information

4/5アップリンク渋谷にて監督最新作『ウワノソラ』上映

監督作短編「ハマの靴探偵」上映終了

監督作「キミサラズ」DVD発売中



2019年05月30日

北の果ての小さな村で

『北の果ての小さな村で』(原題 Une annee polaire/2018年/フランス/配給 ザジフィルムズ/94分)




監督 サミュエル・コラルデ
製作 グレゴワール・ドゥバイ
出演 アンダース・ビーデゴー、アサー・ボアセン

公式サイト http://www.zaziefilms.com/kitanomura/
7月シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー


グリーンランドの小さな村に教師として派遣されたデンマーク人の若者が、現地の人と心を通わせていくさまを描く

ドキュメンタリー映画なのだろうと思って観はじめたら、ドラマだったので驚いた
いやしかし、ドラマのようでありながら確かにドキュメンタリーでもある
実際は、ドキュメンタリーとドラマの垣根を超えた独特の作風とのこと

一年間に渡って取材を続け、ドキュメンタリーはドラマのように撮り、ドラマはドキュメンタリーのように撮るという基本を忠実に行った成果らしい
とはいっても、どうしたってドキュメンタリーとドラマの境目が分かってしまうものだが、この作品では驚くほど違和感がない

その結果、登場人物たちが何とも活き活きとしている
喜怒哀楽リアルな表情が溢れていて見飽きず、カメラなど意識しない自然な立ち振る舞いに見とれてしまう
彼らはどんな俳優たちよりも魅力的で、きっと多くの俳優たちはこの映画に嫉妬する

ドキュメンタリーと勘違いしたのは、試写状に写っていたデンマーク人の若者と現地の少年のツーショットが、あまりにナチュラルであったからだ
それを見て、これは芝居ではないと思い込み、きっとドキュメンタリーなのだろうと錯覚したのだ

登場人物たちのありなままの姿が現地の生活を包み隠さず伝え、過酷でありながらとんでもなく美しい自然環境に圧倒される
人間が共生する様々な生き物の生と死が描かれ、命のありがたさと高貴さに心打たれる

パラダイスとして描きすぎているという指摘もあるだろうし、デンマークとの関係や、それと共に若干語られるグリーンランドの経済的な問題点なども、もっと掘り下げてもいいのかもしれない
だが、見た目は大人ながら中身は幼いデンマーク人の若者の成長物語として秀逸であるし、彼の都会的な脆さに対し、現地の少年の無邪気な逞しさはまさに対極的であり、そんな二人の言葉の違い、文化の違いを超えて生まれる友情には素直に熱くなる
なんという景色の美しさ!なんという動物たちの愛らしさ!こういう映画を見たかった!
posted by 井川広太郎 at 22:32| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2019年04月09日

ミニー&モスコウィッツ

シーモア・カッセルが亡くなった。
カサヴェテス・ファミリーも、どんどんこの世界からいなくなる。
どうしようもなく付き合いづらい人物であったであろうカサヴェテスに、寄り添い続けた人。
煙たがられ避けられることも多かったカサヴェテスに対して、誰にでも好かれ多くの声がかかったシーモア・カッセル。
陰と陽のような二人はきっと相互補完的でもあり、だからこそミニー&モスコウィッツでカサヴェテス役を任されたのではないだろうか。
イカれた恋愛だなんてバカげてる、イカれてなきゃ恋愛じゃないよ。

posted by 井川広太郎 at 17:51| Comment(0) | lost in blog | 更新情報をチェックする

2019年04月07日

メモリーズ・オブ・サマー

『メモリーズ・オブ・サマー』(原題 Wspomnienie lata/2016年/ポーランド/配給 マグネタイズ/83分)



監督 アダム・グジンスキ
製作 ウーカッシュ・ジェンチョウ、ピオトル・ジェンチョウ
出演 マックス・ヤスチシェンプスキ、ウルシュラ・グラボフスカ、ロベルト・ビェンツキェビチ

公式サイト http://memories-of-summer-movie.jp/
6月、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー


夏休みに大好きな母と二人きりで過ごすことになった少年の成長を描くドラマ

1970年代と思われるポーランドの田舎町。
父が出張し、友人はバカンスに行った夏、少年は大好きな母と二人きりで過ごすことになる。
しかし楽しい時間もつかの間、母はしばしば家を空けるようになり、少年の心は不安と疑念に埋め尽くされていく。
そんな中、少年は、都会から来た少女と知り合うのだが…

優しく美人でセクシーで大好きな母、親であるだけではなく友人であって恋人のようでもあり、甘えたがりの少年はいつも一緒にいる。
だが家族であっても他人なんだという残酷な事実に、思春期の少年は向き合うことになる。
それは楽園で”性”という禁断の木の実を手に入れる悲劇でしかない。

硝子のテーブルに映る顔、隣室が伺える鏡、窓を叩く小石、遮断機と汽車など、徹底的に映画的な境界線が描かれていく。
すっきりとして小綺麗な室内に効果的に配置された家具や衣装や調度品がいちいちオシャレで、劇中で重要な役割を果たしていく。

そんな豪奢な美術と比べると一家が暮らすアパートは妙に狭く、部屋数が少なく見える。
田舎町だし、もう少し広くてもいいのではないかと思ってしまうが、監督の実体験を反映しているというのだから、こういうものなのだろうか。
夫婦の寝室すらなく、母親の寝床がリビングにあるソファーベッドだなんて、まるで「こわれゆく女」じゃないか。
posted by 井川広太郎 at 19:31| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2019年03月31日

アニエスの浜辺

最近だとヌーヴェルバーグの中で最も多くの新作を届けてくれる一人であったので、アニエス・ヴァルダの訃報はまた悲しい。
フィクションとノンフィクション、メルヘンとファンタジーを自由に行き来する、というよりもそんなボーダーはそもそもありはしないかのように自由に振舞う作風にも、永遠の少女感がハンパなかった。
ジャック・ドゥミのこと、ゴダールのこと、ヌーヴェルバーグの草創期の雰囲気を今にまで伝える貴重な存在であった。
『アニエスの浜辺』も面白かったなあ。と思って過去の記事を探したら10年前であった。
http://lostintokyo.seesaa.net/article/129842249.html

posted by 井川広太郎 at 11:40| Comment(0) | lost in blog | 更新情報をチェックする

2019年03月04日

芳華 Youth

『芳華 Youth』(原題 芳華 Youth/2017年/中国/配給 アットエンタテインメント/135分)



監督:フォン・シャオガン
製作:フォン・シャオガン、ワン・チョンジュン、ワン・チョンレイ
原作:ゲリン・ヤン

公式サイト http://www.houka-youth.com/
2019年4月12日より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、 YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次公開


文化大革命期に人民解放軍の文工団という歌劇団に所属した若者たちの青春とその後の人生を描くドラマ

久々にガツンとした文革映画なんてのを期待していたのだが、そんなものは微塵も感じさせないキラキラした青春映画。
正直、その点にはガックシきたが、監督も原作者も実際に文工団に所属していたらしい。
当時を美化しすぎているようにも思えるが、それは現在への不満の表れなのかもしれない。

毛沢東が亡くなったのは、僕が生まれた1976年なので、はるか昔のようでいて割りと最近。
それから中国は急速かつ劇的に変化してきたが、誰もがそれに馴染めているわけではない。
映画の中では、豊かになった現代は拝金主義的すぎて違和感を拭えず、”あの頃”の純真を守り続ける人たちが描かれる。
この映画は中国で大ヒットしたというのだから、同じように感じている人は意外に多いのだろう。
時には吹き出してしまいそうなキラキラした演出も、当時を懐かしみ、そして振り返るための唯一の手段だったのかもしれない。

メインキャストの女優たちが、驚くほどナチュラルで個性的な美女ばかりで眩しく、うっとりさせられる。
何でも、歌って踊れて芝居ができて、さらに”整形していない”女優を選りすぐったのだとか。
あの時代は自然な美が提唱されていたからということらしいが、その辺りにもこの映画の哲学が見え隠れしている。
posted by 井川広太郎 at 22:58| Comment(0) | REVIEW | 更新情報をチェックする

2019年03月03日

東京恋愛人vol.3・ウワノソラ

4月5日(金)20時からアップリンク渋谷で開催されるイベント「東京恋愛人vol.3」にて、監督最新作・短編『ウワノソラ』が上映されます。

東京の恋愛を描いた映画を特集する「東京恋愛人」、過去に開催された二回とも監督作を上映して頂いたのですが、今回はついに、このイベントのために撮った完全新作の短編映画を上映させていただきます!うぇい!
上映作品は短編映画四本と長編映画一本と盛りだくさんで、さらにミュージシャンの百々和宏さん(MO’SOME TONEBENDER)、作家で脚本家の狗飼恭子さんを招いてのトークショーも予定されています。

いまのところ『ウワノソラ』の上映はこの日の一回きり、その後の予定は決まっておりません。
『ウワノソラ』を観られるのは「東京恋愛人vol.3」だけ。この機会を逃すな!
四月の頭、夜の渋谷、花見気分で来ちゃいなよ!

料金は2000円で、チケットは発売中です。
詳細はアップリンク渋谷の公式ページをご確認ください。
どうぞ、よろしくお願いします!

アップリンク渋谷「東京恋愛人vol.3」公式ページ 
https://shibuya.uplink.co.jp/event/2019/53887/
posted by 井川広太郎 at 12:06| Comment(0) | lost in blog | 更新情報をチェックする

2019年03月02日

ソクーロフ特集2019・エルミタージュ幻想

昨日は映画サービスデーだったので、ユーロスペースで開催中の「ソクーロフ特集2019」で、『エルミタージュ幻想』『チェチェンへ アレクサンドラの旅』『日陽はしづかに発酵し…』の三本を観た。
二十年ほど前に観た『日陽はしづかに発酵し…』は当時とにかく恐ろしくて不可解で衝撃的だったが、いま観直すとさわやかな青春もののようであって感動的。
にしても『エルミタージュ幻想』、宮廷舞踏会からのモブシーンの目も眩むような美しく豪華絢爛な移動撮影にただただ酔い痴れる甘美を一体何に例えよう。映画の奇跡としか言いようがない

さらに奇遇にも劇場で、申し合わせてもいないのに三人もの知り合いに遭遇した。
これは映画サービスデーのマジックか、はたまたソクーロフの引き合わせか。

そんなわけで次は何を見ようとウキワクしながらチラシを見ていたら、うっかり誤植を発見!
「ヴェツィア」ってどこだよ!なんて突っ込みつつ、誰も気付いていないソクーロフの秘密を発見したようで、なんか超嬉しい!



IMG_9719.jpg IMG_9720.jpg
posted by 井川広太郎 at 12:21| Comment(0) | lost in blog | 更新情報をチェックする