している様子をドキュメンタリー的に撮らせてもらったのが始まり。
バンドメンバーがアイコンタクトしたり、音で語り合う様子とか、ダベリながら楽器のセッティングとかしていたはずが「いつもの感じで」自然と演奏をスタートさせる流れとか、なんかそういう音に溢れた肉体的な非言語コミュニケーションがカッコ良くて、とても興味深くて、カメラを向けながらハアハアしていた。
そういえば、監督作『キミサラズ』もバンド…じゃないか、いやある意味バンドなのか、いや違うか、しかし物語の中にも音楽的なコミュニティの要素は強くあるような気がする。

ところで最近、どうやら映画は他所者同志だからこそ成立するんじゃないかと思っている。
撮る側と撮られる側も、スタッフ同志も、作り手と観客も、映画と自分も、みんな違うところから集まってきて他人として接するからこそ成立するような気がするのだ。
で、音楽はその逆なのかもしれない。一体感あるいは家族的といった…あ、いや、よく分からないや。この話はなし。
とにかくバンドは良いよね、バンド。バンド組んでみたい。
そして脱退とか新加入とか解散とか再結成とかもしてみたい。
posted by 井川広太郎 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年06月14日

オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分

オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』(原題Locke/2013年/イギリス・アメリカ合作/アルバトロス・フィルム/86分)



監督:スティーブン・ナイト
製作:ポール・ウェブスター、ガイ・ヒーリー
出演:トム・ハーディ

公式サイト http://www.onthehighway.net/

2015年6月27日(土)YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次ロードショー


夜のハイウェイを走る車を運転する男が、妻や子供といった家族、そして仕事先の上司や部下などと電話をかわす中で、危機的な状況に置かれていることが明らかになっていく一人芝居の密室サスペンス。

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のトム・ハーディが演じる主人公の、建築現場の責任者という設定が粋でカッコいい。
巨大な建築物の基礎工事で大量のコンクリートを流し込むという、極めて高度で緻密で現代的でありつつ、ハイテクなんだかアナログなんだか、なんとも生々しい設定がとても効いている。
しかし、車載電話?というのか、カーナビの部分がそのまま電話になっているアレ、あまり見かけたことないけど一般的なのだろうか。
超プレイスメントされてるから、うっかりスポンサーなのかと勘ぐってしまうが、いずれにしろ、あれこそ数少ない「現代」のアイコンとして映っているはずである。
なのだが、とってもSFチックだし、合理的なようでいてナンセンスな香りがプンプンするし、チカチカする電飾がナイトライダーみたいで、むしろレトロな懐かしさを感じた。


ところで、今日でシネマート六本木が閉館するらしいです。
最近は主に試写でたびたび訪れていたので、ここ数年では実は一番数多くの映画を観た劇場かもしれません。
そんなわけで、僕がシネマート六本木で最後に観た映画が『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』になりました。

あ、そしてそして、『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』の封切りは今月末、復活した映画館YEBISU GARDEN CINEMAなんですね。
なんという、なんという映画愛streams(シネマ・ラブ・ストリームス)。
posted by 井川広太郎 at 14:31| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年06月11日

ローリング

ローリング』(2015/日本/配給マグネタイズ/93分)



監督・脚本:冨永昌敬
出演:三浦貴大、柳英里紗、川瀬陽太

オフィシャルサイト http://rolling-movie.com/
2015年6月13日(土)より新宿K'scinemaほか全国順次ロードショー!


かつて女子更衣室を盗撮して学校から追放された元教師が久々に地元に戻って来て、教え子たちを巻き込んでの大騒動を引き起こすコメディ。

試写でも好評なようで既に傑作の呼び声も高い、冨永監督入魂のオリジナル作品。

柳英里紗がエロい。三浦貴大と柳英里紗のラブシーンが素晴らしくエロい。
ラブシーンと言ってもイチャコラしているだけではなく、実際イチャコラしているわけだが、それだけではなく、単に手が触れ合うだけ、見つめ合うだけ、一緒の空間にいるだけといった些細な瞬間にまで、エロティックな雰囲気が漂っている。

アホでカワイクてエロい女という、どうしようもなくチャラい魔性っぷりを柳英里紗が完璧に醸し出している。
なんとも映画的なファム・ファタールである。
ズルいとか、悪いとか、上手いとかそういう作為的なのではなく、柳英里紗はすごくちゃんとダラしないのが良い。
こんなダラしない女に巻き込まれてはダメだと分かっていながらも、男ならうっかりハマってしまうものである。
傾城とかそういうのよく分からないけど、外見どうこうより、こういうダラしない人だったんじゃなかろうか。
そう錯覚させるほど、ダラしがない。

なので、柳英里紗と川瀬陽太とのダメな絡み合いはダラしがなさ過ぎて、緊張感の全く正反対の状況であり、手に汗握るの対局的なユルさであって、全くもって息を呑むほどのダメさである。
組んず解れつ二人が渦のようになって流転していくダメさは常軌を逸しているし、しかし誰もが共感できるような人間の本質を鋭く突いているなんて勘違いさせるほどのダラしなさである。

だが、そんな柳英里紗も、ちゃっかし地味な痛みを背負っている。
冒頭から、じくじくと痛み続ける足の小指の傷、誰もが経験ある足の小指をぶつけた時の痛烈な記憶が、この作品の筋になっている。
にも関わらず、小さな傷を庇う柳英里紗のその足や手の艶かしさに、助平な男たちはついついすっかりはぐらかされてしまうのだ。

いやしかし、おしぼり工場って面白い。こんな世界があったとは。
意外なほど巨大な施設であることに驚かされるが、なるほど、劇中の舞台でもあるキャバクラや喫茶店やレストランなど無数の飲食店と繋がっていることを考えるとその規模にも納得、なんとも奥が深く、むしろ宇宙的な広がりさえ感じる。
そのおしぼり一つ一つが順にベルトコンベアーの先で延々と包まれていくさまを妄想すると、確かにローリングとしか言いようがないのである。
posted by 井川広太郎 at 11:27| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年05月27日

アリエル王子と監視人

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あのくまモンさんとアピってカンヌでも話題になった稲葉くん監督作の「アリエル王子と監視人」を鑑賞。
お忍びで熊本を訪れた某国の王子が、特命を受けて張り付く美女とかすかに心を通じ合わせながら過ごす日々を描く。
主役の王子がいつも笑っていて、ご覧の稲葉監督さながらで微笑ましい。
7月11日(土)より渋谷ユーロスペースにて公開!

ちなみに、俳優でもある稲葉くん出演作の「息を殺して」も6月20日(土)より渋谷ユーロスペースにてレイトショー!
この、真夏の稲葉祭りに乗り遅れるな!!

posted by 井川広太郎 at 18:58| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年05月10日

真夜中のゆりかご

真夜中のゆりかご』(原題En chance til/2014年/デンマーク/配給ロングライド/102分)



監督:スサンネ・ビア
脚本:アナス・トーマス・イェンセン
出演:ニコライ・コスター=ワルドウ、ウルリッヒ・トムセン、マリア・ボネビー、ニコライ・リー・カース

5月15日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
公式サイト http://www.yurikago-movie.com/


幼子を亡くした刑事が、愛する妻のために無謀な計画を実行することから予想外の展開に巻き込まれて行くサスペンス。

面白かった!
育児ストレスという現代的なテーマを扱う社会派のドラマでありながら、よく出来たサスペンスとしてエンターテイメント性が非常に高い。

荒唐無稽なストーリーを、時には圧倒的な説得力を持って、そして時にはギャグになるスレスレのラインを勇気を持って描く手腕は見事。
物語はシンプルで展開も単純なのに、緊張感溢れる巧みな演出でギュッとハートを掴み、一瞬たりとも飽きさせず、すっかりお腹いっぱいにさせてくれる。
その肝要はなんといっても本作でもやはり、役者がノリノリなことなのである。

主役はもちろん、ちょいと映る端役にもこってりとしたクセがあって、話の筋とは全く別のところでもギンギンに琴線に触れてくる。
登場人物それぞれに人生と生活があるんだって想像力をかき立ててくれるから堪らない。

唐突に出てくる長距離トラックの運ちゃんとか、通り過ぎずにそのまま物語の中枢に居座っちゃうんじゃないかってぐらいの存在感があって引き込まれる。
でもそれは偶然なんかじゃないってことは、この作品のアイコンとして様々なところに配置されている電飾が、彼のトラックの中でもキラキラ輝いていることからハッキリと分かる。

さり気なく凝りに凝った衣装と美術とか丁寧に作り上げた世界観の中で、俳優たちが活き活きとしている様がなんとも楽しい。
それはまるでガラス張りの家で生活する一家のようですらある。

育児ストレスは、核家族化が進んだ現代では非常に深刻な問題だと思う。
それに真正面から向き合いながら、決して重くならず、むしろ軽やかに、誰でもハラハラドキドキを楽しめるようなエンターテイメント性の高いサスペンス映画に仕上げている点が素晴らしい。
posted by 井川広太郎 at 19:08| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2015年04月14日

海にかかる霧

海にかかる霧』(原題 海霧 Haemoo/2014年/韓国/配給 ツイン/111分)



監督:シム・ソンボ
製作:ポン・ジュノ、チョ・ヌンヨン、キム・テワン
製作総指揮:キム・ウテク
出演:キム・ユンソク、パク・ユチョン、ハン・イェリ、イ・ヒジュン、ムン・ソングン

公式サイト http://www.umikiri-movie.com/
2015年4月17日(金)〜TOHOシネマズ新宿にて先行上映決定!以降、4/24-(金)〜全国ロードショー!


難民を密入国させる仕事を請け負った漁船の中で、船員たちの思惑が交錯することで歯車が狂っていくサスペンス。

「殺人の追憶」の監督であるポン・ジュノによる初プロデュース作品で、「殺人の追憶」の脚本家シム・ソンボの初監督作品とのこと。
とてもじゃないが、初監督作品とは思えない、圧倒的なクオリティと完成度で唸らされる。
恐ろしい。
これほどの才能をもった人材が次々に出てきて、そして監督デビュー作に膨大な資金を注入できるという韓国映画界のパワーが心底、羨ましい。

作風の方はというと、どうも全編に漂う恨み、欲望、復讐といったあの陰鬱さが苦手で、ラストの微妙な雰囲気も「殺人の追憶」のような後味で、正直、僕は好みではない。
とはいえ、それぞれ事情を抱えた男たちが船に乗り込み、トラブルの火種を抱えていざ出航!なんて、ワクワクせずにはいられないのだ。
圧倒的なサスペンスで冒頭からグイグイ引き込まれ、怒濤のような中盤は息つく暇なくドキドキさせられ、クライマックスに向けてハラハラしっぱなしである。
痛みや匂いを実感させる演出も秀逸。
監督を始めとしたマエストロのようなスタッフたちと、活き活きとしかし精密な演技を繰り広げるキャストたちが作り上げた極上のエンターテイメントであり、「殺人の追憶」が好きな人なら必見の一作であることに間違いはないと思う。
posted by 井川広太郎 at 13:17| Comment(0) | TrackBack(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする