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12/23『東京失格』上映@アップリンク

5/20〜監督作「キミサラズ」公開@下北沢トリウッド



2018年04月22日

四月の永い夢

『四月の永い夢』(2017年/配給ギャガ・プラス/93分)



監督:中川龍太郎
製作総指揮:石川俊一郎, 木ノ内輝
出演:朝倉あき 三浦貴大 川崎ゆり子 高橋由美子 青柳文子 志賀廣太郎 高橋惠子

公式サイト http://tokyonewcinema.com/works/summer-blooms/
5月12日(土) 新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー


いまは亡き恋人からの手紙を受け取ったことで、揺れる女の心情を繊細に描く

この映画の舞台は国立市。僕にとっては学生時代を過ごした特別に思い入れのある街なので最初、この映画の構想を監督の中川君から聞いた時には「国立の映画を撮るなんて君には無理だ」と生意気なことを言ってしまった。
ところがどうだろう、完成した作品は見事な国立映画であった。脱帽である。

国立には良くも悪くも閉じた雰囲気があって、外界から切り離され守られているような独特の安心感があり、この映画はそういった国立の空気感を見事に捉えつつ、物語に昇華している。
出て行けそうで出て行けない、例えるなら、まだ冷える春の朝に布団に包まってグズっているような感じか。
そんな温もりに甘えてしまうようなモラトリアムは、誰にでも心当たりがあるはずだ。

そういった社会性に敏感なせいか中川君は、公衆浴場を愛し劇中でも度々使うが、本作ではさらにラジオを巧みに使っている。
ラジオは仕事や家事や移動中など、どこかで何かしながらでも聞くことができるためか聴取者それぞれの生活に馴染んでいて、生放送かつ葉書を紹介したりとインタラクティブな面もあって一体感や共有感が高い。
メジャーなものからマイナーなものまで様々な曲が流れるが、どんな曲もいまどこかで誰かが一緒に聴いているという安心感があるのだ。

であるから、ラジオを愛するヒロインが夜道で、ポータブルオーディオプレイヤーのイヤホンを耳に刺し、密かに音源で音楽を聴いて悦にいるというシーンは、なんとも甘美な背徳感に満ちている。
この曲をいま聴いているのは世界で自分独りであるという優越感、この曲はわたしだけのものなのだという独占欲、他の何も耳には入らないという自己満足、それらが禁を犯した罰でもあるかのように過去の過ちを思い出させるというのは、なんとも象徴的である。

楽しんで良いのか幸せになって良いのか、愚問のようなしかし誠実な戸惑いは、その罪悪感に蝕まれた告白に耳を傾けてくれる人を必要としていた。
ラジオのDJに懺悔の葉書を書いたのも、きっと同じ気持ちであったのだ。

主演の朝倉あきがなんとも見事。
鮮やかな情景を纏いながら瑞々しい感情を湛える映画女優を、心地よい移動撮影と躍動感にあふれた切り返しで存分に捉えた名作だ。
posted by 井川広太郎 at 12:25| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年04月19日

ストリート・オブ・ファイヤー

ウォルター・ヒルの『ストリート・オブ・ファイヤー』デジタルリマスター版が、7月21日よりシネマート新宿ほかにて全国順次公開されるらしい!
なんてこった!

伝説のロック映画「ストリート・オブ・ファイヤー」デジタルリマスター上映決定
映画.com ・
http://eiga.com/news/20180419/12/


posted by 井川広太郎 at 23:15| Comment(0) | lost in blog | 更新情報をチェックする

2018年04月17日

ラブレス

「ラブレス」というタイトルなのだから傑作であることは分かり切っていたのだけれど、その期待を遥かに上回る凄まじい映画だった。
離婚協議中の夫婦の元から息子が失踪するというシンプルな物語を、重厚なフィックスと見事な移動撮影で不穏なほど力強く描いていく。

冒頭の深い森からパンして市街が見えた瞬間に全ての予感がざわめき、トイレで息子が泣いているカットでもう琴線を鷲掴みにされる。
家庭に居場所がない幼子、これ以上の哀しみがあるのだろうか。罪人よ!

全ての人物が不確かな幸福を渇望するあまり、目の前の他者には無関心という矛盾に無自覚な、歪んだ楽園。
暖かな部屋のガラス一枚向こうは寒々とした荒野で、その幻想は壁紙一枚剥がすことで廃墟に等しい実像を露わにし、非力な彼らは自力では川さえ渡ることもできず、バリケードを立てて自分を守ろうとしても血を拭い去ることはできない。
小さな箱庭を寄せ集めて築いたバベルの塔には有形無形の境界線が張り巡らされ、人と人との距離は隔たるばかりなのだ。

スマホやSNSそしてRUSSIAと全編に散りばめられたシニカルなジョークも決して大げさとは思えない。
この寓話を誰が無視できよう。
事実、少年の鮮やかな印しは人知れず朽ちていき、いまも世界は静かに引き裂かれているのだ。

神の子はもう地上から失われたのか。
向こう側には何があるのか、それが映画だ。

posted by 井川広太郎 at 08:37| Comment(0) | lost in blog | 更新情報をチェックする

2018年04月16日

名もなき野良犬の輪舞

『名もなき野良犬の輪舞』(原題 The Merciless/2017年/韓国/配給 ツイン/120分)



監督 ビョン・ソンヒョン
出演 ソル・ギョング、イム・シワン、チョン・ヘジン、キム・ヒウォン、イ・ギョンヨン、ホ・ジュノ

公式サイト http://norainu-movie.com/
2018年5月5日(土)新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー


組織の大物と向こう見ずな若者が刑務所で出会い、手を組みながらも疑念と友情との狭間で揺れるクライムドラマ

「インファナル・アフェア」か「男たちの挽歌」あるいはジョニー・トーのノワールを彷彿とさせるが、香港映画のような裏切りの裏切りというドライなテーマも、韓国映画だとウェットな質感を帯びる。

カンヌ国際映画祭で絶賛され韓国国内の映画賞も多数受賞しているとのこと。
二人の主人公の葛藤と意外な展開で魅せようという意図は分かりつつも、そのために他の登場人物たちがちょっとご都合すぎる気がして、僕には少し難解だった。

とはいえ主演のソル・ギョングはもちろん、ハンパないチンピラ感のキム・ヒウォンや、全てが脂ギッシュなイ・ギョンヨン、まるで宇崎竜童なホ・ジュノなどアクも顔も濃い面々が次々に画面に溢れてもうお腹はいっぱい。

そんな中、紅一点のチョン・へジンが綺麗で、登場するたびに癒しになったー。
そういえば美しいマジックアワーのシーン、突っ立って台詞を言い合うだけで単調になりそうなところ、陽落ちしちゃうよ!という緊張感が漲ってハラハラドキドキとても良かった。
posted by 井川広太郎 at 23:15| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年04月12日

29歳問題

『29歳問題』(原題 29+1/2016年/香港/配給 ザジフィルムズ、ポリゴンマジック/111分)



監督 キーレン・パン
挿入歌 レスリー・チャン、レオン・ライ、ビヨンド
出演 クリッシー・チャウ、ジョイス・チェン、ベビージョン・チョイ、ベン・ヨン、ジャン・ラム、エレイン・チン、エリック・コット

公式サイト http://29saimondai.com/
5月19日(土)、ロードショー!YEBISU GARDEN CINEMA他


30歳を目前に迎えたワーカホリックな女が、全く正反対に自由奔放な人生を送ってきた同年齢の女と出会うドラマ

女優キーレン・パンがライフワークとして演じてきた舞台を、自ら監督し映画化したものらしい。
そんなわけで舞台の初演の頃の2005年の香港が舞台のようで、香港の俳優や歌手といったスターのネタがてんこ盛りになっている。

レオン・ライのモノマネしたり、ビヨンドの歌が出てきたり、懐かしかったり笑えたり。なにより、レスリー・チャンがヒロインのアイドルというのは、どうにもこうにも胸熱。
なんだけど、レスリー主演という「日落巴里」というドラマを見たことないので、そのドラマに憧れてヒロインがどうしてもパリに行きたがるというのが全く理解できない。
それが大きなドラマツルギーになっているだけに、分からないことが残念。

初めの方に出てくるバスのシーンが王家衛の「天使の涙」(95)のパロディとは分かったんだけど、それ以外はシーンとしてのオマージュはどこにも発見できなかった。
他にも香港映画に詳しい人ならクスリとくる仕掛けが色々と施されているのかもしれない。

最近は「あの頃」、つまり80~90年代の香港スターを扱った映画が多いと言われる。
当時若者だったファンたちが大人になって懐かしむようになり、あるいは制作者となっての第一線にいるからかもしれない。
台湾映画「私の少女時代」(15)なんかはアンディ・ラウの存在そのものをネタにしつつ、なおかつアンディを知らない人にもちゃんと分かるように描いていて、スターの有効活用ともいうべき映画的なダイナミズムに感動した。
posted by 井川広太郎 at 09:32| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2018年04月03日

シャーロック・ホームズ

ガイリッチーの「シャーロック・ホームズ」を見たら予想外につまんなかった
僕が大好きだったシャーロック・ホームズはこんなはずじゃなかったと「緋色の研究」を二十数年ぶりに読み直してみたら、矢張りべらぼうに面白い。やっぱこれだね!
映画もだけど、特に読書に関して最近はすっかり再読ばっか。以前に読んで良かったものを時間が経ってから再び味わう愉しみは格別

posted by 井川広太郎 at 22:35| Comment(0) | lost in blog | 更新情報をチェックする

2018年03月22日

さよなら、僕のマンハッタン

『さよなら、僕のマンハッタン』(原題The Only Living Boy in New York/2017年/アメリカ/配給ロングライド/88分)



監督:マーク・ウェブ
製作:アルバート・バーガー、ロン・イェルザ
製作総指揮:ジェフ・ブリッジス、マリ・ジョー・ウィンクラー=イオフレダ

オフィシャルサイト http://www.longride.jp/olb-movie/
4月14日(土)丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国順次公開


作家志望ながら挫折した若者が、恋や出会いを通じて、父と母との葛藤を乗り越え成長していく姿を描く

文学への愛情深い、王道的な成長物語
主人公の苗字が監督と同じだし、格段の思い入れがあるのかも

現在のNYを舞台にさえしなければ、”無難な”作品にはならなかったのではと考えてしまう
いまのNYは商業的すぎて叙情の欠片もないので文学は似合わず、演出だとしてもあまりに寓話的すぎて白々しい
イマドキの感覚だと大した障害もなくオイタもしていない若者に試練だ成長だと言われてもピンとこないし、アバンタイトルの文学と芸術と都市への思索も言い訳のように聞こえてしまう
せめてコスプレにすれば成立したのかもしれないが、やっぱウディアレンって偉大なのかもと思ってしまう

ともあれ俳優陣の存在感が素晴らしく、最後まで見入ってしまう
文句なしにダサかっこいいピアース・ブロスナン、唯一文学的な香りを漂わせるジェフ・ブリッジス、カーシー・クレモンズの可愛さと知的な雰囲気もとても良い
そして、ケイト・ベッキンセールが美しすぎてツライ
posted by 井川広太郎 at 18:13| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする